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2023-11-21

【相撲編集部が選ぶ九州場所10日目の一番】一山本が敗れて単独トップの座を失う。2敗に霧島、琴ノ若ら4人

一山本は好調な平戸海に寄り切られて2敗目。だんだんと、今場所は三役勢同士の優勝争いになりそうな感じが漂ってきた

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平戸海(寄り切り)一山本

連日、しっかりと伸ばせていた両腕を、この日の立ち合い直後は伸ばすことができなかった。
 
きのうまで8勝1敗と、幕内の優勝争いの単独トップに立っていた一山本が敗れ、2敗に後退した。
 
この日は4日目から6連勝と、地元九州(長崎県平戸市出身)の大声援を背に調子を上げてきた平戸海との対戦。食いつかれたくない一山本は、この日は頭と手で当たる形から突き放しに出た。平戸海得意の左上手は阻止。しかし反対側の左手の突きが、平戸海の右でうまくあてがわれてしまった。相手との距離を取って戦いたい一山本はここから引きを見せるが、好調な平戸海はそこを逃さない。ついてきて右を差すと、そのまま体を寄せて黒房下に寄り切った。

「立ち合いがよくなかった。もっと押し込まないと」と一山本。これで2敗となり、単独トップの座を失った。「(硬さは)若干。優勝は意識してませんと言っている時点で意識してますね」と、場所も後半に入って、さすがに少し精神状態も変わってきていたか。それでも、左ヒザのケガもあって7月場所に十両落ちしたのをきっかけにトレーニング法を見つめ直して復活、ここまで優勝争いを引っ張ってきた功績は少なくない。11日目には関脇大栄翔戦が組まれるなど、今後は経験のない対上位戦が続く可能性もあり、このあとも優勝争いに残っていくのはなかなか難しいだろうが、チャレンジャー精神で最後まで走り切ってほしいもの。

「(平戸海戦は)アウエー感がすごかった。サッカー選手はこういう気持ちなのかと思った」

と、持ち前の明るさは失っておらず、初の三賞獲得へも期待かがかかる。
 
一山本が敗れた後、きのうまで2敗の4力士は、まず美ノ海が御嶽海に完敗して3敗に後退。熱海富士は湘南乃海を相手に、途中からは左上手にこだわらずに左をハズで使うといううまい攻めを見せて2敗をキープした。琴ノ若は豪ノ山の当たりを受け止めて左上手をつかむと上手投げで相手を転がし、霧島は錦木に後ろを向かせて一蹴、ともに2敗を守った。
 
これで霧島、琴ノ若、熱海富士、一山本の4人が2敗に並ぶ形に。きのうも書いたとおり、優勝争いの形は、どうやら徐々に霧島vs.琴ノ若の対決に集約されていく感じになってきた(熱海富士は、今場所内容もよく、体も見劣りしないので、今後上位と当てられてもある程度食っていける可能性はあるが、対上位戦勝ち越しまではどうか……、というところか)。
 
これもきのう書いたとおり、霧島と琴ノ若の比較では、霧島には直接対決に強いこと、琴ノ若にはすでに豊昇龍戦、大栄翔戦を終えているというアドバンテージがあり、順当に行けば12日目か13日目に組まれるであろう直接対決を、どういう星勘定で迎えるかがカギだ。
 
まずあす11日目は、琴ノ若がいつも激しい相撲になる貴景勝戦、霧島は先場所敗れている若元春との対戦が待つ。果たして優勝争いは、霧島と琴ノ若の一騎打ちへと向かっていくのか、あるいは再度、貴景勝や豊昇龍を加えた混戦に持ち込まれるのか。
 
いずれにしても、久しぶりに三役陣による優勝争いとなりそうな今場所。あすからの終盤戦では、幕内の終わり何番かはまったく目が離せない、という大相撲の醍醐味を、最後まで味わわせてほしいものだ。

文=藤本泰祐

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