27日、東京・後楽園ホールで行われたWBOアジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦12回戦は、同級3位の重岡銀次朗(ワタナベ)が4位クライデ・アザルコン(フィリピン)を初回1分12秒でKOし、プロデビューから4戦目でタイトルを手に入れた。
写真上=ボディへのワンパンチで倒し、悠々とコーナーへ向かう重岡
何の前触れもなかった。あまりに唐突で、さらに驚くほどに鮮烈なノックアウトシーンが訪れる。試合開始ゴングからちょうど1分が経過したころだ。サウスポーの重岡がすっとインサイドに入り込むや、そのまま左フックをボディにめり込ませる。23歳のアザルコンは一瞬、間をおいて、顔をゆがめながら崩れ落ちる。さらにキャンバスをなめるように上体を突っ伏したまま、レフェリーのテンカウントを聞いた。
身長153センチ。なりは小さいが、観客に与えたインパクトは強烈だ。あまりの痛みに歩くことができないフィリピン人が、やっと重い足取りで自コーナーに向かったのは数分後、重岡が勝利のコールを受けている最中だった。
「こんなに早く終わるなんて思っていませんでした。ずっと練習してきたパンチで倒せたのはうれしい」
圧倒的なタイトル奪取劇を演じたにもかかわらず、重岡の表情は冷静なままだった。
「小さいころから世界しか目標にしてこなかったんで。でも、チャンピオンベルトはいいですね。かっこいいし、重いし」
何度も、何度もベルトに目をやった。
ただし、渡辺均・ワタナベジム会長の育成方針は慎重なままだった。「あと1年くらいは(世界戦を)待たせたい。その間に防衛戦でもいいし、日本、東洋太平洋も獲ることも考えたい」
その言葉を聞いた重岡はどこか不満顔。「自分としては、チャンスがあればいつでもいいんですけどね」
小さな体に、強気だけがみなぎって見えた。
文◉宮崎正博
写真◉椛本結城
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