BBMカードの編集担当が担当アイテムに込めた熱い思いをお伝えするのがこの連載。今回は巨人のチームパックに秘められた「キャッチボール」のお話。思わず「なるほど!」と膝を打つ仕掛けが披露されています。
今回のジャイアンツカードを制作していたのは、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大がピークを迎えていた4月上旬のこと。緊急事態宣言が発令されたことで、世の中の雰囲気は一変してしまい、当然、プロ野球がいつ開幕できるのかなど、想像もできないようなムードだった。
5月下旬にこのカードが発売される頃には、事態が収束してくれていたら……。そう願いながら、ひっそりと編集作業を続けていた。その支えになったのが、こんな世相だからこそ、せめてカードで野球を楽しんでいただきたいというモチベーションだった。例年以上に精魂を込めて、制作に取り組んだつもりだ。
まずは、レギュラーカード。これは4月に発売された1stバージョンでもそうだったのだが、春のキャンプやオープン戦で撮影した写真に加えて、昨季の迫力あるシーンが数多く使われている。コロナの影響で開幕が延期されている今、野球シーズンの到来を待ち焦がれているファンに、少しでも球春の雰囲気を味わっていただくことができたのではないかと思う。
そのレギュラーカードの表面に、小さな英文が入っているのにお気づきだろうか。これはジャイアンツカードを長年担当しているグラフィックデザイナーの傾向なのだが、たまにこのような英文をデザインで使うことがあるのだ。ジャイアンツカードに英文が入ったのは2012年以来だから、実に8年ぶりに復活したことになる。
今回は、最初にレギュラーカードのデザイン案を提出してもらったときに、すでにダミーの英文が入っていた。どうしても必要なのかと尋ねると、「デザイン上、どうしても入れたいんです。それにこの時勢ですから、何かメッセージ的な要素もあった方がいいかと思ったので」とのこと。それではと、もう忘れかけている英語の知識を総動員して考え出したのが、次の英文だ。
Cheer up GIANTS !!
You are our HEROES.
You always encourage us.
簡単な構文で、意味はいたってシンプルだが、念のため、和訳も載せておく。
がんばれジャイアンツ!!
貴方は僕らのヒーロー。
貴方はいつも僕らを勇気づけてくれる。
一読して分かるように、これはファンから選手へ向けられた視点で考えられた内容で、カードを手にしたファンが、選手に対して抱く感情をイメージしている。皆さんの気持ちを、うまく代弁できているだろうか。
サブセットにもこだわった。例えば、坂本勇人の2000安打をテーマにした3種類のサブセット。プロ初安打(2007年9月6日の中日戦=ナゴヤドーム)、1000安打(14年5月20日の西武戦=西武ドーム)、1500安打(17年7月9日の阪神戦=甲子園)と、それぞれ達成した試合の写真を使っている。
節目の安打がすべてビジター球場というのはちょっと意外だが、裏面にもそれぞれのヒットを打った状況を説明した文章を掲載してあるので、ぜひ読み込んでいただければと思う。
「GENEALOGY OF NUMBER」にもご注目。今季から背番号が新しくなった「13」の戸郷翔征、「26」の髙橋優貴、「24」の大城卓三をピックアップしているが、それぞれの裏面には、巨人軍創設以来、その背番号を背負った歴代選手の一覧も掲載しておいた。
過去の「13」経験者には、戸郷に大きな期待を寄せている宮本和知投手コーチがいるし、「26」は髙橋と同じ左腕で、18年まで在籍していた元エース・内海哲也が背負っていたことで有名だが、実はその祖父の内海五十雄が初代だったのをご存じだろうか。「24」は中畑清、高橋由伸ら絶大な人気を誇ったスラッガーたちを輩出しており、球団の大城にかける期待の大きさがうかがえる。
そして、やはりカードファンの注目は定番インサートの「GIANTS PRIDE」だろう。今年は「THE TOKYO CULTURE.」というテーマが設定されていて、写真は選手と東京の街が合成された、かつてないパターンのものだった。選手たちがまさに“巨人”になったようなインパクトで、球団から提供していただいた写真を初めて見たときは、かなり驚いた。
その「GIANTS PRIDE」では、定番の花火柄パラレルに加えて、今年は久しぶりとなるフォトカードも復活させている。ジャイアンツカードについては、カードコレクターはもちろん、一般のジャイアンツファンにも広くご購入いただいてきたアイテムで、生写真感覚で楽しめるフォトカードがライト層に受けるのではないかという狙いがあった。また、オリジナルの写真に定評のある「GIANTS PRIDE」を、写真の魅力がダイレクトに伝わりやすいフォトカードに展開することで、相乗効果も期待してみたが、いかがだろう。
他にも「THE GIANT STARTERS」「THE TREE KINGS」「THE NEXT GUYS」と3つのインサートがあり、デザインはどれも秀逸。そして、そのすべてのタイトルに「THE」をつけることで統一感を演出してみた。
「GIANTS PRIDE」の「THE TOKYO CULTURE.」にも「THE」がついているが、これはまったくの偶然。先に他の3種のインサートのタイトルを決め、デザインも進めていたところ、その後で巨人軍の担当者から「GIANTS PRIDE」の写真とテーマ説明をいただいた。まず写真を見て驚き、あらためてテーマを読んで、この偶然に思わず膝を打った。
ジャイアンツカードの担当デザイナーには、もう一つデザインの傾向がある。それは、ボックスをデザインするときに、自分に響いたキャッチコピーはより効果的に、目立つように使うということ。
今回のボックスに入れたキャッチコピーは、考え抜いた末、こう決めていた。
すべてのファンに
勇気よ、届け。
最初にボックスのデザイン案が上がってきた時、実はちゅうちょした。キャッチコピーが想像以上に大きく、真ん中に位置していたからだ。目立ちすぎではないかと、デザイナーに意図を尋ねると、こんな言葉が返ってきた。
「これくらいじゃないと、勇気は伝わらないですよ」
なおも半信半疑の私の背中を押してくれたのは、続けて「とてもいいボックスになったと思います」という一言だった。
すでにお気づきの方もいるかと思うが、このキャッチコピーは、選手からファンへの視点で考えられている。先に説明したレギュラーカードの英文とは、逆なのだ。
ボックスは選手からファンへのメッセージで、カードはファンから選手への感謝の気持ち。キャッチボールのような両者の関係性を、ボックスとカードで言葉に託してみた。
5月も終わろうとしている今、日本のどこからも球音は聞こえず、夏の風物詩だった甲子園大会も中止が決定した。それでも、いや、こんなときだからこそ、プロ野球にはファンと選手をつなぎ、多くの人たちを元気づける力があると信じている。
最後に、もう一つだけ。今回のキャッチコピーに入っている「勇気」というキーワード。実は、「カード」のメタファーでもある。このボックスには、BBMからのメッセージも密かに込めたつもりだ。
カードファンの皆さん、勇気は届きましたか?
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