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2023-02-14

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第14回「廻しにまつわる話」その3

平成22年夏場所、13日目に優勝を決めた後、ファンサービスで2日間だけ金色の廻しで登場した白鵬。その後、本場所では使わなかった

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力士が土俵に上がるとき、唯一、身につけることを許されているのが廻しです。
幕下以下は木綿製の黒廻し、十両以上は絹の繻子で色もカラフル、と地位によって違ってきますが、言わば、晴れの衣装ですね。
それだけに、力士たちの廻しに込める思いや、こだわりも十人十色。力士たちは廻しを締めて数々のドラマを演じてきました。
今回は廻しにまつわるエピソードを集めました。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

2日で格下げ

白鵬も、金色の廻しを締めて登場したことがある。平成22(2010)年夏場所のことで、場所前に金色の廻しを新調し、この場所から採用する予定にしていた。

ところが、直前になって、

「どうもしっくりこない」

と急遽、取りやめに。しかし、すでに報道陣に使用を予告していたこともあって、

「早く優勝が決まったら、締めるかもしれないよ」

と場所中のお披露目をにおわせていた。そして、13日目、早々と2場所連続14回目の優勝を決めると、翌14日目、満を持したように金色の廻しで登場。琴欧洲を豪快に寄り倒し、

「初めて締めたので、負けられない気持ちが強かった」

と胸を張った。

この場所の千秋楽、白鵬は土俵下で行われる恒例の優勝インタビューで、

「みなさんに謝りたいことがあります。優勝が早く決まり過ぎて、すみませんでした」

と異例の謝罪をしている。そのお詫びやファンサービスのつもりで金色の廻しを披露したのかもしれない。ただ、妻の紗代子さんが千秋楽の支度部屋でこの金色廻しについて、

「テレビで見てビックリしました。もうちょっと落ち着いた金色と思っていましたので」

と話していたところをみると、家族や、関係者の評判はあまりよくなかったようだ。結局、白鵬が金色の廻しで登場したのは14日目と千秋楽の2日間だけ。翌場所からまたそれまでの古い廻しに戻し、金色の廻しは花相撲用に格下げされたままだった。

月刊『相撲』平成23年12月号掲載

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