close

2022-11-20

【ソフトボール】米国代表のモニカ・アボット、トヨタでの14年間の選手生活に幕

トヨタでの14年間の選手生活に幕を閉じたアボット。

全ての画像を見る
日本でのラストピッチ

 11月12日、ZOZOマリンスタジアムで行われた豊田自動織機とのJDリーグセミファイナル。「必ず試合に出るチャンスはある」とスタンバイしていたモニカ・アボットが先発・後藤希友の後を受けて6回からマウンドに上がった。0対0の緊迫した場面、「流れを引き寄せるようなピッチングができれば」という思いだったという。

 代わり端に二塁打を許したものの、それ以降は落ち着いた投球で2回を1安打無失点。しかし、8回にリエントリーで再登板した後藤希が大平あいに2ランを打たれ、打線が取り返せないまま0対2で敗戦。チームはファイナル進むことができず、アボットの、トヨタでの14年間の選手生活も幕を閉じた。

試合前、右隣の鎌田優希主将と何やら楽しそうにおしゃべりするモニカ・アボット(撮影/BBM)
▲試合前、右隣の鎌田優希主将と何やら楽しそうにおしゃべりするモニカ・アボット(撮影/BBM)

日本での最終戦を終え、ファンからの温かい拍手に包まれながら会場を後にした(撮影/BBM)
▲日本での最終戦を終え、ファンからの温かい拍手に包まれながら会場を後にした(撮影/BBM)

情熱的なプレーでけん引


 アボットは北京五輪翌年の2009年に、アメリカ代表でチームメイトだったナターシャ・ワトリーとともにトヨタに加入。切れ味鋭いライズボールと110km台後半の速球を武器に、昨年までプレーしていた日本リーグではMVP4度、最優秀防御率賞7度、最多勝利投手賞4 度、ベストナイン賞6度と、数々のタイトルを獲得。当時低迷していたチームを6度の日本リーグ優勝へ導くなど、トヨタを常勝チームへと引き上げた。

 偉業の影には積み重ねてきた努力の日々があった。練習では一切妥協を許さなかったアボット。試合に向けて納得のいくまで準備をし、自信を持って本番に臨んでいた。すべては、チームの勝利のために――。今年からトヨタで主将を務める鎌田優希は、「どんなときでも、チームにとって何が最善かを考えて、言いづらいことも積極的に発言してくれた。プレー以外の面でもチームをけん引してくれた」と感謝する。

 先の豊田織機戦で悔し涙を流した後藤は、アボットという偉大な左腕がチームを去った今、エースとは何かをあらためて考える。「ピンチでも闘志をむき出しに投げていたモニカは誰よりも強かった。チームがうまくいかないときに盛り上げることができるピッチャーがエースだと思うし、私もそうありたい」。そして、次のように言葉を続けた。「モニカが築き上げたトヨタの歴史をまた新しくつくっていけるように、ピッチャー陣全員で頑張っていきたい」。

投球前、後ろで守る選手たちに「頼むよ」と手を挙げるモニカ・アボット(撮影/BBM)
▲投球前、後ろで守る選手たちに「頼むよ」と手を挙げるモニカ・アボット(撮影/BBM)

身長が190cmあるモニカ・アボット。円陣を組むと、いつも頭一つ分、二つ分⁉ 飛び出していた(撮影/BBM)
▲身長が190cmあるモニカ・アボット。円陣を組むと、いつも頭一つ分、二つ分⁉ 飛び出していた(撮影/BBM)

若いチームメイトへのエール

 アボットは、チームに勝利をもたらすだけではなく、常勝チームとはどうあるべきか、勝つためには何が必要なのかといった勝者のメンタリティを、自らがソフトボールと向き合う姿を通してチームに注入してきた。そして、「ソフトボールを楽しむ」ことの大切さも伝えてきた。

 東京五輪代表を含めたベテラン選手が昨季限りで引退し、平均年齢が若返ったチームは今、転換期にある。セミファイナルで豊田自動織機に敗れた後、アボットは言った。「トヨタはこの1年で素晴らしいチームをつくり上げたと思う。自負しているのは、見る人に『ソフトボールって楽しい』と思っていただけるような試合をしてこられたこと。まだまだ若いチームだけど、競技の楽しさを皆さんに伝えられるようなチームになってくれる、成長していってくれると信じています」。

 セミファイナルで敗れはしたが、自分たちがやってきたことは間違いではない、と言っているようだった。残していく若いチームメイトたちへ、何よりの励ましの言葉になるはずだ。偉大な左腕がくれたたくさんの贈り物を胸に、チームは新たな歴史を築いていく。

トヨタの仲間たちと。後列右から後藤希友、三輪さくら、アボット、バッバ・ニクルス、切石結女(撮影/BBM)▲トヨタの仲間たちと。後列右から後藤希友、三輪さくら、アボット、バッバ・ニクルス、切石結女(撮影/BBM)

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事