「自分で最初に立てた目標なので、絶対に成し遂げたかった」。22日、東京・後楽園ホールで行われた全日本新人王決定戦で足名優太(渡嘉敷)を2-1の判定(49対46、48対47、47対48)で下し、ウェルター級の頂点に立った安井誉(森岡)。ラストチャンスとなる3度目の挑戦で念願の新人王に輝き、涙を抑えることができなかった。
写真上=ウェルター級全日本新人王になった安井誉を「憧れ」というジムの先輩・丸田陽七太が祝福。
試合は距離を取りたい安井と詰めたい足名という構図。3回、安田が左フックを効かせて足名をダウン寸前に追い込み、ヤマ場をつくった。終盤はプレスを強めた足名にショート連打で対抗。公式の判定は割れたものの、有効打で上回り、手数でも負けてはいなかった。一昨年は引き分け敗者扱い、昨年は1-2の判定負けと、2年続けて西日本新人王決勝で惜敗。20歳になった今年、1階級上げて自分との約束を果たした。
大阪・能勢の出身。お隣の兵庫・川西の森岡ボクシングジムでグローブを握ったのは中学3年のときだった。学校の“職場体験”で第1希望から第3希望まで「森岡ジム」と書き、熱意が認められた。「特に誰というのはなかったけど、ボクシングを見るのが好きだった」という少年は、そこで2歳上の憧れの存在と出会う。現・日本フェザー級1位の丸田陽七太(森岡)。以来、そのスタイリッシュなボクシングが安井の目指すスタイルになった。
試合後、リング下で後輩を迎え、固く抱き合った丸田。ここ3戦続けて後楽園ホールのリングに上がっているが、ホテルの同部屋になり、身の回りの世話など、遠征を手助けしてくれたのが安井だったという。「今回、初めて逆の立場」でサポートに回り、苦労して目標を果たした後輩の姿に涙があふれた。
「自分はまだまだなので、もっと練習して、1戦1戦強くなりたい」と安井。次戦、来春のチャンピオンカーニバルで勢いに乗る日本フェザー級王者・佐川遼(三迫)に後楽園ホールで挑む丸田は、「うまくて、強いチャンピオンと戦うのが楽しみ。勝つ自信はある」と、今度は自分を慕う後輩に背中を見せる。
取材◉船橋真二郎
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