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2023-07-17

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所9日目の一番】1敗の3人がそろって勝ち越し。豊昇龍は大関へもさらに一歩前進

平戸海にモロ差しを許したが、すぐに掛け投げを仕掛け、相手を浮かせる豊昇龍。このあと体を入れ替えて土俵外に投げ捨て、反応のよさと足腰のしぶとさを見せつけた

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豊昇龍(掛け投げ)平戸海

前日まで1敗で来ていた3力士がいずれも勝って勝ち越し。豊昇龍も力をつけてきた平戸海の挑戦を退けて8勝目を挙げた。
 
豊昇龍と平戸海はこれが2度目の対戦。先場所は13日目に顔が合い、豊昇龍は平戸海に得意の左の上手廻しをつかまれたが、右下手から振ってこれを切り、最後は押し出しと落ち着いてさばいて力の差を見せている。
 
今場所も、相撲自体は平戸海のペースだった。豊昇龍は立ち合いちょっと突いて左の廻しを狙ったが果たせず。平戸海に押し込まれると、左にイナしたが、そのあとうまく右から左と二本入られてしまった。だがここからが豊昇龍の相撲勘と足腰のよさ。平戸海がしっかりした攻めの体勢を作る前に、右から小手に抱えて、右足で平戸海の左足を跳ね上げて体を入れ替えながら掛け投げ。背の低い平戸海は体を浮かされ、土俵外に落ちた。

「考えた通りの(モロ差しの)形にはなれた。すぐに攻めたけど、急ぎすぎた。もっと相手を起こしながらいけばよかった」と平戸海は残念そうだが、一瞬危ないかと思わせながらも、やや強引に見える技を繰り出しながら、足腰のよさで逆転してしまうのが豊昇龍の持ち味。この日の相撲も、ある意味では「豊昇龍らしい勝ち方」といえよう。

「落ち着いて取れたんで、よかったと思います」と豊昇龍。これで大関昇進への目安とされる“直近3場所33勝”まで、残り6日間で4勝。いよいよ目標が目の前に見えてきた。
 
今場所大関取りがかかっている3人の関脇の中では今場所最も多く勝っている豊昇龍だが、先述のように逆転も持ち味だけあって、実は立ち合いから相手を圧倒する相撲は大栄翔や若元春より少ないぐらいで、「おお、強いな」という印象は思ったほど残してはいない。それだけに、大関取りへは相撲内容をうんぬんされるような微妙な星勘定にはしたくないところで、優勝してしまうか、文句なしの12勝以上を挙げるかして、勝ち星で周囲を黙らせてしまうことが求められるような気もする。
 
この日、同じく1敗で来ていた錦木は、御嶽海にモロ差しを許しながらも怪力の寄りで勝利。6日目までほどの立ち合いの圧力がなくなってきたのか、ここ2日間は相手に差される形になっているのがちょっと気になるが、勝ち越しを決めて来場所の新三役の可能性が膨らんできた。まだ関脇、小結陣が全員勝ち越す可能性があるので、次の目標の二ケタへ白星を重ねていきたいところ。北勝富士も王鵬を押し出して5場所ぶりの勝ち越し。今場所は前への圧力が日に日に増し、悪いときによく反省している「無意識のうちに引いてしまう」というケースも減っている。このあとどのあたりから上位戦が組まれるかがカギか。
 
大関取りレースのほうは、この日は大栄翔、若元春も強い内容で2敗をキープ。大栄翔は豊昇龍と同様、“直近3場所33勝”まで、残り4勝と、目標が射程に入ってきた。若元春を含め、大関取りと優勝争いの重圧に打ち勝っていけるのは誰か。直接対決は終盤13日目以降になると思われるが、そこまでそれぞれ落とせない戦いが続く。

文=藤本泰祐

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