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2022-10-16

【ボクシング】「オレに勝てる奴はいない!」──デオンテイ・ワイルダーが豪拳一撃で初回KO復活

必殺の右を決めて倒したワイルダー

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 15日(日本時間16日)、アメリカ・ニューヨークのバークレイズセンターで行われたWBCヘビー級挑戦者決定戦12回戦は、前同級王者で1位デオンテイ・ワイルダー(36歳=アメリカ)が、5位ロバート・ヘレニウス(38歳=フィンランド)を初回2分50秒KO。タイソン・フューリー(34歳=イギリス)に喫した連敗からの復活を遂げた。

Photos by Getty Images

約3年ぶりの勝利に吼える

 前日計量で18kg近く重かったヘレニウスが、巨岩のように迫る。ニュートラルコーナーを背負ったワイルダーに、ボディへの左フックから右へつなぐ、その瞬間だった。
 ほんのわずか外から遅れてくる右よりも速く、ワイルダーが右ストレートを真正面から突き出すと、左顔面を射抜かれたヘレニウスは、巨体を沈められたのだ。
 まるで1本の棒のように、真っすぐに伸びきったヘレニウスの状態を見て、マイケル・グリフィン・レフェリーは試合終了をコール。一瞬のことで何が起きたか判然としない様子の観衆も、ヒーロー復活だけは理解でき、大歓声を上げて飛び跳ねた。

 昨年10月(11回TKO)、一昨年2月(7回TKO)と、いずれもフューリーに敗れたワイルダーにとって、2019年11月以来、およそ3年ぶりの勝利の味だ。その美酒に久々に酔いしれた“ブロンズ・ボンバー”も、会場に向かって雄叫びを上げて熱狂に応じた。

ワイルダーは間合いを取って、明らかに誘っていた
ワイルダーは間合いを取って、明らかに誘っていた

 1年前のフューリー戦から11kgほど減量してきたワイルダーに、「軽すぎるのではないか」と不安視する声もあった。が、巨漢フューリーに対抗して増量したものの、結果的にキレを失った反省を生かしての対処だったのだろう。体の軽さの表れか、ワイルダーとしては稀有なアウトボクシングで立ち上がり、かつてのスパーリングパートナーでもあるヘレニウスを前に出させる形を取った。
 見ようによっては、ヘレニウスがプレッシャーをかけ、ワイルダーが圧力を受けているとも取れる。だが、ぎこちない足運びながら、フューリーとの2戦とは違い、表情にはしっかりとした意志が窺えた。

 一方のヘレニウスも、迂闊には迫っていかない。ゆったりと距離を詰め、鈍重に見える左右フックを振って様子を見る。速いジャブ、右ストレートを狙うワイルダーの攻撃を顔面をのけ反らせてよけると、一転して速い右ショートボディを突き刺すなど、緩急を多分に意識した攻撃の用意を感じさせた。しかし、コーナーに追い詰めた瞬間の「シメた」という思いとは裏腹に、ワイルダーの罠に物の見事にハマってしまった。

約3年ぶりの勝利の味に大興奮
約3年ぶりの勝利の味に大興奮

「最高の気分だ。周りの人々の支え、応援してくれるみんなの気持ちがあって、また戦う気になった」と第一声で感謝を述べたワイルダーは、「ロバートは強敵と知っていたから、油断せず、距離をキープして冷静にセットアップして、いい右を打ちこめた」と試合を振り返り、「オレと戦いたいやつとは誰とでも戦う。でも、オレに勝てる奴はいない」と豪語。頂上への返り咲きを自信満々に宣言した。

 ワイルダーには、先月行われたもうひとつの挑戦者決定戦に勝った元3団体統一王者アンディ・ルイス(32歳=アメリカ)との対戦が義務づけられており、それに勝った選手が、頂上決戦へ歩を進めることになる。

 進退がはっきりしないWBC王者フューリーはさておき、アンソニー・ジョシュア(33歳=イギリス)を返り討ちにしたWBAスーパー・IBF・WBO王者オレクサンダー・ウシク(35歳=ウクライナ)が燦然とそびえ立つ。彼との一騎打ちが、全世界待望のカードであることは間違いない。

 ワイルダーの戦績は46戦43勝(42KO)2敗1分。ヘレニウスの戦績は35戦31勝(20KO)4敗。

プラントも一撃KO勝利でカネロ再戦熱望
この瞬間を待っていたかのように、左フックを打ち抜くプラント

この瞬間を待っていたかのように、左フックを打ち抜くプラント

勝利を確信したプラントは、平然とニュートラルコーナーに向かう
勝利を確信したプラントは、平然とニュートラルコーナーに向かう

 セミファイナルで行われたもうひとつのWBC挑戦者決定戦、スーパーミドル級12回戦は、前IBF王者でWBC1位のケイレブ・プラント(30歳=アメリカ)が、元WBC王者で4位のアンソニー・ディレル(38歳=アメリカ)を9回2分57秒KOに下した。
 昨年11月、サウル・“カネロ”・アルバレス(32歳=メキシコ)との4団体統一戦で11回TKO負け。IBF王座を奪われたプラントだが、技巧の健在ぶりを大いに示した。
 右へ右へと少しずつ立ち位置を変えていき、ディレルを戸惑わせると、死角から右を飛ばし、それを意識させて左フックをヒット。長い間合いから左ジャブ、ストレートをボディに送り、そこに右を合わせようとするディレルの攻撃は、得意の防御でかわしまくった。
 なかなかヒートアップしない展開に、会場からはブーイングも飛び始めたが、プラントはまったくお構いなしで着実にポイントを積み重ねていく。そして9ラウンド、左ボディフックから、一瞬間を置いてディレルに左フックを出させ、先に左フックでアゴを打ち抜く。これが見事なカウンターとなると、ディレルはキャンバスに落下。レフェリーが即座に試合を止めた。
「カネロともう1度戦いたい。カネロ、待ってろよ」と再戦を訴えたプラントは23戦22勝(13KO)1敗。時折サウスポーにスイッチして局面打開を図ったものの叶わなかったディレルは
39戦34勝(25KO)3敗2分。

文_本間 暁(WOWOWオンデマンド視聴)

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