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2023-05-17

【相撲編集部が選ぶ夏場所4日目の一番】左を差して一気の逆襲! 若元春が琴ノ若との全勝対決を制す

琴ノ若を左四つから寄り詰める若元春。最後は押し出して難敵を降し、4連勝と勢いに乗ってきた

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若元春(押し出し)琴ノ若

やはり、左が入ると強い。この日行われた若元春と琴ノ若の3連勝同士の関脇・小結対決。勝って初日からの連勝を4に伸ばしたのは、若元春のほうだった。
 
この日の相手の琴ノ若は、先場所土俵際の打っ棄りで初めて勝つまでは4連敗していた、若元春にとっては合い口の悪い相手。「頭から当たるとはじかれるというか、うまく相手の形を作られてしまうので」と、先場所同様胸から当たる立ち合いでいく工夫を見せたが、それでも少しはじかれ、先手で攻め込まれた。得意の左を差そうとしたが、右でおっつけられ、左ノド輪で追い詰められる。それでも何とか土俵際で左をねじ込むと、それを命綱にグイッと土俵中央に寄り返した。相手が左を巻き替えてくるところを出ながら左下手をつかむと、右もおっつけから上手に手を掛け、 相手の掬い投げをこらえながら寄り詰める。最後は琴ノ若が土俵際で見せた左の突き落としにも耐え、体を預けて押し出した。
 
取組後、「追い込まれたが焦らず?」の問いには「焦ってはいますよ。何とか必死に残して(反撃に)つなげている」と、ギリギリの勝利を強調しながらも、「心身ともに充実しているから、あそこで前に出られたのかな」とも。場所前、関脇同士で数多く稽古を積むことができたのが、充実の要因になっているようだ。
 
これで初日から4連勝。初日は左の相四つの遠藤をガッチリつかまえて上手から投げ捨て、一枚上、というところを見せた。2日目はよく見て突いて出て翔猿を圧倒し突き倒し。3日目は正代に攻め込まれたが土俵際で左から突き落として逆転勝ち。そしてこの日は左を差したところからの逆襲と、結果的にはさまざまな形での強さを披露しながらの連勝となっており、そこに地力の伸びが表されているようにも思える。

「自信みたいなものはあまり持ったことはないが、ちょっとずつ自分のしたいこと、取りたい相撲が取れてきていると思う」と、自信とは言わないまでも、手応えのようなものは、自身の中にも感じているようだ。
 
実弟の若隆景は右ヒザを痛めて無念の休場中。「弟のことを考えて相撲は取れないが、それだけではなく、地位とかいろんなものがあって、恥ずかしい相撲は取れないという気持ちはある」と、新関脇ではあっても、自覚は十分だ。
 
思えば去年の今頃は、大関候補といえば、春場所で優勝した若隆景が一番手だった。そこから一年。そのとき弟の背中を追っていた兄が、今は霧馬山や大栄翔に続く大関候補の一人と目される存在になった。新関脇となった場所前の会見では「弟が戦ってきた地位なので。そこに追いつけた。負けないように出し切りたい」と感慨を語っていた兄だが、もしかしたらもう一つ上の地位は、まず兄から年の順、ということになるかもしれない。

文=藤本泰祐

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