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2023-07-19

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所11日目の一番】苦手の遠藤も破り1敗キープ。北勝富士敗れ、錦木が単独トップ奪回

遠藤を横に逃がすことなく追い詰め、寄り切る錦木。残り4日、果たして逃げ切れるか。

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錦木(寄り切り)遠藤

きのう、「何で当たるんですか」と嫌がっていた、苦手な相手も圧倒した。錦木が、過去の対戦成績で1勝6敗だった、2敗の遠藤を寄り切り。1敗で並んでいた北勝富士が若元春に敗れたため、6日目以来の単独トップを奪回した。
 
この日の錦木は、立ち合いはさほど突っ込まず、角度だけはある程度つけて、下から遠藤の腕を跳ね上げにいった。おそらくは、立ち合いに廻しをつかまれたり、サッと差されることを警戒していったのだろう。ここ数日は、立ち合いの勢いが場所の序盤ほどではなくなったようにも見えていたが、この日のそれは、作戦という面が強かったように見えた。
 
そのあとは、相四つでもあり、左差しに成功。同時に遠藤に右上手を許したが、右に回って上手投げで崩そうとする遠藤が動く方向に体を寄せて逃がさず、右はおっつけて圧力をかけ向正面に寄り切った。

「苦手意識しかなかったけど、ガッツリ組まれない流れはできたかなと思います」と錦木。苦手ではあっても、その対戦成績はほとんど平幕下位にいたときの話。今場所の錦木は、やはり別人だということなのかもしれない。
 
この日、北勝富士が2敗に後退し、再び単独トップ。ということは、残りを全勝すれば優勝、となる。今後の対戦相手は、あすが新入幕の湘南乃海。その後は、今場所は幕内中位に好成績者が少なく、あまり候補が固まらないが、平幕上位では、正代(対戦成績4勝3敗)、宇良(同1勝4敗)、阿武咲(同3勝1敗)、幕内下位では北勝富士(同不戦勝含め6勝5敗)、竜電(同2勝4敗)、宝富士(同5勝5敗)、新入幕の伯桜鵬あたりから、今後の成績を見ながら選ばれることになるか。この状況で、実績はあるが手の内を知ったベテランと、実績は少ないが手の内の分からない若手のどちらがやりやすいかは分からないが、とにかく一番一番星を重ねていけば、栄冠が見えてくる。
 
本人は「(優勝は)11番、12番、勝ってからじゃないですか、考えるのは」と言うが、この日までは、「二ケタ勝利で新三役に」という目標で前進してきたのが、そこに到達し(もし関脇、小結がすべて勝ち越しても、さすがに10勝すれば新三役は堅いはず。初土俵から所要103場所は歴代3位のスロー出世となる)、次は否が応でも優勝が目標になってくるあたりがどう影響するか。「次の目標は?」と聞かれて「11番です。1勝です」と答えていた、その気持ちが何より大事になってくるだろう。
 
一方、大関取りレースのほうでは、この日大栄翔が霧島に敗れて3敗目。豊昇龍と若元春は勝ち、昇進目安とされている「直近3場所33勝」へは、残り4日間で大栄翔と豊昇龍が3勝1敗、若元春は4連勝が必要な計算となった。
 
もちろん、「直近3場所33勝」はあくまで目安であり、32勝以下での昇進もあり得るので決めつけはできないが、今後関脇同士の対戦が3番あり、最低3つの黒星は3人のうち誰かに分配されることになるので、この日を終わった時点で、今場所後の夢の「トリプル同時昇進」は、かなり可能性が薄くなった。まあ、その可能性がこの時点まで残されていただけでも、奇跡的なことと言えるかもしれないが。
 
果たして昇進は2人か、1人か、それともゼロか。たとえ「トリプル同時昇進」はなくても、終盤の「関脇リーグ」の勝者が大関、という展開になれば、それはそれで、「トリプル大関取り」の場所ならではの、こたえられないハイライトになるはずだ。

文=藤本泰祐

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