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2023-11-22

面倒臭い“いぶし銀レスラー”翔太が頂点に立つ夢【週刊プロレス】

イサミ(左)に挑戦する翔太

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いわゆる“いぶし銀”と呼ばれるプロレスラーは多数いるが、そうした選手が団体の主流となる例はまだまだ少ない。ガンバレ☆プロレスの翔太もいわば“いぶし銀系”のレスラーで、11・23高島平で同団体の最高峰タイトルであるスピリット・オブ・ガンバレ(SOG)世界無差別級王座に挑戦する。と、同時に技巧派選手が“主役”となれるのかどうか、その闘いにも挑む。

 現在のSOG世界無差別王者はBASARA・木髙イサミ。イサミはインディーマットを中心に多数の団体で頂点に立ってきた選手で、今年のガンプロ7・9大田区で渡瀬瑞基を下し同王座を獲得した。じつは翔太とは、それ以前にガンプロで初のシングルを闘っている。4・22王子で、デビュー15周年記念試合の相手に翔太が指名したのがイサミだった。

 翔太は2022年末の後楽園ホール大会でアメリカ遠征から凱旋。しかし、異国の地で目ぼしい飛躍はできず、挫折に近い「壁を打ち破れず天井を感じた」との感想を抱きながらの帰国となった。ただ、野心は消えていない。アメリカでの成功を目指しているのは変わらず、今年は日本での立ち位置を上昇させるべく動いてきた。そこで、インディー界で名のあるイサミを“実績を積んだ人でまだシングルで対戦していない人”“フォロワー数1万人以上”の観点から記念試合の相手に選んだのだ。結果、翔太はヘッドロックで敗れた。

「イサミさんはデスマッチもできるし、いわゆるクラシックなそぎ落とした試合など全部できる。そのなか、あの日は僕が15年を表現するために引き算しまくったプロレスに引き込んだんですけど、イサミさんもそこに乗っかってきて決着がついた。僕も終盤ヘッドロックで取りに行って、お互いヘッドロックにこだわっての最後」

 そう振り返った翔太だが、今回の王座挑戦は「タイトルを取らなきゃいけない。そういう部分で、そぎ落とした試合じゃなく“足し算”になっていく」と意識を変えて臨む。イサミはSOG世界無差別の防衛ロードで、それぞれ意外なフィニッシュでV3を飾っている。とくに9・2王子の冨永真一郎戦は、勇脚・斬(走り込んでの顔面ソバット)でほぼ勝負は決した状態ながら、あえてその後に“デコピン”してからフォール。3カウントが入り記録上のフィニッシュは“デコピン”になったのだ。解釈は見る者に任せたイサミ。おふざけと取るか、理に適った遊び心あふれるフィニッシュと取るか。賛否両論あるだろうが、そこにプロレスの面白さが見えるのは間違いない。翔太は、こう語った。

「イサミさんは引き出しが多いけど、意外なフィニッシュでV3。(ガンプロでは)僕のシングルも含めると試合を決めていく技が全部違っている。勝てる技が多いのは理想的なレスラーと思ったりもするけど、やる側としてはひじょうに嫌ですね。(決め技は)いくつかに絞れるとは思うけど、絞ったなかでもほかのレスラーに比べて技数が多い。それを返せるだけの引き出しが自分にある自信もあるけど、それで(イサミは)実績を残してきているというのが、一瞬、僕の自信を霞ませる感じがします。デコピン? デコピンだろうがああいうふうに勝てるレスラーは“いいな”とは思います。あの試合はとくにやられたと思った。一番悔しかったかもしれない。イサミさんがガンプロでやってきたシングルはいくつかあるけど、冨永戦がやられたなと。試合結果もそうだし、最後の勝ち方も木髙イサミという風呂敷を広げられた気がして、一本取られたような感じがして、俺が行きたいと思わせた試合でした」

 冨永戦後はいの一番に今成夢人が挑戦表明し、10・1新宿で挑むも敗北。試合後、名乗りを上げたのが翔太だった。

「木髙イサミのど真ん中のプロレスってあると思うんですよ。そのど真ん中の木髙イサミとの試合に、今回なるんじゃないかなという気はしています。僕も“翔太の正攻法”で行こうと思っている。攻め手の数が多い人のほうが、僕はそれを利用する手数も多い。切り口かなと思います」

 ここでベルトを奪取すれば、ガンプロ年内のビッグマッチとなる12・27後楽園でメインイベントを張る可能性が高まる。

「後楽園ホールで最後に入場してくる一人になるのは、なかなか全レスラーが経験できることではないと思うんですよ。とくに小さな団体からデビューして、流れ流れて、いまここにいる僕みたいなタイプのレスラーが、後楽園でトリに入場してくるのはなかなかない。そこが視野に入っているのはモチベーションの一つ」

 たしかにバイプレーヤーになりがちな“いぶし銀系レスラー”が主役となれるのは、無差別級王座ならでは。DDTでは高尾蒼馬とのコンビ“ロマンスドーン”でKO―Dタッグを巻き、ここでガンプロの最高峰王座も奪取となれば、またレスラーとしてのステータスは上がる。DDT12・2新宿では彰人&杉浦透とのタッグ防衛戦も控え、シングルベルト奪取、タッグ王座防衛…そこからの青写真もある。すでに新宿後に渡米が決まっており、大きな“勲章”を持っての遠征にできればアメリカで前回以上のインパクトを与えることにも近づくし、年末の後楽園前に帰国予定だが、一気に翔太がガンプロやDDT、さらにはイサミから奪取となればBASARAも加え、3団体で中心に立つ芽も出てくるのだ。

「KO-DタッグとSOG世界無差別、2本のベルトを持って2024年を迎えることができれば。ガンバレ☆プロレスはもう大家健一色の団体ではないし、そのなかでも僕がチャンピオンとして新年を迎えると、いままでの歴史のなかで一番景色が変わる。ガンプロだけじゃなくいろいろな団体に出てかかわってきた人もいるので、どんな挑戦者とやることができるか、そこも可能性が広がると思います」

 最後に翔太はイサミに対し、こう言った。

「いままで防衛してきた3人より、僕が一番レスラーとして面倒臭いと思う。攻略されづらい自信はあります。イサミさんは今成さんの言葉を借りれば主人公。僕はなかなか主人公になり切れなかったけど、主人公を倒して覆して、SOGという漫画の主人公になってやりたい。イサミさんが面倒臭いのも知っているけど、僕は面倒臭いので覚悟してください」

 面倒臭い“いぶし銀レスラー”が頂点に立つ夢。翔太は小さな体に宿る大きな頭脳で、トップを狙う。

<週刊プロレス・奈良知之>

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