前WBO世界スーパーフェザー級チャンピオンで、現WBO同級10位、WBC同級12位の伊藤雅雪(28歳=横浜光)が13日、東京・後楽園ホールに登場。ライト級10回戦をルーベン・マナカネ(26歳=インドネシア)と行い、初回に負った右目上の腫れに悩まされながら、計4度のダウンを奪って6回1分8秒TKO勝利を収めた。
「いやー、顔だけ見たら負けたみたい……」と、伊藤は苦笑を浮かべた。
初回にマナカネの頭を直撃されて、あっという間に右目上が腫れてしまった。
「3ラウンドくらいまでは、中間距離で戦いたかった」というが、不測の事態に、戦い方を変えざるをえなかった。強引な右のブローを何度も上下に繰り返し、力でねじ伏せにかかる。
だが、意外なことに、マナカネはそれを打たれてもケロッとした表情で、左右のフックをリターンしてくる。まともに浴びることはなかったものの、視界の狭さも手伝って、浅くもらうシーンも再三。防御技術に定評のある伊藤だが、その特性が前面に出てこなかった。
「いくら頭とはいえ、もらってはいけなかった。そこは悔しいし、恥ずかしい」
5月、WBO世界スーパーフェザー級王座の2度目の防衛戦をジャメル・へリング(アメリカ)と行い、サウスポーの挑戦者を捕まえることができず、判定負け。王座を陥落した。そこからの再起戦は、格下でノーランクのマナカネが相手。これはあくまで顔見せで、年内にふたたび世界へ──というのが青写真。ひょっとしたら、そんな考え方が、心の隙を生んでしまったのかもしれない。
頭を直撃されるまでの戦い方も、体全体の動きがほとんどなく、真正面からマナカネを圧倒しようという意図がありあり。フットワーク、肩、ジャブなどでリズムを構築していく伊藤本来の良さが見えなかった。
危険な距離に身を置きながら、リズムの取れていない伊藤は、中途半端なスウェーバックを見せるなど、不安を感じさせる場面もつくってしまった。
ダッキングで攻撃をかわすマナカネの特長を見抜き、ストレートを打ち下ろすかたちで4回にダウンを奪い、6回開始早々に右アッパーカットから、右サイドへ動いて右を打ち下ろしてダウンを追加。右ボディアッパーで2度目、最後は得意の右、左、右でトータル4度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。
「KO勝ちは最低限のこと。接近戦も冷静にできた。そこはよかったと思う」と振り返ったが、思わぬ負傷と、強引な攻撃にシフトせざるをえなかった点は、きっちりと復習し、反省すべきかもしれない。
「ベルチェルと戦いたい」──。WBC王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)との対戦を切望する。長いストレートは、思った以上に伸びてくる選手。この日のように、中途半端なスウェーを癖にしてしまっては危険。頭のいい、伊藤のことだから、映像を見直して修正点をいくつも見つけるはずである。
文_本間 暁
写真_菊田義久
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