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2022-10-19

【陸上】栃木国体で群馬に19点をもたらした栁田兄弟「いつか3人で同時に世界大会に出られたら」

それぞれのサポートをし合い戦った栃木国体。大輝(中央)、聖人(右)、聖大(左)の3人で19点を獲得した(写真/田中慎一郎)

3人で挑んだ初の全国大会

3年ぶりに開催された国体に、群馬県代表として栁田大輝(東洋大1年)、聖人(東農大二高3年)、聖大(東農大二高1年)の三兄弟が出場した。今夏の世界選手権4×100mRに出場し、U20世界選手権の100mで6位入賞、4×100mR(4走)で金メダルを獲得した長男の大輝にとっては3度目の国体だったが、初めて三兄弟で挑む特別な大会となった。

まず、初日の少年B走幅跳で、聖大が7m13(+1.8)を跳んで優勝。3年前には同じく東農大二高の1年生だった大輝がこの種目を制しており、兄弟優勝を果たした。大輝から「俺の記録を抜けよ」と送り出されたという聖大は、「自己ベスト(7m24)を更新できなかったし、兄と比べるとそれほどでも……」と謙遜したが、初の全国制覇を成し遂げた。

2日目には、少年A300mHの決勝に聖人が出場した。三男の聖大が「僕が知っている選手のなかで、一番努力している」という努力家の次男。ハードル間の歩数が合わず、やや悔しさが残るレースとなったが、37秒91で6位に入った。中学3年時には全日中の四種競技で2位の実績があるが、高校では個人種目で初の全国入賞。「前日に弟が優勝して、僕はそこまで行けませんでしたが、兄弟3人で国体に出場できたことで、また頑張ろうと思えました」と話し、大学での飛躍を誓った。

そして、3日目には大輝の成年100m決勝が行われた。「弟2人もそうですし、東農大二高勢が頑張っていたので、自分がダメだったら群馬のテントに帰れないという気持ちでした」と、勝つことだけを考えて臨んだという。前半は共に世界選手権に出場した坂井隆一郎(大阪・大阪ガス)にリードされたものの、落ち着いて終盤に逆転。10秒30(+0.2)で優勝を果たすと、「こんなにうれしかったのは久しぶり」と、フィニッシュ後は何度もガッツポーズを見せた。この日は、ウォーミングアップのときから聖大が動画を撮るなどサポート。「弟ながら頼もしかったですね」と大輝は感謝した。「今日は朝から勝てると思っていました」と、自信を持って挑むことができたのも、弟たちの存在が大きかったのだろう。

左から少年男子B走幅跳優勝の三男・聖大、成年男子100m優勝の長男・大輝、少年男子A300mH6位の次男・聖人(写真/田中慎一郎)
左から少年男子B走幅跳優勝の三男・聖大、成年男子100m優勝の長男・大輝、少年男子A300mH6位の次男・聖人(写真/田中慎一郎)

競技者としては互いをリスペクトする3人だが、普段はとても仲が良い兄弟だ。父の輝光さんは国学院栃木高(栃木)、東海大で三段跳選手として活躍、母の昌代さん(旧姓・森原)は西邑楽高(群馬)、日女体大時代に七種競技の選手で、高校時代に日本ジュニア選手権を制している陸上一家。一昨年春、コロナ禍による休校期間中には、寮生活をしていた大輝も自宅に戻り、弟たちと練習した。練習メニューは大輝が考えていたが、休日には父と三兄弟の4人でトレーニングをしていたという。大輝は昨夏の福井インターハイで100mを制し、「いつも応援してくれた家族に感謝したい」と目頭を押さえたことも。それほど、家族、兄弟の絆は固い。

今大会、群馬県は天皇杯で69点(参加得点10点を除く)を獲得したが、うち19点は栁田兄弟による得点だった。これからも続く3人の競技生活のなかでも、思い出深い大会となったに違いない。そして、それぞれに次のステージへと向かっていく。「夢みたいな話になりますが、いつか3人で同時に世界大会に出られたら」という三男の言葉に、家族の思いが凝縮されていた。

文/石井安里 写真/田中慎一郎

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