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2023-05-31

【陸上】日本選手権展望<男子やり投>80mスローワーが集結。前回王者ディーンを軸に世界選手権標準記録85m20超えに期待

前回王者のディーン、今季日本最高の83m54を投げた崎山、日本歴代2位の86m83を持つ新井(左から)

6月1~4日、大阪・ヤンマースタジアム長居にて第107回日本選手権が開催される。ブダペスト世界選手権、アジア選手権、アジア大会の代表選考会を兼ねた今大会、ハイレベルな戦いが繰り広げられるのは必至だ。注目種目のなかから、まずは大会初日の男子やり投を展望していく。

 ターゲットは85m20超え

男子やり投は80mスローワーたちが、世界選手権代表争いを繰り広げる。

今季の実績では織田記念、セイコーGGP(ゴールデングランプリ)と2勝したディーン元気(ミズノ)と、木南記念を83m54の今季日本最高、日本歴代5位で制した崎山雄太(愛媛陸協)の2人が優勝候補。

ディーンは世界選手権で9位と入賞に迫った昨年、自身の投てき技術がある程度確立できたが、安定して発揮できなかった。「今年は安定させて、そのなかでも狙っていくシーズンにしたい」という。

シーズン前から「自己記録(2012年に出した84m28)は勝手に出る」手応えがあった。82m03を投げたGGPでは、「5、6投目が惜しい投てきだった」という。

「技術の部分をやるためにゆったりした助走をしてしまいました。無意識にある程度スピードが出る走りができれば、(良い内容の投てきが)できていたかもしれません。それでも82mくらい距離が出ているので、85m以上の力があると確信できました」

標準記録の85m20突破も十分期待できる。


過去3大会は80m超で決着。ディーンは2年連続3度目の優勝を狙う

上り調子の崎山にも可能性が感じられる。速い助走が武器で、木南記念では「ここに投げる」というイメージを持ち、そのための技術ができた。

「85mを投げようと思ったら、40mから45mが最高到達点になります。そこに穂先が上がっていないやりを投げるためには、どういう角度で投げて、どう振り切ればいいか。最高到達点を一番見ました」

崎山も85m以上を投げる準備ができている。

3位以内を見据えた戦い方も重要

2人以外では新井涼平(スズキ)が、シーズン初戦で82m21を投げている。

「今季は脚から投げられています。(その結果)全身を使って綺麗に投げられるようになったかな、というところまでできています」

織田記念は雨で「重心がずれてバラバラに」なってしまったが、「85mは投げるつもりだった」という。新井も標準記録を明確にイメージしていた。

実績では上記3人には及ばないが、若手の巖優作(筑波大3年)も、4月15日に80m09と学生3人目の大台突破を果たした。日本学生個人選手権、関東インカレと学生カテゴリーの大会で2連勝。日本選手権で、高校(市尼崎高・兵庫)の先輩でもあるディーンに挑む。

巖の特徴は「肩周りと胸椎の動的可動域が大きいこと」だと大山圭悟コーチ。

「1、2年時に故障している間も、しなった姿勢で大きな力を出すトレーニングを辛抱強く積み重ねていました」

巖本人は関東インカレの際には「来年85mを投げる」と話していた。

「今年は80m台を安定させるシーズンにしたいと思っています。日本選手権は自己新を投げて、トップ選手がそろうなかでなるべく上位に入りたいですね」

東京五輪代表だった小椋健司(エイジェック)は、今季はまだ80mスローがないが、78m台を3試合でマークする安定ぶり。GGPでは78m99で3位、日本選手ではディーンに次いで2位だった。Road to Budapest 23(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では、5月30日時点で19位。日本人2番目につけている。

世界選手権の代表選考を考えると、確実に3位以内に入る戦い方も重要になる。


小椋はセイコーゴールデングランプリで78m99を投げて日本人2番手に

文/寺田辰朗 写真/椛本結城、中野英聡

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