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2019-02-14

話題をかっさらった「黒」と「白」のこだわりそして、あの写真はこじつけか意味深か

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 連載5回目となる今回は、デザインとフォトに関する熱いトーク!

 普段はなかなか話題に上がらないような内容だが、実はカードは写真とデザインが命! それを知っていればさらにカードを楽しめるわけで、この3人だからこそ語り尽くせるテーマをじっくりと聞いてみよう。

【参加ディーラー】(敬称略)
佐伯 篤(SAトレーディング/写真右)
田村亮一(ミント神田店/写真中)
高橋高弥(ミント立川店/写真左)

☆デザイン部門☆

佐伯 続いて【デザイン部門】。私は写真や見た目より、チーム別に入っていたインサートカード全般のネーミングを推したいと思っているんです。

田村 ネームデザインということですね。

佐伯 毎年ひとつひとつすべて違う名前を付けているんですけど、あれは地味にすごく面倒くさい作業だと思うんですよ。野球やスポーツに関係があり、テーマに合った名前を付けていていますよね。しかも、英語で。すべてのシリーズのすべてのインサートの名前がかぶらないように作るのは、制作サイドとしても注目してほしいところだと思うんです。今回いろいろなインサートを見ていて、絵柄よりも名前の方に興味が引かれました。

田村 いままで継続してやってきていることではあるけれど、あらためてここで評価したいということですね。

佐伯 よくそんなにネタがあるなと。それぞれのチームパックに3つか4つインサートがあって、それを毎年変えていくというね。これは大変ですよ。

田村 デザインが先なのかコンセプトが先なのかというのはケースバイケースでしょうしね。私はいい加減に英語じゃなくてもいいとは思いますよ。

佐伯 これまでにも「九州男児」とか、日本語のタイトルもありました(笑)。

田村 かなり前ですよね(笑)。

佐伯 あまり日本人が使わないような英語で、ちょっと考えないと意味が分からないような名前もあるでしょう。そういうのをサラッと入れてくるのはすごいと思った次第でございます(笑)。

田村 おっしゃることはよく分かりますよ。なかにはやっつけもあるんでしょうけど、タイトルをつけた本人が自画自賛しているのもあるでしょう(笑)。

佐伯 ソフトバンクのチーム別カードに入っていた「UNDISPUTED」は「文句なしの一発」というような意味なんですけど、普通の日本人は使わないですよ。

田村 ところが、カード屋は使うんです。

高橋 WWEのカードに「アンデスピューテッド」がありますよね。

田村 高橋君は何かありました?

高橋 BBMのチーム別カードにクロスサインとして入っていた「PICTURESQUE」ですね。このカードはトップスの「インセプション」に近いんですけど、仕上がりがすごくかっこよくて、これが日本で実現して、お客さんにも評価されたというのはうれしかったです。あとは「Glory」のサインカードもキラキラ感がすごくきれいで、実際に手にした方がもう一箱明けてみようという気を起こすくらいの出来だったと思います。デザインで言うと、この2枚ですかね。でも、この「PICTURESQUE」もふだん日本人が使わない英語ですよね。

田村 「写真映えする」というような意味なんでしょうけど、普通は「フォトジェニック」の方を使いますよね。写真に絵画処理をしていたから、あえて「PICTURESQUE」にしたと想像するんですけど。私もデザイン部門の2位候補が「PICTURESQUE」です。あれは文句なしのデザインで、タイトルもまさにですし、だれが見てもかっこいいと思います。チーム別カードのクロスサインとして新しいものを作ってきたというところも評価したいし、非常によかったです。

 そこで、私の1位なんですけど、2017年のデザイン部門はソフトバンクのチーム別カードが選ばれて、レギュラー、サイン、パッケージが一つの商品としてまとまっていたのがポイントでした。2018年にそれと同じ印象を強く抱いたのが中日のチーム別カードだったんです。

 まずパッケージのデザインがすごくいいセンスですよね。差し色で「2018」という部分に中日のユニフォームなどでは入っていない赤を使っているものも効果的でした。大胆に入った斜めのラインも直筆サインカードのコンセプトと共通していて、非常に一つのアイテムとしての統一感がありました。レギュラー、サブセット、インサートもすごく凝ったデザインでしたよね。特にサインカードは直線しか使っていないシンプルなデザインなんですけど、配色がとてもうまくて、これぞプロのデザイナーの仕事だと強く思いました。

高橋 中日はスペシャルサインもかっこよかったですよね。いわゆる銀サイン、金サインですけど、他のチームと比較しても断トツのかっこよさでした。私の場合、通常サインはそんなに心に響かなかったんですけど。

田村 スぺシャルサインもとてもシックで、ある意味では外れのないデザインでした。BBMの銀、金サインは日本ハムもよかったですし、結構いいチームが多かったです。

佐伯 中日はレギュラーも斜め線を効果的に使っていましたよね。

田村 中日のレギュラーは直線とスプラッシュをモチーフに表現していました。使っている色数は少ないけど、実はすごくうるさいデザインなんです。それを色でシンプルに見せているところも含めて、とてもレベルが高くて、それをパッケージからもうかがい知ることができた。純粋にデザインの話だけをすると、中日のチーム別カード全般、1枚のカードで言うと「PICTURESQUE」。「Glory」のサインカードも非常にデザインはいいんだけど、広島が入っていないので、あまり興味はわきませんでした(笑)。

高橋 いまパッケージの話をされましたけど、パッケージでいうと、「TRUE HEART」のパックが銀色の地に鶴姫が白黒写真の墨一色で印刷されていて……。

田村 ちょっと待って、鶴姫って何?

高橋 志田光選手の魔界バージョンです。

田村 えっと、何?(笑)。

高橋 全然伝わってないですね(笑)。

佐伯 同じ選手だけど、マスクマンみたいにキャラクターが変わるということかな?

高橋 普段は志田光選手なんですけど、魔界というイベントの時だけ鶴姫になるんです。

田村 プロレスの話をしているのか! 武藤敬司とグレートムタみたいな感じ? ちなみに、私はグレートムタだと、ドラゴンの顔をしているのが一番好きですけど(笑)。鶴姫は変身するとマスクマンになるわけ?

高橋 なんないですよ(笑)。それで、「TRUE HEART」はボックスとパックのデザインが違っていて、そのパックが鶴姫だったんです。ふだん新商品が入荷した時、お客さんにはカードのタイトルと商品のコンセプトを伝えるんですけど、「TRUE HEART」だけは、パックがめちゃくちゃかっこいいから、ぜひ見てくださいと力説したくらいです(笑)。

田村 黒一色しか使わない中で、あえてその写真をセレクトしたというのは、制作のこだわりなんでしょうね。野球ファンに分かりやすく例えると、インパクトとしては、広島のボックスを買ってパックを取り出してみたら、赤一色で丸のでかい顔がついていたくらいの感じかな(笑)。

高橋 近いかもしれないです(笑)。このパックを見た時は衝撃を受けました。次の部門にもつながるんですけど、実は鶴姫の直筆サインカードをフォト部門の候補の一つに入れています。BBMも発売した後で、この写真使った鶴姫の色違い特別サインが封入されることをサプライズで発表したんです。

田村 このこだわりを野球カードでも見せてほしいくらいですよね(笑)。それにしても面白い話でしたね。これは知らなかった。

佐伯 では、デザイン部門を決めましょう。実は私はあまり「PICTURESQUE」は印象に残っていないんです。黒いカードだなというくらいで(笑)。

高橋 そうなると、中日ですかね。

田村 もしくは鶴姫か。中日対鶴姫だったらどっちが勝ちます?(笑)。

佐伯 中日でしょうね。2017年のソフトバンクに続き、中日のトータルデザインの評価ということで。1枚のカードなら「「PICTURESQUE」! 女子なら鶴姫!

田村 きれいにまとまりました(笑)。やっぱり3人で話すと、いろいろな意見が出てきて面白いですね。

これぞプロのデザイナーの仕事。それをパッケージからうかがい知れた
(田村)

☆フォト部門☆

佐伯 続いて【フォト部門】です。私からちょっとカープの話をしていいですか(笑)。

田村 もちろんです(笑)。

佐伯 2018年も「1stバージョン」と「2ndバージョン」にシークレット版がありましたけど、レギュラーの写真も含めて、カープだけ非常に印象的な写真を使っていたんですよ。

田村 あっ、かぶった!(笑)。そう、そうでしたよね。

佐伯 2017年のシークレット版は1stが新井貴浩のガッツポーズ、2ndは水をかぶっている鈴木誠也で、とてもよかったんですけど、2018年も菊池と丸のシークレット版はもちろん、大瀬良の1stレギュラーも明らかにいい意味で“やらかしている”カードでした。

田村 その中に、何かを暗示しているような写真が1枚ありました(笑)。

佐伯 さらに、その後に出た3連覇セットにもしっかりと胴上げカードを入れてきて、カープの写真に対する執念みたいなものを感じました。

田村 その流れで、私はまさにこの1枚という写真があって、それが「2ndバージョン」に入った丸のシークレット版。カープファンで埋まったスタンドに敬礼ポーズをしている瞬間を背中越しに撮った写真です。あの敬礼ポーズは、かつて廣瀬純が当時起こった広島の土砂災害で活動した消防士さんたちへの感謝と広島愛を示すために、彼らがやっていた敬礼を真似て始めたものなんですけど、あの丸のスタンドに向けた敬礼ポーズは、私にはお世話になった広島に「さようなら」を言っている写真にしか見えなかったんです。

佐伯 さすがに、それはちょっとこじつけじゃないですか(笑)。

田村 いや、結構な広島ファンはそう思っていたはずです。私はあの写真を見たときに、そういう意図があるんだなと感じました。

佐伯 FA移籍した今となってはそうだけど、さすがに作ったほうも夏の時点でそこまでは考えていないでしょう。

田村 私はもうあの時点から気になってしょうがなかった。うちのカープファンもお客さんも同じことを感じていましたよ。それを意図的にやったのではないかという意味で、心に突き刺さっている1枚です。これが断トツですね。巨人に行ったら絶対にあのポーズはしてほしくないです。あと、ここで私は「トップスナウ」の大谷を挙げているんですけど、まだ大谷のカードがあまりない春先からいろいろなカードをばらまいてくれたという意味で、評価しています。ファンも安価で買うことができました。直筆サインなどのレアカードではなく、写真1枚でカードを求める本来のコレクションの姿があったと思います。

佐伯 確かに大谷の「トップスナウ」は市場をけん引してくれましたけど、大谷の写真がよかったというよりも、「トップスナウ」という企画自体を評価すべきだと思うんです。純粋な1枚の写真で言えば、丸ではないかと。高橋君は、どうですか。

高橋 先ほども挙げた鶴姫のサインカードは、私個人的になりますけど、めちゃくちゃ好きで、2018年に出たカードの中から好きな1枚を選んでいいのなら、このカードというくらいです。

 あとは「エポックワン」で西武の開幕8連勝を記念したカードがあるんですけど、これに使われて外崎修汰選手と秋山翔吾選手で「8」を作っている写真もBBMではなかなか使わないであろう構図だったと思います。

 海外カードも入れていいのであれば、ブライス・ハーパー選手がオールスターのホームランダービーで優勝してガッツポーズをした瞬間の1枚ですね。このときは、ハーパー選手のお父さんが打撃投手をしてくれていたんですけど、お父さんが最後はフラフラになりながら投げている中で、残り1分から9本くらい打って同点に追いついて、延長戦で競り勝つという劇的な展開でした。その同点に追いついた瞬間の1枚だと思います。

田村 あのシーンは感動的でしたよね。ハーパーは昔も一度お父さんにホームランダービーで投げてもらって、その時は大失敗に終わったんですけど、今回はお父さんも猛練習してきて、その結果、優勝できました。

高橋 お父さんも途中で疲れてしまって、一度30秒くらい休憩したんですよね。その後からハーパー選手が打ち出して、逆転したんです。優勝トロフィーをいの一番にお父さんに渡していたのも印象的でした。このエピソードも含めると、これが私の1位ですね。

佐伯 ガッツポーズで言えば、「エポックワン」でカード化されたドラフト抽選で根尾昂を引き当てた与田剛新監督のガッツポーズも面白かったです。

田村 こうして振り返ると、面白い写真はたくさんありますね。

佐伯 さて、何を選びましょうか。

田村 丸の敬礼にしても、ハーパーのガッツポーズにしても由緒正しい野球カードですけど、絵的に私の脳裏に焼き付いているのは上島竜平さんの始球式カードなんですよ。いい写真を使っていましたよねえ(笑)。

高橋 私も候補に考えてきましたけど、言葉にはしなかったです(笑)。でも、面白さが伝わる写真でしたよね。

田村 カードは写真が命ですからね。

高橋 ただ、丸選手の敬礼はその後を象徴するような1枚ですし、2ndのシークレット版が1位でいいんじゃないでしょうか。

カープだけ非常に印象的な写真を使っている、執念みたいなものを感じた
(佐伯)

(つづく)

これまでの回はこちら

〈第1回〉

〈第2回〉

〈第3回〉

〈第4回〉

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