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2023-01-13

変形性ひざ関節症教室 第7回 ひざの若さを保つ成分プロテオグリカン

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは、軟骨をさらに深く掘り下げ、軟骨の構成成分の一つである「プロテオグリカン」について紹介します。プロテオグリカンが果たす重要な役割について知りましょう。

プロテオグリカンって何?

軟骨はひざの骨を守り、滑らかな動きを促す大切なクッションです。軟骨は、強靭なコラーゲン線維(Ⅱ型コラーゲン)が網目状の骨組みをつくっています。このコラーゲンの鉄骨にヒアルロン酸が絡みつき、ヒアルロン酸にはプロテオグリカンが結合し、プロテオグリカンはコンドロイチン硫酸という枝を出しています(連載第6回で紹介)。

 軟骨の構成成分の一つであるプロテオグリカンは、軟骨内に3~5%程度とわずかしか存在しませんが、軟骨の保湿性、クッション性、潤滑性を保つうえで、非常に重要な役割を果たしています。

 プロテオグリカンは、タンパク質(コアタンパク質)を枝として、糖のかたまりをシダ植物の小さな葉っぱのようにつけた形状をしています。この小さな葉っぱのような部分にはコンドロイチン硫酸などの糖のかたまりが含まれ、この部分に強い保水性があります。

 小さな葉っぱのような部分はそれぞれ電気を帯びているため、一つひとつが互いに反発し、全体としてふっくらした形になります。一方、水は電気的に引き寄せられ、一つひとつの葉っぱのすき間に水分が入りやすくなっています。

 軟骨にコンドロイチン硫酸の葉っぱがたくさんあれば、それだけ水分をためておくことができます。木に葉っぱがたくさんあれば雨の水を吸収してためておくことができますが、せっかく雨が降っても木に葉っぱがなければ、木は水を吸収できないのと同じです。このプロテオグリカンは年齢とともに減少していき、軟骨の保水性、クッション性、潤滑性も低下してしまいます。


イラスト/石川正順

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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