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2023-07-12

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所4日目の一番】この日から登場の霧島が危なげない取り口で「大関初白星」。3関脇の壁に浮上?

最後は小手投げをかわして琴ノ若を送り出し、危なげなく「大関1勝」を挙げた霧島。大関取りを狙う3関脇への壁になるか

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霧島(送り出し)琴ノ若

横綱照ノ富士が、この日から休場(こちらが心配していた右ヒザではなく、腰のヘルニアなどの症状との理由だったが)。最後に土俵を締める存在がいなくなった……かと思いきや、入れ替わるようにこの日から登場した新大関が、ビシッとその役割を果たした。

「右肋骨骨挫傷」の診断で、初日から休場していた霧馬山改め霧島が、故障の影響を全く感じさせない完勝を見せた。
 
この日の相手は小結の琴ノ若。2日目に明生にうまく取られて1敗を喫してはいるが、ここまでの内容はそう悪くはなく、実質的な「大関初日」としては、楽な相手ではない。
 
だが、「新大関の初日の相撲を取れなかったのが悔しかった。お客さんに早く相撲を見せたかった」という霧島は、集中力が研ぎ澄まされていたのだろう、素晴らしい立ち合いを見せた。今までよく見せていた、手を相手の肩にあてがう形ではなく、下から低く、ガツッと当たった。琴ノ若はモロ差し狙いだったが、その手をおっつけて差させず。やむなく琴ノ若が突いて体を離しにきたところを下から二本差した。そのまま右の腕を返し、相手が小手投げにくるのにも動じず、腕を突きつけるように寄り、最後は相手の体をかわして送り出した。

「土俵に上がる前は緊張と不安がありましたが、土俵に上がったらちょっと落ち着いたので。勝っても負けても、自分の相撲を取ることだけしか考えてなかった」と霧島。本人も、そして周囲も、この白星にはホッとしたことだろう。

そして相撲内容も、この日見た限りでは、故障の影響はまったくないようにすら見えた。もちろん、受けに回ったときにどうなのか、とか、故障個所に負担のかかる動きになる可能性はあるのか、などはまだまだ分からないが、琴ノ若相手にこれだけ危なげのない相撲を取れたということは、自分のペースで動けてさえいれば、「大関相撲」が取れる、ということの証明にはなるだろう。
 
扱いとしてはすでに3敗と同じなので、霧島自身の優勝ということはなかなか難しいだろうが、今場所の焦点である、豊昇龍、大栄翔、若元春の3関脇の大関取りなるか、という視点から考えると、場所終盤、昇進への壁になる可能性はある、という見立てはできる。
 
この日の3関脇は、きのうまで全勝できていた大栄翔が、今場所絶好調の錦木を攻め切れず1敗。豊昇龍、若元春は勝って、3人が3勝1敗と今場所の星の上では並ぶことになった。照ノ富士に代わって終盤に霧島が壁となる可能性が浮かび上がってきたことで、きのうの打ち出し時点と比べると、楽観できなくなってきた感じはある。
 
そうしてみると、3関脇にとって、5日目終了時点で4勝1敗とするのか、3勝2敗になるのかは精神的にかなり差があると考えられ、あすの結果は「トリプル大関取り」を大きく左右すると言える。対戦相手は豊昇龍が阿炎、若元春が錦木、大栄翔が明生。全員怖い相手で、興味は膨らむ。

3関脇の大関取りを中心に、先場所から12連勝の錦木はどこまで行くのか、平幕で星を挙げてきた朝乃山、髙安の両元大関がこれからどう優勝争いに絡んでくるのか、豪ノ山、伯桜鵬、湘南乃海の「新入幕トリオ」も元気、そして新大関霧島の巻き返しは? と、これからも見どころは尽きない。照ノ富士は残念ながら土俵上から消えてしまったが、タレントはまだまだいる。中盤戦、後半戦も、実力伯仲の熱い戦いは続いていきそうだ。

文=藤本泰祐

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