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2022-11-04

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第4回「懸賞、賞金」その1

平成28年初場所3日目、安美錦は鶴竜を押し出し、8個目の金星を獲得

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近年、増えているものはな~んだ? と問われたら、2つ挙げたい。
1つ目は社会問題化している高齢者の交通事故。あれは困ったものですね。対応も難しい。
残る1つが幕内の取組に懸かる懸賞だ。勝った力士にご祝儀をつける、というのは大相撲ならではの、もう風物詩と言っていい。令和元年秋場所から力士の取り分が1本6万円にアップした。その総数が毎場所、2000本前後ですよ。よおし、勝って取ってやろう、と力士たちのモチベーションも一段と上がろうというものです。
気になるのはあの懸賞、あるいは賞金の使い道です。令和元年夏場所、たっぷり稼いだ朝乃山に師匠が「部屋にクーラー付けて」と“公開おねだり”していましたが、野暮を承知でその使い道を探ってみました。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

金星、やったね

金星を取ったときの喜びはさまざまだ。身近な人に感謝する、ということも多い。平成28(2016)年初場所3日目、関取最年長の安美錦は鶴竜に頭から当たって叩き、バランスを崩したところを押し出して7年ぶり、8個目の金星を挙げた。これで対戦した5人の横綱、貴乃花(1個)、武蔵丸(1個)、朝青龍(4個)、白鵬(1個)、鶴竜(1個)の全員から金星を挙げたことになる。さらに新入幕から93場所目の金星獲得は昭和以降最長、またこのときの37歳3カ月は歴代5位の年長記録だった。
 
もちろん、安美錦はニコニコ顔。足取りも軽やかに支度部屋に引き上げてくると、

「KYだね」
 
と流行りのDAIGO語を口にして取り囲んだ報道陣を煙に巻き、なんのこと? と問われると、

「金星、やったね、だよ」
 
と相好を崩した。
 
そして、この金星を誰に真っ先に報告したい? とたたみ込まれると、すかさず3年前に結婚し、結婚後にアスリート・フード・マイスターの資格を取得、食卓に並ぶおかずは毎日10品以上、地方場所や巡業先にまでチルドパックした手料理を届けてくれる5歳下の愛妻、絵莉さんの名前をあげた。

「これで自分の時間を削って一生懸命がんばっている嫁さんにちょっとは恩返しできたかな」
 
と感謝の言葉を口にし、手にしたばかりの27本(51万円)の懸賞の束を振りかざすとこういって幸せそうに笑った。

「何か(嫁さんに)買うか」
 
何をプレゼントしたか。残念ながら取材していないが、満面の笑顔で受けとった絵莉さんの顔が目に浮かんでくる。

月刊『相撲』令和元年7月号掲載

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