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2022-11-18

【相撲編集部が選ぶ九州場所6日目日の一番】171キロ吹っ飛ばす! 髙安が大関経験者同士の1敗対決に快勝

両廻しをガッチリ引きつけての寄りで御嶽海との1敗対決に快勝した髙安。このまま悲願の初優勝へ突っ走ることができるか

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髙安(寄り切り)御嶽海

体重171キロの御嶽海が、立ち合いでのけぞり、一瞬後ろに吹っ飛んだ。それほど、髙安のカチ上げの威力は強烈だった。
 
大関経験者同士の1敗対決は、髙安が一度も主導権を渡すことなく御嶽海を寄り切った。
 
髙安にとっては、立ち合い当たり勝ったことがすべて、と言ってよかった。御嶽海も今場所は好調なだけあって、すぐに頭を下げて体勢を立て直したが、それが精いっぱい。右四つに組んだときには、髙安はもう、いい位置の左上手を引いていた。
 
得意は左四つの髙安だが、二本差されて中に入られる形にさえなられなければ、廻しを取って胸を合わせる右四つでも十分だ。「いいところの廻しが取れたので、両廻しをしっかり持って、慎重に出ました」と、ジリッジリッと出て青房下に寄り切った。
 
1敗対決に敗れた御嶽海は、悔しさもあったのだろう、引き揚げるとき、モニターをじっと見る姿が。リモート会見には登場しなかった。
 
一方の髙安は、1敗を堅持し5勝1敗。初日に若隆景、3日目に貴景勝、4日目に豊昇龍に土をつけ、そしてこの日は御嶽海との1敗対決に勝利と、その時点での“V最有力候補”を次々と倒してきた。6日目を終わって、豊昇龍らと並び4人の1敗力士の一人ではあるが、ここまでくれば、もう“チャレンジャー”ではなく、髙安自身が優勝争いの先頭を走る、最有力候補になったと言っていいだろう。しかもここまで、今場所出場している力士の番付上位から6人と対戦しての5勝1敗なのだから、なおさら夢が膨らんでくる。
 
とはいえ、あとが小結以下との対戦ばかりだから楽勝、と単純に言い切れないのも相撲の難しいところ。これまでは上位との対戦ばかりだったので、文字通りチャレンジャーの立場で、立ち合いも思い切りカチ上げていけばそれでよかったが、明日以降予想される対戦相手で、その立ち合いでいいのは大きい琴ノ若と逸ノ城ぐらい。それ以外の相手には、何も考えずにブチ当たる、というだけでは落とし穴も考えられる。その辺り、相手の動きに警戒を払いつつ、かつ圧力を相手に与える立ち合いが続けられるかどうかが、今後のカギになってくるだろう。
 
幸い、「とても体の状態はいい」と、初日に気にしていた右足も問題はなさそう。「先場所後、一緒に過ごした家族と、地方場所でまた離れて寂しさはありますか?」と聞かれ、「まあ今は辛抱して。また家族とおいしいご飯が食べられるように頑張ります」と答えた髙安。これまで何度も優勝のチャンスを逃してきたが、これから一日一日、気持ちを揺らさず、しっかりした立ち合いと、この日のような冷静な攻めを続けられれば、その先には、おいしいご飯と、そして初優勝の美酒が待っている。

文=藤本泰祐

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