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2022-11-20

【相撲編集部が選ぶ九州場所8日目の一番】王鵬が若手同士の対決を制して7連勝。1敗勢4人が白星並べる

7連勝で1敗を守り、勝ち越しにリーチを掛けた王鵬。今場所こそは課題の後半戦を克服したい

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王鵬(押し出し)熱海富士

22歳の王鵬が、20歳・熱海富士との“期待の若手対決”を制して1敗を守り、7連勝を記録した。
 
立ち合いは、熱海富士も悪くなかった。場所の序盤は立ち遅れも目立ったが、この日はそれもなく、頭から低い当たりを見せた。王鵬も頭からいって互角の当たりだ。ただそこから先の動きは少し差が出た。熱海富士は何とか頭を下げ、右差し、左上手を狙おうとするが、攻撃という形には入れなかった。一方の王鵬は、左右の突き押しで熱海富士を起こすことに徹した。腰を引いたりすることなく、前へ圧力を掛け続けて組むことを許さず、最後は黒房下に押し出し。先手、先手の攻めには、やはり新入幕力士に対する、入幕5場所目の余裕と落ち着きが感じられた。2人はこの先、何度も対戦することになるだろうが、まず第1ラウンドは王鵬の完勝だった。
 
7日目の勝利の後には「丁寧に、自分のいいところを出そうと思っている」と語っていた王鵬だが、この日もまさにそのとおりの相撲。祖父が横綱(しかもあの大鵬!)、父が関脇(貴闘力)というのは、昨日紹介した琴ノ若と同じで、これまた将来が大いに嘱望されるDNAを持つ力士だ。今場所は安定した下半身で前に攻める相撲が目立っており、それが好成績につながっている。今後、四つ相撲も覚えていけばさらなる伸びしろも見込めると考えられ、将来が嘱望される一人だ。
 
ただ、これまでの結果からすると、王鵬にとって大切なのは勝ち越しにリーチを掛けた、この後だ。今年1月場所、9月場所と、7勝3敗から5連敗して負け越した経験が2度。これについては本人も「連敗があるので、勝てるときに勝っておかないと」とよく語っているが、今場所こそは給金相撲と後半戦を乗り切って、精神面、スタミナ面で一つ成長した姿を見せたいところだ。
 
また、平幕では阿炎も遠藤を押し出して1敗を守った。今場所は立ち合いから一方的に突き切ったり押し切ったりしたのが4番、突き起こしての引き足で勝ったのが3番だが、いずれも立ち合いから相手の上体を起こすことにかなり成功している。「勝敗は意識していない。リハビリの場所なんだから、勝っても負けても思い切り、集中してやるだけ」という心持ちが、力を出させているようだ。負けた1敗は阿武咲の横の動きについていけなかったものなので、そこへの対応という部分はあるかもしれないが、何しろもともと関脇の実力者、後半戦上位と当たることになっても十分力が出せるはずだ。
 
この日は上位でも豊昇龍は翔猿、髙安は霧馬山と、いずれもしぶとい相手をさばき、4人の1敗組がきのうに続き白星。後半戦の優勝争いがますます楽しみになってきた。
 
その一方で、二ケタ勝利を挙げての大関復帰を目指す御嶽海は琴ノ若の肩透かしに這わされ4敗目。あと1番しか負けられなくなり、かなり厳しい状況に。カド番の正代も“熊本出身対決”となった佐田の海戦に敗れて4勝4敗の五分に逆戻り。苦しい戦いがまだまだ続きそうだ。

文=藤本泰祐

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