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2019-12-24

【ボクシング】村田諒太が一夜明け会見 「ブラント戦よりも緊張した」

23日、スティーブン・バトラー(カナダ)を鮮やかなTKOで切って落とし、初防衛を果たしたWBA世界ミドル級チャンピオン、村田諒太(帝拳)は24日、東京・九段のグランドパレスで、一夜明け会見を行った。村田は勝利の満足感を漂わせながらも、今後をしっかりと見つめたコメントに終始した。

上写真=左目の腫れを隠すためのサングラス着用を村田は詫びていた

「また成長できたと思うが、修正点はある」

「最後にKOしたということで、いい試合ができたと思っています」

 眼は濃いサングラスに覆われたまま。表情の動きは読めなかったが、まずは安堵の言葉から会見は始まった。ただ、意外な心行きも告白していく。

「ロブ・ブラントからタイトルを取り返した試合より緊張しました。周囲の評価を気にしてもしかたないのは分かっていても、高い評価をいただいたブラント戦と比較して今回はどうなのか。と。そんなプレッシャーの中で結果を出したことには満足できます」

 そして、告白はこう続く。

「戦っている最中の心の苦しみより、戦う前、戦った後のほうが苦しみは大きい、自分で自分を評価するということについてです」

 多くの書物を読み、感覚のさまざまを言葉に置き換えたい。そんな村田だからこその苦悩でもある。

 信じられるのは拳で出してきた答えのみ。深い暗渠から這い上がった経緯を刻み込んで、新たに挑んでいるのだ。

「一度は火の消えたボクシングです。2018年10月、ラスベガスでブラントに敗れたときは、やめることばかり考えていました」

 こんな負け方でボクシング人生終焉でいいのかと思いなおし、村田は現役続行を決意した。だから、試合をやるごとに成長を実感しなければ、その意味もそがれてしまう。

「5回ですか。(スティーブン・バトラーが)最初の右が効いたのが分かったから、そこで詰めに行ったんです。最後の左フックは意識して打ったパンチではありません」

 KOシーンはことさらに見事だった。それでも、心の中ではもっと成長できる自分を探している。

「こんな腫れができたように前に行くばかりでは危険かもしれない。だからと言って前に出なければ、後手から後手にと回ってしまう、そのために修正していかなければならないと思うんです」

 昨夜、「リアルファイトがほしい」としていたが、層の厚いミドル級の現実を見つめなおし、ひとまず取り下げた。最短距離、そのときどき最善のカードを用意してくれた帝拳ジムの判断にすべてをゆだねるという。しかし、2020年のこんな決意に、胸中奥深くからの叫びが聞こえてくる。

「一ボクサーというより、一日本人として、日本にどこまで貢献できるのかと考えています。一個人の問題ではない」

 この言葉、職業プロボクサー、まして世界チャンピオンの大きな決意と、取材者は心得た。ただし、今はいったん休憩だ。

「まだ子供と会っていないので早く会いたいですね。ずっと行きそびれている息子の野球の試合を、コーヒーを飲みながらボーっと見ていたい」

文・写真◎宮崎正博

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