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2023-11-22

【相撲編集部が選ぶ九州場所11日目の一番】琴ノ若、貴景勝戦もクリアして2敗守る。いよいよあす霧島との決戦へ

左の上手出し投げで後ろを向かせて貴景勝を送り出し、2敗をキープした琴ノ若。いよいよあすは霧島との対決だ

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琴ノ若(送り出し)貴景勝

2人目の大関も、危なげなく破った。
 
初優勝、そして大関に向け、琴ノ若がまた一歩前進した。この日は今場所の出場力士では番付最上位の東大関貴景勝との対戦だったが、この埼玉栄高の先輩を、最後は後ろを向かせて送り出した。
 
過去の対戦成績は琴ノ若の3勝6敗。ただ、この一年は2勝2敗と、力は接近しつつあった。過去には激しい張り手で攻められたこともあったが、もう、そういう粗い攻め手を許す力関係ではなくっているはずだ。
 
この一年の対戦を振り返れば、貴景勝が勝ったのは、立ち合いの勢いを生かして一気に攻めたときのみ。琴ノ若にとっては、むしろ、“立ち合いの勢いさえ止めてしまえば勝てる”という相手とも言えた。
 
そして実際の取組も、そのとおりになった。

琴ノ若は差しにいく立ち合いだったが、手先でいくのではなく、体ごとぶつけるような感じで、貴景勝と互角の当たりに持ち込んだ。貴景勝に下からおっつけられ、差すことはできなかったが、これで相手の立ち合いからの勢いはストップさせた。この時点で、勝利への道は見えたと言ってよかった。
 
そのあとの判断もよかった。貴景勝におっつけられ、差せないとみるや、差し手にこだわらず、左を抜いてその方向に回りながらイナし、左の上手に手を掛けた。
 
廻しを取ってしまえばまず安心。落ちついて出し投げを打って後ろに回り、そのまま送り出した。

「(イメージは)当たり負けしない。それだけです。しっかり当たって、そのあとも落ち着いて取れたかな。(イナした場面は)体が反応しました」と琴ノ若。まさにその言葉が勝因を表していた。
 
10日目まで4人いた2敗力士は、一山本がさすがに大栄翔には通じず3敗に後退。霧島、熱海富士は勝って、琴ノ若含め2敗は3人に。3敗で豊昇龍、翠富士、竜電、一山本が続く形となった。
 
そしてあす12日目、いよいよ琴ノ若にとって大関最後のトリデである霧島戦が組まれた。もしかしたら千秋楽に優勝決定戦があるかもしれないが、本割としてはこの一番が今場所のメーンイベントになる可能性は高い。2敗同士の相星決戦となったが、もしここで霧島を倒すようなら、琴ノ若にとって優勝、さらには大関への道が一気に開ける、とてつもなく大きな1勝となる。
 
過去の対戦成績は琴ノ若の2勝7敗、この一年でも1勝5敗なので、有利とは言い難いが、内容を見れば一方的に負けているわけではないので、その数字からくる印象ほど不利とは言えないだろう。4割から4割5分ぐらいは勝利の目があるとみる。
 
琴ノ若にとってのポイントは、だいたい対豊昇龍戦と同じだが、低さと動きという相手のアドバンテージを封じられるか。まずは相手の上体を起こして同じ高さでの戦いに持ち込み、その上でモロ差しまたはがっぷりになって動きを封じることが勝利への道だ。
 
優勝争いについては、「一つひとつの積み重ねかな。そのあとの結果でいいかな。土俵に上がったら、勝つか負けるかの世界。よけいなことは考えず」と琴ノ若。
 
過去、わずかな星の差で追うことはあっても、終盤までトップに立っての優勝争いは初体験。ただそれでも、琴ノ若は概して場所終盤には強く、目の前に星勘定がチラつきそうな状況にあっても、そこに振り回されずに取れるタイプのような感じもある。チラつく目標が大きなものになったときも、これまで同様にいけるか。

「体は動いてくれている。そこを信じて最後までやれれば」
 
あす勝てば、「優勝」と「大関」という、2つの夢が、すぐ目の前までやってくる。

文=藤本泰祐

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