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2023-07-10

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所2日目の一番】横綱を転がした! 錦木が土俵際の掬い投げで鮮やかな金星

タイミングのいい掬い投げで、横綱照ノ富士を転がす錦木。このあと対戦する大関取りの3関脇にも嫌な存在になるか

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錦木(掬い投げ)照ノ富士

横綱が、ものの見事に転がった。
 
転がしたのは錦木。左からの掬い投げが、これ以上ないタイミングで決まった。
 
過去の対戦成績は0対3と、まだ勝ったことがない照ノ富士戦。先場所は右四つから起こされ、左小手投げでねじ伏せられている。
 
ただ、錦木はきのうの初日は霧島の休場で不戦勝、この日がこの場所初めての取組となるだけに、「初日のつもりで」と気合が入っていた。先場所は後半8連勝。つまり、先場所の中日以降は本場所の土俵での負けはない。その勢いと自信をぶつけた。
 
立ち合いは互角。相対的に低く当たる形になった横綱のほうが押し込む形になったが、錦木はやや下がりながらも右から左とねじ込んで二本差し。照ノ富士は外から抱えて出るが、相手のヒジを極めてしまうには至らなかった。
 
先場所前半は、相手を外から抱える相撲で勝星を挙げている照ノ富士だが、それは小兵力士相手のこと。完全にヒジを極めることができなければ、攻められたときの反り腰と怪力を持つ錦木はそのまま持っていける相手ではなかった。錦木は、俵に右足がかかるかかからないかのところで重心をずらしつつ、左からの掬い投げ。これが照ノ富士が出ようとするタイミングと見事にかみ合った。「流れで投げられました。タイミングがよかったですね」(錦木)。鮮やかに、逆転の投げが決まった。

「いやあ、うれしいですねぇ」と、取組後の錦木は笑顔満面。金星は平成31年初場所3日目に鶴竜を寄り切って以来2つ目。照ノ富士からは初めてだ。この日も「(懸賞金で)安いいも焼酎をたくさん買います」と笑わせたが、おしゃべりが達者で、いつも取組後の囲み取材が楽しい力士。この日のNHKの殊勲インタビューでは「この2日間どうですか?」に、「いえ、きのうは取ってないですけど」、「三役復帰も……」には、「いえ、昇進ですね」と、金星獲得直後で興奮しているのかと思いきや、むしろ聞き手以上に冷静な? 受け答えをしていたのが印象的だった。もしかしたら、このあたりの冷静さが、このところ上位の土俵でも存分に力を出せている秘訣なのかもしれない。
 
あす3日目は豊昇龍との取組が組まれたが、最近の取組編成の傾向からいくと、このあと大関取りの3関脇との3連戦になる可能性も。3関脇は初日に続いて、それぞれこの日も充実の内容で連勝してきているが、ちょっと嫌な相手として浮上してきた。裏返して言えば、この錦木が、3関脇の大願成就への序盤戦におけるキーマンになるか。あすからの楽しみが、また増えてきた。

文=藤本泰祐

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