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2023-06-28

変形性ひざ関節症教室 第19回 変形性ひざ関節症の進行と症状② 正常・初期・中期・末期のひざ状態

 ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、変形ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。前回に引き続き、変形性ひざ関節症が進行について詳しく説明していきます。正常・初期・中期・末期のひざのレントゲンと関節鏡の画像もあわせて見ていきましょう。

正常では関節のすき間が保たれている

 軟骨のすり減り具合は、X線撮影によるレントゲン画像によって確認することができます。レントゲンでは軟骨は写りませんが、関節のすき間の程度と左右のバランスから、すり減り具合がわかります(左側の画像)。軟骨そのものは、関節鏡画像によってその表面をみることができます(右側の画像)。

 ひざの上の骨(大腿骨)は2つの山に分かれ、ひざの下の骨(脛骨)は平らな形をしています。そしてそれぞれの骨の先端は軟らかい関節軟骨で覆われています。


 正常なひざ関節では、軟骨がすり減っていないので、関節のすき間は内側も外側も同程度に開いています。軟骨の表面はつるつるで傷や毛羽立ちがありません。

 変形性ひざ関節症は、こうした正常な状態から、ゆっくりと時間をかけて進行していきます。

レントゲン画像&関節鏡画像:田代俊之

初期では損傷が始まり動き始めが痛い

 初期ではひざにこわばりや動きにくさを感じます。また、立ち上がるときや歩き始めなど、動き始めに痛みを感じます。

 動き始めは痛くても、動き出せば痛みを感じずに歩けることも多いです。歩きすぎたりすると痛みが強くなるなど、痛みに波があるのも初期の特徴です。

 この時期は、軟骨が少しずつすり減り始めています。初期の痛みは、軟骨の損傷が始まったことによる滑膜などの炎症が主体と考えられます。初期でしばらく安定する方もいれば、どんどん進行して中期に進んでしまう方もいます。

 初期の変形性ひざ関節症は、異常を感じてもそれとは気づかずに見逃されがちです。この時期から適度な運動を行い、体重は増やさないようにして、筋肉量を増やすことが、悪化を食い止めるには重要です。



レントゲン画像&関節鏡画像:田代俊之

中期では歩行時や階段で痛みが出る


 さらに病状が進むと、歩くたびに痛みがでて、階段の上り下りが1段1段になったり、手すりに頼るようになったりします。

 また、ひざの曲げ伸ばしが硬くなり、正座がしにくくなります。山登り、ジョギング、ゴルフ、散歩など、趣味で歩くことにも支障が出てきてしまいます。

 この時期では、軟骨のすり減りが進み、内側荷重になっていきます。炎症がひどくなると、痛みだけでなく、熱や腫れが生じることがあり、ひざに水がたまることもあります。
 中期では初期のようにしばらくすると痛みが自然になくなるということはありません。医療機関を受診して、症状を抑えたり、進行を遅らせたりする治療を相談することをお勧めします。

 もちろん、中期でも適切な運動は、悪化を防ぐために重要です。


レントゲン画像&関節鏡画像:田代俊之

末期になると長い距離が歩けなくなる

 末期になると、レントゲン画像でわかるように、ひざの上下の骨(大腿骨と脛骨)が接触しています。ひざの軟骨がすり減ってほとんどなくなり、関節鏡画像でみられるように骨が露出した状態になっています。見た目のO脚も進み、ひざ自体の変形も進んできます。

 軟骨がなくなり、骨と骨が直接ぶつかるため、痛みはさらに激しくなり、連続して歩ける距離が短くなってきます。このため、買い物や病院通いなど日常での移動にも支障がでてきます。

 外出がしづらくなると、人と話をしたり、楽しいことをしたりする機会が減ってしまいます。ふさぎ込みがちになり、生きる楽しみを失うなど、精神的な面にも影響が及びます。

 痛みは慢性疼痛となり、神経が感作され、さらに痛みを強く感じるようになります。

レントゲン画像&関節鏡画像:田代俊之

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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