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2022-12-22

【箱根駅伝一番星】3年時の苦しみを経て、復活。 最後の大舞台で中央大・千守倫央が4年生の意地を見せる

2年ぶりの箱根となる千守。スピードを生かす主要区間での起用が濃厚だ

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。期待されながら中大に入学するも、1、2年時は駅伝で成績が振るわず、3年時には新型コロナウイルス感染にケガと苦しい時期を過ごした千守倫央(4年)。最終学年になり、トラック、駅伝で共に好成績を残し本来の力が戻ってきてた。1500mで培ったスピードを武器に、総合3位以内を目指し再び箱根路を駆け抜ける。


もう一回頑張ろうと思えたのは、周りの人のおかげ

千守倫央は、期待されていた。

中央大に千守が入学してくると、藤原正和監督は「スピードがあります。これから大きく育ってほしいと思っています」と話し、実際、箱根駅伝でも1年生のときからメンバーに名を連ねた。千守は下級生時代のことを振り返る。

「箱根では1、2年生のときに1区を担当しましたが、それぞれ区間16位、17位でしたからね。チームに勢いをつけることができなかったんです」

3年生は苦難の季節となる。新型コロナウイルス感染、ケガで思ったように練習が積めない。

「走るのは、もういいかなと思ったこともありました。でも、周りの人たちからの温かい言葉を身に染みて感じたので、もう一回頑張ろうかと思えたんです。振り返ってみれば、1、2年生のときは自分のことしか考えられませんでした。自分の競技力のことだけで精いっぱいだったんです。でも、いろいろな苦しい思いを経験して、自分が強くなれたのかと思います」

駅伝に生きた1500mの駆け引き

いよいよ迎えた最後のシーズン、千守はケガなく練習が継続できたことで、充実のときを迎える。トラックシーズンは、もともと持っていたスピードを生かすために1500mに積極的に出場した。

「1500m、面白いんですよ。トラックを3周と4分の3走る間に、駆け引き、読み合いがあります」

9月に行われた日本インカレの1500mでは2位。千守のスピードがトップレベルのものであることを証明し、駅伝シーズンへと突入する。出雲駅伝では2区を担当し、1区を走った吉居大和(3年)から先頭でタスキを受け、区間3位。そして全日本大学駅伝では重要区間のひとつである1区で3位と流れをつくったが、1500mでの経験が全日本では生きたと話す。

「青山学院大の目片(将大/4年)君が飛び出したんですが、自重することにしました。その後、集団のなかで駆け引きがあったんですが、ほかの選手たちの出方を見るのに、1500mのレースの感覚が役立ったんです」

冷静にレースを運んでの区間3位。この結果を受け、藤原監督の信頼も厚くなった。藤原監督は箱根に向けてこう話す。

「上位でレースを進めるには、何枚かの“駒”が必要です。吉居大和、駿恭(1年)の兄弟もそうですが、今年は千守がその一角を狙ってくれるはずです。千守の復活は、中大としては大きいですね」

千守も最後の箱根駅伝に懸ける思いは強い。

「最後の箱根で良い走りをして、総合3位以内という目標達成に貢献したいです。良い形で練習を継続してきたので、自分自身、最後の箱根が楽しみです」

3年生で苦しみを経験し、周囲のありがたみを実感した千守。
白地に「C」のユニフォームを着て走る最後の箱根。そこには4年生の意地が詰まっている。

 

ちもり・ともひろ◎2000年12月27日、愛媛県生まれ。174㎝、55㎏、A型。勝山中→松山商高(愛媛)。高校1年時から3年間、都大路の1区を務め、高2で5000m、高3は1500mと5000mでインターハイに出場した。大学に入学後、1年時から2年連続で箱根の1区を務めたが、3年時は故障などで駅伝は不出場。4年生の今季、出雲2区、全日本1区で共に区間3位の走りで復活を印象づけた。自己ベストは1500m3分45秒19、5000m13分49秒41(共に2022年)、10000m28分15秒40、ハーフ1時間02分37秒(共に20年)。

文/生島 淳 写真/JMPA、松田杏子

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