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2023-03-17

【相撲編集部が選ぶ春場所6日目の一番】大栄翔、危うく星を拾って連勝伸ばす。幕内の全勝は翠富士、髙安と3人に

土俵際、辛くも残しながら琴ノ若を突き落とし、全勝を守った大栄翔。これが結果的に貴重な1勝だった、となってくるか?

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大栄翔(突き落とし)琴ノ若

昨日まではすべて押し出しか突き出しと攻め勝ってきたが、この日ばかりは危なかった。
 
三役以上でただ一人の全勝力士の大栄翔が、土俵際の突き落としで星を拾い、なんとか勝ちっ放しをキープした。
 
この日は、直近の対戦で3連敗しており、合い口の悪い琴ノ若との小結同士の対戦。思い切ってぶつかっては行けるが、立ち合いの一撃で崩すことは容易ではなく、大きな関門となる相手だ。
 
立ち合い。大栄翔は頭からいったが、「自分の相撲で思い切っていくだけだった」という琴ノ若も互角の当たり。当たり勝てなかった大栄翔は腕を伸ばせず、逆に左をはね上げられて接近を許した。右を浅くのぞかせた琴ノ若はそのまま前に出る。大栄翔は一瞬、ハズに当てていた右手を抱え込まれそうになりながらも振りほどき、左に回りながら突き落とし。土俵際、ギリギリ残しながら、左足の送りがわずかに遅れた琴ノ若を土俵に這わせた。

「立ち遅れて、相手の相撲になってしまった」と大栄翔は反省しきりだったが、途中で右手を抜いた反応には「あそこで離れられたのはよかった。そういう稽古場の動きが勝手にできたというのはよかったんじゃないですか」と、動きには手ごたえも得ているようだ。
 
大栄翔としては、何とか勝ちを拾った形となったが、優勝するような力士には、あとから振り返ってみたとき、こういう危ない相撲を黒星にせず拾っているケースが得てして1、2番あるもの。「そこはプラスに考えて、明日からもやっていきたい」と語っており、これを一つの“吉兆”と見ることもできる。
 
この日は、4人いた全勝力士のうち、錦富士が碧山の廻しを取ってくるという予想外の攻めを食らって土。全勝は大栄翔、得意の肩透かしで遠藤を破った翠富士、一山本に一瞬イナされたが落ち着いて四つに誘い込み、下手投げでぶん投げた髙安の3人に。さらに1敗で阿炎、錦富士、琴恵光が続く形となった。
 
今のところ、ここまでの内容と過去の実績から見て、大栄翔と髙安を中心とした優勝争いが予想されるが、明日は髙安は全勝同士で翠富士と対決、大栄翔も若元春との対戦が組まれるなど、中盤戦に難敵との対戦が連続する番付にいるだけに、ともにこれからの中盤戦をどう乗り切れるかが大事になるだろう。
 
なお、今場所綱取りを懸ける大関貴景勝は、この日は御嶽海に押し出されて3敗目。やはり昨日のように立ち合いからの流れで一気に決めてしまうことができないと、苦しくなる感じは否めない。最近の傾向からして優勝ラインは3敗でギリギリということを考えると、この状態で残り全勝というのは、ちょっと現実的な話とは考えられなくなってきた。足を痛めた状態で一人大関の責任がのしかかるのは大変だろうが、何とか気持ちを切らさず、最後まで踏ん張ってもらえることを期待したい。

文=藤本泰祐

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