アメリカンフットボールの国内トップリーグ、「X1スーパー」昇格をかけた入れ替え戦2試合が、12月10日、富士通スタジアム川崎で行われた。
第1試合、X1スーパー・ディビジョンA6位のオール三菱ライオンズとX1エリア1位の電通クラブ キャタピラーズの一戦は、電通がオール三菱のミスに付け込んで快勝。初のX1スーパー昇格を決めた。オール三菱は、来季はX1エリアで戦うことになった。
電通クラブ キャタピラーズ ○28-15● オール三菱ライオンズ(2022年12月10日、富士通スタジアム川崎) オール三菱は、序盤からQBジョン・ギブスJrのパスが好調。しかし、エンドゾーンまで2ヤードでファンブルロスト、さらに、自陣ゴール前でもインターセプトと、ターンオーバーを連発、前半は3点しか奪えなかった。
電通は今季リーグ戦の主武器だったQBアーロン・エリスのパスがなかなか決まらなかったが、RB遠藤集や片岡遼也、さらにQB伊藤宏一郎のランでドライブ。
ゴール前では、伊藤が2本のTDランを決めて14-3で折り返した。
後半に入っても、オール三菱は、パーソナルファウルやターンオーバーで、リズムを失った。余裕のできた電通QBエリスが持ち味のロングパスで2TDを奪って、電通を突き放した。
オール三菱は、3Qの最後にQBギブスからWR吉田幸祐へのTDパスで15-28と2ポゼッション差に。さらに4Qにも、吉田への27ヤードパスなどで、エンドゾーンまで5ヤードと迫ったが、DB國吉翔がこの試合2本目のインターセプト、オール三菱の望みを絶ち切った。
深川HC「フットボール人生で一番うれしいゲーム」 悲願のX1スーパー昇格を決めた電通は、オール三菱のミスに付け込んで、得点を防ぎ、味方の得点に結びつけた。全員がミーンなフットボールに徹した。
試合後のハドルで、「フットボール人生で一番うれしいゲーム」と選手たちに語りかけた深川匠ヘッドコーチ(HC)。
「今日は100点満点、いや100点で足りないくらい。選手・コーチすべてがかみ合ったゲームだった」と振り返った。
「特にディフェンス。ターンオーバーが無かったら負けていた。最後まで集中力を切らさず、今季一番の出来だった」
もともとXリーグは、仕事をフルにしている選手が多いため、練習日は週2日というチームが多い。だが電通はさらに少なく、練習日は週1日と決めている。チーム名の「電通クラブ」が示す通り、企業チームではない。電通社員だけでなく、他企業の社員や、自営業の人間、有名大学の大学院生なども選手として在籍している。
「僕らは、仕事も家庭も犠牲にしない。トップリーグを目指す以上は、何度も『週2回の練習にしたほうが』と悩んだけれど。質を高める練習でここまで強くなることができた」という。
その方針は、来季X1スーパーに昇格しても変えない予定だ。「仕事で多忙な人でも、プレーできる。そうすることでより多くの人材が集まってくれる可能性があるから。それがクラブチームとしての僕たちの強みですから」という。
深川HCは関学大の出身で、4年時は副将だった。「立命館に負けて。甲子園ボウルには行けませんでした。その立命館が、甲子園で勝ってライスでも勝って、日本一になりました」という。
オフェンスのスタッツで負けても、集中力を切らさずに、相手のミスに付け込んで快勝した電通。「関学大の戦い方ができたということですね」と尋ねると、「ありがとうございます。最高の誉め言葉です」と笑顔を見せていた。
オール三菱「球際の強さ」を欠く オール三菱はパス317、ラン69でトータル386ヤード、ファーストダウン更新20回。対する電通は、パス200、ラン113でトータル313ヤード、ファーストダウンは14回。オフェンスのスタッツではオール三菱が電通を上回った。X1スーパーの各チームの強力パスラッシュに苦しんだQBギブスが、この日は伸び伸びとパスを決め続けた。
だが、「球際の強さ」が、この日はチーム全体に決定的に欠けていた。ターンオーバー4回のうち、2回はTD目前でボールを失い、2回は電通オフェンスにTDに結びつけられた。さらに反則で70ヤード罰退するなど、完全に自滅のゲームだった。
2020年が新型コロナでリーグ戦参加辞退、昨年もシーズン途中まで参加しなかった。今季もリーグ戦は全敗で、2019年以来3年間勝ち星がない。
それが、重要な局面でのミス連発につながったのかもしれなかった。