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2023-08-26

【陸上】北口榛花が女子やり投で世界一 世界ユースでかなわなかった”夢”かなえる

日本の女子フィールド種目、初優勝を飾った女子やり投の北口(写真/中野英聡)

8月19日からハンガリー・ブダペストで開催されている世界選手権、大会7日目の25日。女子やり投決勝で北口榛花(JAL)が最終投てきの6投目に66m73をマークし優勝を飾った。女子フィールド種目で初、競技場内で行われる種目としては、2011年に韓国・テグ大会で男子ハンマー投を制した室伏広治(ミズノ)以来の快挙となった。

日本女子フィールド種目、初の快挙

25日に行われた予選は通過記録(63m00)を2投目に突破して3番手で決勝に進出。決勝では一時、4位まで順位を落としたが、最終6投目で逆転の66m73をマークして優勝。日本女子フィールド種目の歴史に新たな1ページを刻んだ。

これまでの世界選手権での日本勢の優勝は7回。マラソンでは1991年東京大会の谷口浩美(旭化成)、93年ドイツ・シュトゥットガルト大会の浅利純子(ダイハツ)、97年ギリシャ・アテネ大会の鈴木博美(積水化学)、競歩では20kmで2019年カタール・ドーハ大会、22年アメリカ・オレゴン大会連覇の山西利和(愛知製鋼)、50kmでドーハ大会を制した鈴木雄介(富士通)。競技場内で行われる種目では11年韓国・テグ大会で男子ハンマー投を制した室伏広治(ミズノ)のみだ。

北口は昨年のオレゴン大会では銅メダルを獲得。“オリンピック、世界選手権を通じて史上初のメダル”の快挙を成し遂げたが、予選1位通過、決勝では最終投てきで63m27をマークして2位につけたものの、逆転を許しての3位だった。「3位に入れてうれしい」としつつも、予選で64m32をマーク、66m00の日本記録(当時)を持っていた北口は、「もっと投げたかった」と記録については満足していない様子だった。

最終6投目での大逆転劇

今季67m04の日本記録をマークし、世界リストリストトップで挑んだ今大会。決勝の1投目に61m73をマークすると、3投目には63m00を投げ、2番手でトップ8に入った。4投目に63m18を投げたA・コシナ(ラトビア)、6投目に63m38を投げたM・リトル(オーストラリア)に抜かれ、最終投てきを前に、北口は4位。オレゴン以上の結果を残すには、63m38以上の投てきが必要となった。トップに立つのは、65m47のF・D・ルイス(コロンビア)。「高校時代から6投目は強い」と自負する北口の6投目、「ハンガリーの人たちは国籍関係なく、絶対に手拍子してくれる」と両腕を大きく動かし、観客へ相図を送った。大きな手拍子が会場全体から鳴り響き、観客の視線がピットに立つ北口に集中するなかフィールドに放たれたやりは、大きな弧を描き65mラインを超えた。大歓声が会場を包み、表示された記録は「66m73」。北口の後に試技が残っていたコシナ、ルイスは共に記録を伸ばすことができず、優勝が決まった。

「前日の昼は寝ようとしても、あおむけで寝たら心臓が跳び出ちゃうんじゃないかってくらい、バクバクしていて。今から緊張していて大丈夫かなって思っていたんですけど、会場に入ったら、(スタンドに)知っている人の顔がたくさんあって、すごくほっとしました」

日本からだけでなく、練習拠点とするチェコからも多くの人が北口の応援に駆けつけていたと言い、「そんななかで金メダルを取れてすごくうれしい」と北口。

この結果を受け、来年のパリ五輪の代表内定した。「オリンピックでは選手の気迫が違います。世界チャンピオンとしての気迫を出して投げられるようにしたいです。2025年の東京の世界選手権では、日本でお世話になった方々の前でまた良い結果を出せたらいいなと思います」

2015年の世界ユースでは優勝を果たしたものの、表彰台で聞くことはかなわなかった国歌。8月26日イブニングセッションの前に行われるメダルセレモニーでは、センターポールに上がる国旗を見ながら、「君が代」を聞くことができる。

ずっと見ていた夢をかなえた北口。新たな歴史をつくる挑戦がまたここから始まる。

文/常盤真葵 写真/中野英聡

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