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2023-05-16

【相撲編集部が選ぶ夏場所3日目の一番】大関取りの霧馬山、3日目に土。照ノ富士、大栄翔、若元春、琴ノ若らが3連勝

大関取りの霧馬山は阿炎の引き落としに遭い、3日目にして土。まだ表情にも余裕があるが、この黒星が焦りにつながることがないようにしたい

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阿炎(引き落とし)霧馬山

きのうまでの段階では、あまり不安要素はないように思われた今場所大関取りの霧馬山が、3日目にして1敗を喫した。この日の対戦相手の阿炎は、この1年の対戦成績が霧馬山の4勝0敗。加えて初日、2日目とあまり精彩がない相撲で連敗している力士だけに、波乱の種はそれほどないかと思っていたが、やはり土俵上での一番は、やってみなければ分からない。

立ち合いは霧馬山も悪くなかった。「いつも通り下から下から行こうと思った」と、阿炎のモロ手突きを下からあてがい、右差し、左ハズに入るいい体勢で一気に出る。だが阿炎には早い横への動きと、思い切りのよさがあった。下がりながら右に回り、右手で霧馬山の頭を押さえつけると、二人の間に少し距離ができ、霧馬山の右足が流れる形に。そこを阿炎は右からの突き落とし。霧馬山は土俵に這った。同門でよく稽古をしている相手だというが、この日はそれが、気負わず取れるという阿炎にとってのいい形に出たということか。

「まあ(内容は)よかったと思いますけど最後もう一歩足が出なかった」と霧馬山。3日目にして1敗を喫するのは誤算ではあろうが、内容的には攻めての負けで、まだ変調をきたしたという感じではない。1敗したことについても「まだ(先は)長いし。これから」と、落ち着いた表情はこれまでと変わっておらず、そういう意味では、巷間言われる大関昇進ラインまでは多少星数に余裕があるところが生きてくれる可能性はある。

怖いのは、気持ちに焦りが出て、土俵上で勝ち急いでしまうこと。きのうこのコラムで書いた「1敗の後」という状況が、これほど早く来るとは思わなかったが、そこさえ気をつけていけば、まだ大関は十分射程にあるはずだ。

この日は、この霧馬山と、翔猿の横への動きで叩き込まれた豊昇龍が敗れたが、残る2関脇はしぶとさを見せて白星を連ねた。若元春は正代にモロ差しで寄られ、危なかったが、土俵際に強い持ち味を発揮。俵に足がかかった瞬間、体をひねって左からの突き落としで逆転勝ちした。大栄翔は錦木に一瞬組まれたが、「何かするしかない」と手にかかった右上手から振り回して組み手をほどき、最後は押し出した。「1場所で何番もこういう相撲で勝てるわけではないんで。でも勝ち星が続いていることはいいこと」(大栄翔)と、揃って上々の滑り出しだ。このほか、今場所復活をかける横綱照ノ富士、錦富士を右からの上手投げで転がした琴ノ若が役力士では3連勝。4日目はこの中から若元春と琴ノ若が全勝対決することになった。
 
大混戦の場所もそれはそれで面白いが、やはり横綱・大関がしっかり出てきて、強い関脇がいる場所は見どころが多い。このところすっかり忘れていた、そんな感覚が思い出されるここまでの序盤戦だ。

文=藤本泰祐

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