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2023-05-01

【陸上】織田記念・女子100mHで田中佑美が日本人4人目の12秒台で制覇 日本記録保持者・福部も12秒台歓迎

日本人4人目の12秒台の快挙。正式タイムが表示されると笑顔がはじけた田中(写真/中野英聡)

4月29日(土)、広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)で行われた第57回織田幹雄記念国際大会。女子100mHに日本記録保持者・福部真子(日本建設工業)や青木益未(七十七銀行)、寺田明日香(ジャパンクリエイト)ら注目選手が出場。決勝では、田中佑美(富士通)が12秒97(+0.6)で優勝。日本人史上4人目となる12秒台をマークし、今季国内での初戦を優勝で飾った。

自己記録を0秒15更新し、12秒台に突入

予選1組で福部が12秒95(+0.6)、田中が13秒07をマーク。2組目は青木が13秒14(+1.2)、3組目は寺田が13秒04(+0.8)でトップに立ち、決勝に進出した。芝田愛花(エディオン)、中島ひとみ(長谷川体育施設)、紫村仁美(リタジャパンアスリートクラブ)、清山ちさと(いちご)も予選を通過。豪華な顔ぶれとなった決勝のレースに注目が集まった。

3レーンに入った寺田が決勝のレースを棄権したものの、4レーンに田中、5レーンに青木、6レーンに福部と並ぶ。号砲と共に好スタートを切った青木を中心に接戦が繰り広げられ、4~6レーンの3選手が一歩リード。そこから6台目で田中がわずかに前に出る。リードを維持した田中がトップでフィニッシュラインを駆け抜けるとフィニッシュタイマーが12秒97で止まり、場内がざわめいた。共に走った選手たちから握手やハイタッチで祝福を受けた田中。正式タイムが12秒97(+0.6)と日本人史上4人目の12秒台が確定すると再び笑顔を見せた。

田中は今季、1月からヨーロッパとオーストラリアを転戦し、室内の60mHでは8秒1~3台、屋外の100mHでも13秒1~2台で計6レースをまとめ、好調なスタートを切っていた。今大会は国内初戦だったが、雨天、気温17.0度(15時現在)のなかのレース。12秒台が出たことは本人も驚きだったという。

「昨年はスタートが全く決まらず、福部さんや青木さんにスタートで大きな差をつけられていて、お話にならなかったのですが、骨盤をはじめ身体の使い方が上手になったこと、スタブロの位置の見直しを行いました。それがハマったのもあって1台目からスピードに乗って皆さんについて行けたのだと思います」と記録更新の要因を挙げた。

4レーンから田中、青木、福部が並び田中は「スタートが得意なお二人(福部、青木)に引っ張ってもらいました」(写真/中野英聡)
4レーンから田中、青木、福部が並んだ決勝。「スタートが得意なお二人(福部、青木)に引っ張ってもらいました」と田中が優勝を飾った(写真/中野英聡)

この2年間の取り組みが結実 海外転戦でメンタル面も成長

社会人2年目の昨年は、3月の日本選手権室内の60mH(8秒22/3位)を初戦とし、以降の100mHでは織田で13秒52(-2.8)で5位。セイコーゴールデングランプリで13秒39(-0.1)、東日本実業団では13秒38(-1.3)と13秒3台。日本選手権では予選で13秒12(+0.3)の自己記録をマークするも、準決勝13秒28(-0.1)、決勝13秒35(+0.8)で3位と13秒2~3台からなかなか抜け出せずにいた。

課題としていたスタートを冬期に改善。直接的にスタート局面にアプローチをかける練習を多くしたわけではないというが、走動作を行うなかで身体の使い方を修正してきた。走りの根本を見直したことで、スタートも良くなってきたという。田中は、立命大卒業後、新たな学びを求めて拠点を筑波大に移し、谷川聡氏を師事。「ここまで2年間の取り組みが実を結んできた」と次のステージへの足掛かりをつかんだ様子だった。

海外でのレースも経験し、「周りを気にせず、レースでは切り替えて自分に集中できるようになった」と一皮むけた姿を披露した田中。次戦は地元・大阪で行われる木南記念だ。「地元の方々にたくさん応援していただいているので、恩返しができるような走りができたらと思っています」と言葉にも力がこもる。

寺田、青木、福部に続いて田中までもが12秒台に入った。現・日本記録保持者の福部は「あと2人、3人(12秒台の選手が)今シーズン中には出てくると思う。やばいって感じよりはうれしいですね。レベルが上がってきたなかで自分も上のレベルにいられている。自分自身の成長も感じられています」と盛り上がりを歓迎している。2019年に寺田が12秒台をマークしてから4年。中学生、高校生にも有力選手がいる女子100mHはこの先、さらにレベルが上がり、層の厚みが増していくだろう。

文/常盤真葵 写真/中野英聡

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