アメフトの世界最高峰、米プロフットボール・NFLの第4週は、現地10月2日(日本時間10月3日)に、全米各地と英国のロンドンで14試合が開催された。2021年2月の第56回スーパーボウルの再戦となった、チーフス対バッカニアーズは、チーフスが現在の力の差を見せて押し切った。ビルズ対レイブンズの好調チーム同士の対戦はビルズが逆転勝ち。唯一の3戦全敗だったレイダースは、地区内ライバルのブロンコスに勝利した。
(写真はすべてGetty Images)
旅先、出張先でもOK!PC・スマホ・タブレットで見よう ライブ配信サービス「日テレジータス NFLGO」チーフス○41-31●バッカニアーズ チーフスにとっては、31対9で屈辱の大敗を喫したスーパーボウル以来の対戦。そしてQBトム・ブレイデイ対パトリック・マホームズの対決も、今季、両チームがスーパーボウルに進出しない限り、これが最後となる可能性が高い。
第3週のコルツ戦で、今季最低の17得点に終わったQBパトリック・マホームズとチーフスオフェンスは、1週間で調子を取り戻した。
バッカニアーズが試合の最初のキックオフリターンでファンブル。すかさずリカバーしたチーフスは、マホームズがオフェンスの2プレー目でTEトラビス・ケルシーにTDを決めて先制した。
チーフスはここから3ドライブ連続でTDを記録。2Qには、バッカニアーズQBトム・ブレイディのファンブルをリカバーし、それもTDに結びつけた。
28-17で折り返した後半も、チーフスは着々と加点。バッカニアーズも追いすがったが、点差は拡大した。
4Q残り5分を切ったところで、マホームズが自陣でインターセプトを喫し、ブレイディが残り3分30秒でTDパスを決めたが、それでも41-31とチーフスが2ポゼッションのリード。バッカニアーズの反撃もここまでだった。
チーフスは4選手がTD、マホームズは8人のレシーバーにパスを投げ分けた。
マホームズはバッカニアーズディフェンスに3回サックされたが、試合を通じて見ると、40回のドロップバックで9回のプレッシャー。プレッシャー率22.5%では、マホームズは止められなかった。
ただしかし、チーフスのこの日の勝利を支えたのは、ランオフェンスだ。2人のRB、クライド・エドワーズヒレアーが19回92ヤード、アイザイア・パチェコが11回63ヤード、マホームズ自身のランも4回34ヤード。5人の選手でラン39キャリー189ヤード。今季最高で、前週で敗れたコルツ戦の3倍以上となった。
タイムオブポゼッションでもバッカニアーズを17分も上回った。パスオフェンスが機能して、序盤でリードしたゲームで、ランが出続けるというのは、アンディ・リードヘッドコーチにとっても、理想的な展開だった。
序盤からキャッチアップを強いられたバッカニアーズは、ブレイディのパス一辺倒となったため、ランはわずか6回3ヤード。WRマイク・エバンスとクリス・ゴドウィンが戦線復帰し、ブレイディはパス385ヤード3TDと今季最高成績を残したが、及ばなかった。
マホームズ対ブレイディの通算成績は3勝3敗となった。
また、マホームズは、通算パス成績が20000ヤード超え。67試合目での到達は、これまでのマシュー・スタフォード(71試合)を超えて史上最速となった。
ビルズ○23-20●レイブンズ QBジョシュ・アレンが、17点差からレイブンズに逆転勝ち。キャリアで最大の逆転劇となった。
2Q残り2分までは一方的なレイブンズのペースだった。レイブンズは4ドライブ連続で得点し、20点。ビルズはフィールドゴール(FG)1本以外は、3&アウト2回、ターンオーバー2回(インターセプトとファンブルロスト)と、まるで元気がなかった。
しかし前半残り1分47秒からのオフェンスで、アレンにスイッチが入った。11プレー中、10回がアレンのプレー。パス7/9、63ヤードに、スクランブルの9ヤードも含めた圧巻のドライブ、残り9秒でTDパスを決めて、10-20と追い上げ、後半に折り返した。
ビルズは3Q残り9分にFGで差を詰めると、3Q残り3分で、アレンが11ヤードのランTD。同点に追いついた。
論議を呼んだのが、4Qのレイブンズのオフェンスだ。残り4分余りで、ゴール前2ヤードの4thダウン。レイブンズのジョン・ハーボウHCはFGを狙わずに4thダウンギャンブル。QBラマー・ジャクソンのパスはエンドゾーンでインターセプトされた。
ビルズは、直後のオフェンスで着実に前進すると、FG圏内でアレンが2度ニールダウンして時間を消費。残り3秒で決勝のFGを決めた。
レイブンズのハーボウHCがFGを狙わなかったのは、残り4分で、QBアレンであれば、3点差はひっくり返されると判断したのだろう。その意味でも、ビルズが前半の最後で奪ったTDが効いたゲームとなった。
NFL5年目のアレンはランとパスでTDを決めたのが通算22試合目で、スーパーボウル以降の時代では史上2位(1位はキャム・ニュートン31回)。プロ入り5シーズン通算のオフェンスTDが147回となり、ペイトン・マニングと並んでNFL史上4番目となった。NFL記録はダン・マリーノの171。今季、残り13試合で25TDする必要があるが、今のアレンには、難しい要求ではなさそうだ。
ブロンコス●23-32○レイダース
RBのジョシュからHCのジョシュへ、大きな贈り物。レイダースが宿敵ブロンコスを倒して、今季初勝利を挙げた。ジョシュ・ジェイコブスは28キャリーで144ヤード2TD。ジョシュ・マクダニエルズにレイダースHC就任後最初の勝利をもたらした。
QBデレク・カーのパスは決して爆発的ではなかったが、ホットラインのWRダバンテ・アダムスに9回101ヤードのパスを決めた。
ブロンコスは、QBラッセル・ウィルソンのパスが機能せず。RBジャボンテ・ウィリアムズの負傷欠場も痛かった。
バイキングス○28-25●セインツ
ロンドン開催のゲームは、バイキングスが4Qの点の取り合いを制した。バイキングスのKグレッグジョセフは、決勝の47ヤードFGを含む5本のFGをすべて成功させたが、4QにはTD後のエクストラポイントを失敗するなど、手放しでは喜べない面も。バイキングスは開幕4試合で3勝1敗と好調な滑りだし、逆にセインツは1勝3敗となった。
ブラウンズ●20-23○ファルコンズ
今のNFLでは珍しい、ランで競い合う展開となった。双方ともに35回のランで、ブラウンズ177ヤード、ファルコンズ202ヤード。ファルコンズは、エースRBのコーダレル・パターソンは9回38ヤードだったが、ルーキーのタイラー・アルガイヤーが10回84ヤードと活躍した。ブラウンズは4試合中3試合が3点差以内で、1勝2敗。
コマンダース●10-25○カウボーイズ
カウボーイズ控えQBラッシュが今季先発昇格後、無傷の3連勝。しかし、勝因はダラスのディフェンス。NFLのネクストジェネレーションスタッツによると、ダラスは全ドロップバックの40%以上で、QBにプレッシャーをかけた。コマンダーズのQBカーソン・ウェンツは、パス25/42で170ヤード、2インターセプトを喫した。
タイタンズ○24-17●コルツ
NFLによると「ラッシング3冠」という定義がある。ラン獲得ヤード、ラン回数、ランTDの3部門で1位になることを指す。2020年の3冠がタイタンズのRBデリック・ヘンリー、そして2021年がコルツのRBジョナサン・テイラー。直近のラッシング3冠王2人が対決するということは、実は珍しく、NFLの歴史上3回目だったという。
そして、ヘンリーが、久々に「王の貫禄」を見せた。22回で今季最高のラン114ヤード1TD。テイラーは20回で42ヤード、さらに試合終盤のファンブルと、キャリア最悪の成績に終わった。