close

2023-10-27

【天龍プロジェクト】2冠王・進祐哉、第3回龍魂杯へ「狙われる立場の“ヒリヒリ”を楽しむ」【週刊プロレス】

2冠王として「龍魂杯」に臨む進祐哉

現在、インターナショナルジュニアヘビー級&インターナショナルジュニアタッグと2冠を保持する進祐哉。再始動後の天龍プロジェクトから一時期NOAHへと活動の場を移すも、負傷による長期欠場から復帰するタイミングで龍のリングに戻ってきた。最近の好調ぶりの裏にあった、欠場中の葛藤を告白した上で「第3回龍魂杯」(11・6新木場で開幕)初出場初制覇を目指す。
◇   ◇   ◇
――IJ2冠王として龍魂杯初出場。この上ない形で臨むことができますね。

進 過去2回の龍魂杯は(優勝に)縁がなかったのと、このトーナメントはヘビー級も出るので意識はしていなかったんすけど、やっぱり2冠になった時、自分の中で変わりましたね。トーナメント初出場のタイミングで2冠、いい形になっているとは思います。シングルとタッグの両方を持っていなかったら、気持ちの入り方も違っていたかもしれない。確実にモチベーションが上がっているんで。

――好調の原動力は?

進 長期欠場をしたことがなかった中で、去年(9月から頸椎捻挫により)休んでいた時は、生きている上でプロレスの位置づけがゼロに近くなったんです。復帰した時、これまで以上に…なんだろう、なんだろう…なんと表現したらいいかわからないですけど、これまで以上に考えるようになったし、好きっていう気持ちが復活できた。そのアップダウンの差が激しかったんで、今の自分の中でプロレスに対する思いがすごく満ち溢れていますね。

――長期欠場となるとメンタル的に下がるのは誰しもあることと思われますが、そこまで大変だったんですね。

進 沈み具合的にはプロレスを辞めようかと思うぐらいになっていましたね。長く休んじゃったから、もうダメかもって。いろんなことを含めメンタルをやられて…。

――どうやって、そこから気持ちを立て直した?

進 なんでしょうねえ…でも一回、姿を消した状態の中でも連絡をくれる人がたくさんいて、支えられていた部分はすごくあります。それに応えたいと思ったし、プロレスしかやってこなかったんで自分はそれしかないんだなって改めて強く思えたのも大きかった。そういうことによって、約20年やってきたことがこんなことで終わるかよ!って考えるようになっていきました。

――けっこう跳ね返りが大きかったんですね。

進 その跳ね返りがあった分、火がつきましたね。なかなかここまでのことって、人生において経験できないよなって。

――負傷箇所についての不安はまだ残っていますか?

進 悪いところはやっぱり悪いんで仕方がないんですけど、だいぶ…いや、良くはないな。それでもやれているし、良くないことがわかった上で続けたいと思えたということです。続けなかったら、今のこの状態(2冠)はないんですから。ケガをしたことが悔しいっていう思いだったのが、その感情がなくなった時期もありましたから。休んでいる間は(情報を)頭に入れたくなくてSNSもまったく見ないようにしていたんです。そのあと気持ち的にちょっと見られるようになって、いろいろな選手が活躍していたり誰々がこういうことをやっているんだって(いう情報が)入ってきたりした時に、全然悔しさがなかったです。これじゃもうダメだなと思っていたんですけど、それでも復帰してから悔しいって思うことが何回もあった。それはもう自然と出てきたものだったので、やっと通常に戻った感覚になれたんです。そういう精神がないと、プロレスはやっていけないですよね。

――そうした葛藤は復帰後、天龍プロジェクトに戻ってきてからの闘いぶりを見た限りではわからない部分でした。あとは復帰のタイミングで、プロレスリングFREEDOMSのリングで政岡純選手とF-SWAGを結成したのも大きかったと思われます。

進 そうですね。彼が一番そばにいてくれた人物で、何年か前にシングルマッチをやって、そのあと縁あってつながった時にやろうかってなって。一緒にやることによってすごく刺激を受けています。

――そうした刺激を受けつつ、1年3ヵ月に渡りIJシングルを保持し続けてきた佐藤光留選手からベルトを奪取するという形になって表れました。

進 あの試合だけでなく、組まれた試合を貪欲に一生懸命やることを心がけている中でシングルマッチが組まれて、勝てはしなかったけれどドローだったと(4・19新木場1stRING=20分時間切れ引き分け)。自分の中では、あそこでいろいろつかめたものがあった。あのあたりから意識を変えられたんだなと、いま振り返って思います。

――チャンピオンとのノンタイトルで勝負がつかなかったのですから、あそこで「次はタイトルを懸けてやれ!」とアピールすればすぐに挑戦できたはずですが、そのあと矢野啓太選手とのシングル3連戦に流れていきました。

進 確かに、俺には挑戦する権利があるだろと言う人もいるでしょうけど、あれだけじゃ挑戦する要素にはならないと思ったんです。たかだかドローであって、勝ったわけではなかった。だから頭の片隅には入れていましたけど、すぐには(挑戦を)言えないなっていうのがありました。

――機を逸するかも、という焦りは抱かなかった?

進 そこから実績をあげれば、おのずと挑戦できるだろうと思っていました。結果的に(矢野と)シングル3連戦をやることで、違った形で実績になりましたし。同じ相手とシングルを3度も続けたこと自体、自分はなかったので特別な流れでしたね。

――あれも1勝1敗1分ときて、さあ決着の4戦目だと思われる中で、矢野選手とタッグを組む選択をしました。みんな、驚きました。

進 その選択も含めて、結果的にうまくいった。いろいろ嚙み合って現在、ここにいるわけで。そういう過程だったからこそ、当初は頭になかった「龍魂杯」にも火がついて、今からメチャクチャ楽しみですよ。そんな自分から見て、一番勢いあると思うのが田村男児選手なんです。

――1回戦で当たります。

進 勢いのあるやつって、キャリアとか関係なく強いんですよ。田村選手の場合、勢いだけじゃなく実績もあげているじゃないですか(現UNタッグ王者)。もしかしたら一番ヤバい相手だと見ています。

――そういうタイプと1回戦で当たるのは…。

進 一発目にやりたいとは思わないですよね。ただ、ベルトを持つ立場になったら全員から狙われるのは当然であって。それはタッグパートナーも同じ。

――2回戦でIJタッグのパートナー・矢野選手と対戦する可能性があります。お預けにしてある4度目の一騎打ちが「龍魂杯」で実現するかもしれません。

進 ですね。トーナメント表を見渡すと、誰と誰が勝ち上がってきても(関係性を)描けるものになっているので面白いですよね。ただ、スタンス的には絶対(矢野に)上がってきてほしいというのはないです。(新井健一郎と)どっちが上がってきても面白くなると思うし、トーナメントは個の闘いなので。

――万人に狙われる立場はお好きですか。

進 意識しないようにしています。したらプレッシャーになるから、ハハハ。

――反対ブロックは誰が勝ち上がってくると思いますか?

進 羆嵐選手がヤバいんじゃないですか。ヘビー級だし、ここ最近見ていて一番エネルギーに満ち溢れているって思います。

――羆嵐選手が勝ち上がってきたら、ジュニアヘビー級王者としてスーパーヘビー級と対戦しなければなりません。

進 正直に言っちゃうと、ヘビー級と闘うのはやっぱり嫌なものですよ。そこは圧倒的に体格も違いますから。でもやる時はやらなきゃいけないんで。対処法はもちろんあります。小さくても勝てる技はいくらでもありますから。

――2冠王として優勝を宿命づけられている自分の立場を客観的にどう見ますか。

進 そのヒリヒリを楽しめればいいんじゃないですか。僕はそのつもりでいます。ベルトを持ってはいますけど、ここは「龍魂杯」というタイトルマッチとは違う場であって、要はこの中で一番勢いのいいやつが勝つっていうだけですよ。

――進選手は拳剛選手とともに再始動前から天龍プロジェクトへ上がっています。それによる他の選手とは違う意識を持っていますか。

進 そこに関しては、今のリングでやっていることは新章だと思っています。あの頃の形は一度終わっているわけだし、今は新たなメンバーになっているから横一線と受け止めています。僕自身も、長期欠場を経験して、そこからメンタルを持ち直してきた分、あの頃とは違いますからね。(聞き手・鈴木健.txt)
「第3回龍魂杯」トーナメント表

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事