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2023-10-26

【天龍プロジェクト】策士・新井健一郎、龍魂杯へ「矢野攻略法はできている」【週刊プロレス】

第3回龍魂杯へ思いを語った新井健一郎


11月6日より開催される天龍プロジェクト「第三回龍魂杯」エントリー16選手が意気込みを語るインタビューを順次掲載。第1回は、3年連続出場となる新井健一郎が登場。1回戦の相手は前年度覇者・矢野啓太とあり、策士として知られるアラケンにその攻略法を聞いた。
◇   ◇   ◇
――今回取材するにあたって前回、前々回の戦績を見て驚きました。現メンバーの中ではもっとも“天龍歴”の長いアラケン選手がいずれも1回戦負けとは。

新井 いやー、3度目はどうなることやら…。いろんな団体に出ている中で、龍魂杯が近づいてくるとそれを想定して闘っているんです。今日はこのリングだからここに合わせようとかじゃなく、そこの色に染まらずというのはいつもやっていることなんで。でも、今年は1回戦が矢野啓太ということで、夢闘派第2代覇王としてやってきたことがなんなのかを試すには一番いい相手だとは思いますね。ケガして出ないですけど。これで椎葉おうじなんて当てられた日にはねえ、夢闘派の“夢”の字も出せませんからね。

――前年度覇者が1回戦の相手ということに関しては? 

新井 彼を見ていていつも思うのが、入場からしっかり型があるじゃないですか。入場曲がかかって客前に一歩出た瞬間から儀式が始まっている。そういったところから個性を出して自分を崩さない。天龍さんがたまにバックステージでおっしゃる「試合が終わって勝とうが負けようが、お客さんの視界から消える瞬間まで気を抜くな」っていうものを一番わかっていると思います。

――矢野選手とは過去にシングルマッチをやっているんですか。

新井 天龍プロジェクトさんではないかもですけど、VKFさんで3年ぐらい前にやったり、雁之助さんのところ(鬼神道)でもやりました。ただ、矢野さんも数年前からガラリと体絞ってレスリングに必要な筋肉だけを残した感じがして、今の方が怖いですよね。

――ただ、攻略法は頭の中にあると。

新井 なければ新井健一郎じゃないですね。どんな場面でもくぐり抜けてきた…けっこういろんな団体から面倒くさそうなカードを押しつけられてきたんで。それはどんなタイプが相手でも自分を出した上で勝ってきたし、また負けてきたしっていうね。

―――矢野選手より体格が大きかったりパワーがあったりする選手ならば攻略法があるというのもわかるんですが、アラケン選手のように圧倒的な体格差があるわけでもない人が今の時点で攻略法を思いついているというのが興味深いです。

新井 メジャーも含め全団体の全レスラーの試合を見ているわけじゃないですけど、レスリングの手数でいったら矢野さん、図抜けて一番じゃないスかね。逆にそれが楽しみでもあるんですよ。メッチャ怖いですし(自分の)メッキがはがれる時が来るかもしれないし。

――いろいろなタイプの選手とやってきて、矢野選手に似たタイプは誰かいましたか。

新井 いないですね、絶対にいないです。インタビューって、家に帰ったあとこうやって答えればよかったなあとか振り返ったりするものなんでしょうけど、その質問に関しては今日、家に帰って酒飲んでいる時に、巡り巡らせても「いない」って断言できますね。

――ということは、やったことがないタイプでも攻略法が見いだせているわけですよね。

新井 そこは彼の試合を現場で見ていますから。天龍プロジェクトさんでは、自分の試合が終わったらだいたいアリーナに出てきて見るようにしているんで。

――その矢野選手を攻略できたとしても、決勝戦にいくには一日3試合やらなければなりません。

新井 それは51歳の身からするとなかなかだよなあ。でもね、去年もトリプルヘッダーとかやっていますから、逆に燃えますよ。ついつい俺、51だからよお…みたいなことを言っちゃいますけど、そういうのを感じさせない試合しますよ、3つとも。

――決勝戦の相手は誰を予想しますか。

新井 反対側は意識していなかったんですけど今、パッとトーナメント表を見てこの人が出てきたら面白いなと思ったのが1人いますね。SUSHI選手です。会場人気、メチャ高いじゃないですか。僕は90年代のインディープロレスの登場人物になれなかった男なわけですよ。FMWに入って(練習生の時点で)やめたり、W★INGを落ちたりとか。あの時代のプロレスを体感したかったんですけどできなかったのに対して、SUSHI選手って根元をたどれば栗栖(正伸)さんのところを出ているんですよね。

 ――そうです、栗栖ジム出身です。

 新井 僕ら闘龍門以後の世代の人間がやっているいわゆるジャパニーズルチャが幅を利かせていて、今のプロレスのどこを見てもそういう感じじゃないですか。だからこそ、ああいうバリバリ昭和の人に教わったものを出されたらっていうのがありますよね。彼の性格にもよるんでしょうけど、ここでもSUSHIというイジられキャラクターでごまかしてしまうのか、それとも栗栖さん仕込みの試合をやるか。やったら一番お客さんが意外と思うでしょうし、それが見たかったんだ!ってなると思うですよ。

 ――SUSHI選手と決勝戦でやったら確実にアラケン選手がアウェイになりますよ。

 新井 その雰囲気がいいんじゃないんですか。決勝が新井健一郎vsSUSHIって、誰に向けてやってんだっていう話ですよ。でもそれが天龍プロジェクトであり、意外性があって一番面白いと思います。この前もUNタッグに挑戦したのを見ましたけど、爆発できるはずなのに今日も爆発しなかったなーで終わっちゃうんですよね。ここで1回戦負けちゃったら、SUSHIさんはこのポジションのままで終わるんだろうなって思っちゃうんで、先輩ですけど年齢も近いしですごい期待しています。

 ――吉田和正選手もエントリーされています。

新井 大人数のトーナメントだと1人はいるじゃないですか、どう考えても1回戦負けだっていうやつが。

 ――1回戦負けが確実なんですか。

新井 相手が児玉さんだし、確実ですよ。彼が天プロに上がり始めて思うのは、プロレスラーって、フィニッシュがすごい大事だと思うんですよ。俺はこれが決まれば絶対に終わらせることができるんだっていうのが、彼にはあるんですか? 俺は知らないし。デビューして2、3ヵ月の選手じゃないんだから。だから天プロに上がっても負けっ放しだし。彼は次のシングルマッチで僕に負けて、確実に坊主頭にさせられるんで。こういうくすぶっていてプロレスをよくわかっていない子がいるから僕がおいしくいられるんで、龍魂杯のような場では彼にしかできないしょっぱい試合をするのも彼の仕事なんで。まあ、こうやってバカにしながらもなんだかんだで彼に絡んでいるのは、若い時の自分を見ているかのようなんですよ。

――ほう。

新井 戸惑いながらもね…そりゃわかんないですよ、こんだけ海千山千のメンバーに囲まれた中で。闘龍門の頃にマグナムTOKYOとCIMA、この2人を追い抜かそうなんて微塵も思わなったのが、僕のキャリアの最初のつまずきで。そりゃああっという間に後輩に抜かれますよね。だから、なんかいいきっかけになればなあって、超えられるもんなら超えたっていいんですよ。そうなったらこっちもこいつを絡んでよかったなって思えますし。バックステージコメントとか聞いても、ここでもっと腹の底からの言葉を聞かせてくれよっていう時にメッチャあっさりだったりで、そのへんは天龍源一郎をリアルタイムで見ていない世代だからわからないでしょうけど。でも佐藤光留選手とかバックステージコメントでも気抜いていないじゃないですか。彼は引っ込み思案なのか、そういうところもあまりチェックしていないのか。よし、もしも吉田が1回戦に勝ったら、11月6日の新木場の時点で俺が大日本さんの売店に立ちますよ(次回、吉田との一騎打ちでアラケンが敗れたら売店に立ち大日本のチケットを売ることと、吉田負けた場合は坊主になることが決まっている)。

――準決勝で直接対戦する前に、吉田選手が1回戦に勝った時点で売店に立つと。

新井 立ちましょう! 3分間だけ立ちます。

――仮に吉田選手が勝ち進めば、準決勝が二人の“次のシングルマッチ”になるわけですが、ここで吉田選手の髪を賭けることにするんですか。

新井 やっちゃいましょう。これはもう坊主確定。わざわざ坊主になるために準決勝まで勝ち上がってくるなんて、ようやりますよ。まあ、1回戦で消えて坊主にはならずに済むでしょうけどね。よかったなあ、吉田。

――わかりました。アラケン選手は天龍プロジェクトが再始動するにあたり「これで新井健一郎はダメだと思ったらいつでも切ってください。それほどの覚悟でやります」と言っていました。その姿勢で3年間上がり続けてきて、どのような手応えを得られているのでしょうか。

新井 この前の吉田とやった時も古典的なことをやりましたけど、今の時代だと凶器を使ってもブーイング(を発生させるのは)難しいですけど、どこの団体に出た時でもいろんな自分を混ぜたものがあるわけですよ。それこそ、これほどクセ者揃いの天龍プロジェクトの中で僕も必死に生き残るために、いろんな経験値を出して、その場面場面に合った新井健一郎を出して、それで今のところは乗り切れているのかなっていうのは思いますね。本当にほかと一緒じゃ絶対に生き残れない、レギュラーだったはずなのにいなくなった選手を何人も見てきて、これだったらこの選手じゃなくたっていいやって判断されるわけですよね、最後は。だから、そうならないようにこれからも生き残っていかないと。なんにせよ僕が今出ているインディーで取材されてコメントを出させてくれるのは天龍プロジェクトさんぐらいで、あとはほぼほぼ何もとりあげられないところでやっているんで。だからバックステージコメント一つをとっても適当に話さないっていうのは当たり前。プロレスと関わることができている、プロレスで今日も生きていられるんだっていうのを、天龍プロジェクトの控室を見渡しても、俺このメンバーの中で生き残ってんのかっていうのはひしひしと感じますよね。俺もまだまだいけんじゃねえの?っていうのもあるけども、でもやっぱり今日の試合でしょっぱいことをしたら、いくら天龍プロジェクトさんとはいえ、俺もいつ切られるかわからないなってどっちも思いながらやっていますね。

 
――周りを見渡して手応えをつかむと。

 
新井 ほかのインディー団体もごった煮であって、完全にそこの団体所属で回しているわけではない中でそうそうたるメンバーだと思いますよね、ここは。しょっぱいところでちゃんとしたプロレスをキッチリやらなきゃならないのも大変ですけど、こっちはこっちでこの中で生き残るのは大変なんですよ。(聞き手・鈴木健.txt)

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