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2022-10-26

変形性ひざ関節症教室 第1回 すり減った軟骨と痛みは関係ある?

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざが変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは、「すり減った軟骨」について。すり減った軟骨は元にもどることがあるのでしょうか。

Q すり減った軟骨が元に戻ることはありますか?
A 軟骨が元に戻る可能性は極めて低いです

 変形性ひざ関節症とは、関節のクッションである「軟骨」がすり減って、痛みが生じる病気です。損傷した組織が治るには、血管を通じて組織を治す成分や細胞が集まる必要があります。しかし、軟骨には組織の治癒に欠かせない血管や神経が通っていません(※)。このためすり減った軟骨を修復する能力が極めて低いと考えられています。

 また、変形性ひざ関節症では変形が進むにつれ、軟骨にかかる負荷が増えていきます。負荷が増えることでさらに軟骨がすり減るという悪循環が生じ、軟骨のすり減りはますます進んでいきます。

 このように私たちは、基本的には生まれもった軟骨をひたすら一生かけて使っていくのです。一生自分の足で歩くためにいかに自分の軟骨を大切に使い切るかが、重要な戦略になります。

Q 軟骨のすり減り具合とひざの痛みは相関しますか?
A 必ずしも相関しません

 変形性ひざ関節症の初期から中期では、軟骨のすり減り具合が変わらなくても、痛みの強さに波があることがよくあります。これは初期から中期では痛みの原因として、滑膜や半月板の炎症が大きく関与しているからです(※)。一方で、レントゲンを撮って軟骨がまったくないという患者さんでも、そこそこ痛みなく生活している人もいます。つまり、軟骨のすり減りと痛みとは必ずしも相関しないともいえます。

 軟骨がすり減ってきても、運動療法や薬の服用で炎症を抑え、いいコンディションの期間をできるだけ長く保つことができれば、痛みなく生活することも可能です(※)。 

※軟骨や滑膜、半月板など、ひざの構造や機能、痛みの発生機序、コンディションを保つ方法については、今後の連載のなかで詳しく紹介していきます。
 
プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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