23日、横浜アリーナで7度目の防衛戦に臨むWBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(BMB=27歳)が試合まで2週間を切った11日、東京・練馬の三迫ジムで練習を公開。挑戦者12位で元WBA暫定王者のサウスポー、ランディ・ペタルコリン(フィリピン=27歳)との一戦に向け、「僕の魅力が伝わる戦い方をして、圧倒するんで、ぜひ見てもらいたいです」とアピールした。
写真上=父の寺地永会長と勝利を誓う王者・拳四朗
試合1ヵ月前に対戦相手がサウスポーに変更になってもやることは変わらない。拳四朗の「魅力」とは、「もらわずにパンチを当てるスタイル」。こともなげに言うが、そのスタイルはロングレンジ=安全圏を保ち続ける、いわゆるアウトボクシングとは違う。インとアウトをリズミカルなステップで行き来し、わずかに踏み込めば自分のパンチは届き、わずかに下がれば相手のパンチは届かない、絶妙な位置取りを掌握し続けながら、相手にプレッシャーをかけ続ける。そんな至難な業を、この童顔のボクサーは飄々とやってのけているように見えるが、もちろん確かな裏づけがある。
前王者のガニガン・ロペス(メキシコ)との2018年5月の再戦から、三迫ジムの加藤健太トレーナーの発案で取り入れた“棒”を使ったトレーニングで、苦手だったサウスポー相手の距離感を改善した。手にした“棒”を伸ばしながら、追ったり、追わせたりする加藤トレーナーの動きに合わせ、“棒”に自分の体が触れないように動き回り、ジャブを軸にパンチを繰り出す。その動きのなかで相手との絶妙な間合いを確保する感覚をつかみ、試合では右ボディ一撃で2回KO勝ちを収めた。今ではオーソドックス、サウスポーに関係なく、自分の距離感に絶対の自信を持つ。

棒を使って距離感をつかむ加藤トレーナーとのトレーニング
この日、披露された加藤トレーナーとのマンツーマンのミット打ちは、“棒”の練習を含めて、ごくごく軽い1ラウンドずつだったが、普段は拳四朗が「加藤さんがラクにやらせてくれないし、いちばんキツい」とこぼすほど。パンチを打つときは踏み込み、またすぐにステップバック、ストップ・アンド・ゴーを繰り返す激しい運動量に、右足親指の付け根を中心に足の裏の皮はめくれ、マメができるのが試合前の恒例になってきている。
ハードな練習で身に着けてきた感覚は、そう簡単にはなくならない。今年7月には、大阪で行われた6度目の防衛戦でサウスポーの指名挑戦者ジョナサン・タコニン(フィリピン)を右カウンターで倒し、4回TKO勝ち。パートナーをサウスポーに変えてからも「感覚もすぐ戻ったし、前回(サウスポー相手に)いい勝ち方ができて、すごく自信もついてきてるんで、普段どおり戦えば、絶対勝てると思います」。
WBCランクこそ下位だが、父の寺地永・BMBジム会長が「映像を見ても決して侮れる相手ではない」と警戒するように、バランスにすぐれ、シャープな攻防を見せるペタルコリンは、“代役”ながら簡単なチャレンジャーではない。拳四朗が「左は伸びてくるイメージ」と話すように、ストレート系を軸にプレッシャーをかけてくる、その長い距離はロペスやタコニンにはなかったもの。ポイントになるのは、やはり練習でも最も負担がかかっている“足”だ。
「足が動けば、手が出るんで、意識するのは手より足。僕の場合は足のステップでパンチを打ってるので、そのリズムが壊れるとパンチも出なくなる」
そのためにも「リラックス」「力まないこと」と言葉を重ねる。
「(相手には当てさせずに)こつこつ当てて、相手のメンタルが折れてきた中盤から後半にかけて倒すのが理想の勝ち方。倒すことは意識しすぎず、普通にやってたら、勝手に倒れてるぐらいの感覚でいい」
汗が出にくい冬場の減量も順調に進み、「いい感じに仕上がってきてるので、あとは本番を楽しみに調整するだけ」。拳四朗ならではの“妙味”を存分に堪能させてもらいたい。
「あとは本番を楽しみに調整」
取材◎船橋真二郎
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