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2023-05-24

変形性ひざ関節症教室 第16回 変形性ひざ関節症の発症・進行因子① 「O脚」はひざ痛の原因

 ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回から2回にわたり、変形性ひざ関節症の発症と進行に関連する5つの因子について説明していきます。

発症・進行に関係る内的要因と外的要因

 変形性ひざ関節症は、いろいろな要因が絡み合って発症・進行していきます。

 内的要因としては、アライメント(骨の配列)、体重、性別、遺伝・素因、ひざの不安定性、大腿四頭筋の筋力低下が挙げられます。外的要因としては、過度な運動やスポーツ、事故などによる外傷・障害(半月板損傷、靭帯損傷、軟骨障害)、それに伴う手術などが挙げられます。

 例えば、脚のアライメント異常でO脚になっている人はひざの内側にストレスが大きくかかります。肥満体で体重が重ければ、歩行などの移動時にひざに強い衝撃が繰り返しかかります。ケガなどで半月板や靭帯に損傷があると、軟骨を傷つけるリスクが高まります。これらの要因からひざへのストレスの増大やリスクが絡み合って、変形性ひざ関節症を発症します。


 変形性ひざ関節症の発症・進行に関連の深い、アライメント、体重、性別、遺伝・素因、外傷・障害の5つの要因のうち、今回はアライメント=O脚について、説明していきます。

アライメント:O脚はひざ痛の原因

 アライメントとは骨・関節の配列のことで、ひざの場合は骨の形、関節のゆるさによって決まります。下肢アライメントは下肢全長をX線で撮影して計測します。大腿骨頭の中心から足関節中心を結んだ線を、仮想の下肢荷重線(ミクリッツ線)として考えます。

 通常、下肢荷重線はひざの中心よりやや内側を通りますが、O脚ではさらに内側、X脚ではひざの外側を通ります。荷重線がひざの中心から離れるに従ってひざへのストレスが偏り、ストレスが強くなります。

 下肢アライメントは正常でもある程度の幅があり、もともとO脚の人もいます。内側型の病状が進むと内側の関節のすき間が狭くなり、下肢荷重線はさらに内側に偏ってO脚が進みます。その結果、内側にかかる荷重が増え、さらに軟骨がすり減るという悪循環に陥り、変形性ひざ関節症は進行していきます。


レントゲン画像:田代俊之  イラスト:石川正順


プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。


この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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