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2023-02-08

変形性ひざ関節症教室 第9回 ひざの栄養供給と滑らかな動きに重要な滑膜・関節液の役割

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは、軟骨に栄養を供給する滑膜と関節液について紹介します。滑膜と関節液の重要な役割について知りましょう。

関節液は滑膜でつくられる

 骨と骨が接触している関節は袋で包まれています。この袋は関節包(かんせつほう)といいます。関節包の内側は滑膜(かつまく)という薄い膜状の組織で裏打ちされています。滑膜には滑膜細胞や血管、リンパ管、神経があります。

 骨と骨のつなぎ目の先端には厚さ3〜5ミリの軟骨で追われています(連載第5回参照)。軟骨は血管や神経がなく栄養供給に乏しい組織で、修復能力が極めて低いのですが、滑膜では血液から関節液を作り出し、関節液を介して軟骨(軟骨細胞)に栄養を届けています。

 また、滑膜には関節液を吸収する役割もあります。正常であれば関節中の関節液はほぼ一定に保たれています。しかし、関節内で炎症などが起こると、滑膜で関節液が大量に生成され、生成と吸収のバランスがくずれ、関節液がたまってしまいます。

 主治医に「ひざに水がたまっています」と言われたことがある患者さんがいらっしゃると思います。ひざにたまっている水がこの関節液です。

 関節液は透明で粘り気のある液体です。タンパク質やヒアルロン酸(連載第6回参照)を含んでおり、ひざを動かすときの潤滑油(機械油みたいなもの)を担っています。軟骨のすり減りを防ぎ、関節を滑らかに動かすのに役立ちます。





プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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