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2023-11-28

東京女子12・1後楽園で上福ゆきのクイーン・オブ・アジア王座に挑戦、ベトナムがルーツのVIVA VANとは!?【週刊プロレス】

 東京女子プロレスの11・26名古屋に初参戦し、12・1後楽園にも参戦予定の“ヘルベント・ヴィクセン”VIVA VAN(ヴィヴァ・ヴァン)は、プロレス史上初のベトナム系アメリカ人女子プロレスラーである。

 ロサンゼルス生まれでシングルマザーに育てられた彼女は幼少時代、厳しい生活をしいられた。そんななか、離れて暮らす父親から届けられたプレゼントが、彼女の人生に大きな影響を与えることとなる。6歳のときにもらったゲームでプロレスを知り、8歳のときに学校の友人からプロレスは生身の人間がリングで闘うものだと教えられた。「テレビでやってるから見てみなよ」と勧められ、WWEスマックダウンを知った。テレビの画面を通して見たリアルなプロレスで、スケールの大きな入場シーンに目を奪われた。ゲームを通じてファンになったジ・アンダーテイカーやショーン・マイケルズが実在の人物と知り、興味が拡大。やがて自分もプロレスラーになりたいと思うようになったのだ。

 しかし、レスリングスクールに通うお金がない。が、カレッジ時代のある金曜日、通える場所にあるスクールで翌週月曜に新しいクラスがスタートするとの情報を得た。ところがその日、彼女は交通事故に遭ってしまう。後方から車をぶつけられたのだ。しかしながら大きな事故ではなく、ぶつけた運転手はその場で示談を申し出た。「この金でキミの車を修理してくれないか」と。「そのお金がレスリングスクールに通うのに十分な金額だったの。おかげで月曜のクラスに間に合ったのよ」と彼女。不幸中の幸いか、その瞬間、プロレスラーへの道が開けたのである。

 そのスクールとは、ノックスプロアカデミー。WWEのスーパースターで日本でも知られるリキシの運営する道場だった。デビューは18年9月。以後、カリフォルニア州を中心にさまざまな団体で試合をした。メキシコ、カナダのリングにも上がり、あるときにはベルトが6本。6冠王者になっていたのである。

 同時に保持していたのは、PCW(パシフィックコーストレスリング)ウルトラ女子王座、BTW(ビッグタイムレスリング)女子王座、AWF(アリゾナレスリングフェデレーション)女子王座、FSW(フューチャースターズ・オブ・レスリング)女子王座、NTLL(ニュートラディションルチャリブレ)女子王座、トマホークレスリング女子王座だ。

 現在はPCWウルトラ女子、BTW女子、FSW女子の3冠王。2度目の戴冠で第6代王者のPCWは現在7度の防衛に成功中で、レイチェル・エラリング、坂井澄江、マーシャ・スラモビッチ、ニコル・マシューズらを退けている。クリスチーナ・フォン・エリーから奪取の第7代BTWでは、ステフ・デ・ランダ―、シュー・ヤンらを破り4度防衛中、そして空位から奪取し第6代王者となったFSWは、ビリー・スタークスらの挑戦を退け12度の防衛を継続中だ。

 そしてついに、かねてからのあこがれだったという日本での試合が実現。デビューを目指していた頃に日本の女子プロレスを知り、豊田真奈美の動きに衝撃を受けた。以来、日本で試合をすることが目標となった。ベトナムにルーツを持つ彼女が北米を飛び出しアジアで試合をするのは今回が初めて。来日初戦が11・26名古屋で、上福ゆきと組んで中島翔子&鳥喰かや組と対戦した。試合はVIVA VANがヘレベーター(ひまわりボム)で勝利し、あえてパートナーの上福に宣戦布告。非常に珍しいケースだが、これには大きな理由がある。上福がシンガポールでSPW(シンガポールプロレスリング)クイーン・オブ・アジア王座を獲得、“アジア”の名称が彼女の闘争心に火を点けたというわけである。

「カミフクと組んでみて、彼女からスター性やスターのオーラが感じられたの。リスペクトできる選手だと思ったし、アジアのベルトを巻いているというじゃない。だったらそのタイトルがほしいなと思って。確かにジャパンはひとつのゴールではあるけれど、それだけじゃない。今回は私にとってアジアツアーのスタート。今後アジア全土をツアーするためにも、ベルトコレクターの私にアジアのベルトが必要だと思ったのよ」

 そして、12・1後楽園における上福vsVIVA VANのタイトルマッチが正式決定。後楽園大会後には。VIVA VANはルーツであるベトナムに飛ぶという。12月2日、ベトナムのプロレス団体VPW(ベトナムプロレスリング)で試合をするためだ。幼少の頃に訪れたことはあるというがレスラーとしては初めて。つまり、彼女にとって初の凱旋試合ということになる。だからこそ、アジアの名称を持つベルトとともに祖国のリングに上がりたい。しかもそのリングは、彼女が資金提供をしてできたというではないか。「マットから始まったベトナムのプロレス団体を大きくしたい」。そんな思いを持ってVIVA VANは第5代王者・上福の王座に挑むのである。

 上福が奪取したクイーン・オブ・アジア王座に日本人が就くのは里歩につづき2人目。11月24日に“ライオンシティヒットガール”アレクシス・リーからベルトを奪った上福は今年2月にもこの王座に挑んでおり。5月には赤井沙希もチャレンジした。DDT11・12両国で10年間の活動にピリオドを打ちプロレスを引退した赤井。そのプロレススタイルを継承する存在と期待される上福だけに、赤井も挑んだベルトは防衛したい。

 挑戦を表明されたとき、上福は「(VIVA VANは)かわいいからまあいいよ。ブスなら断ってた」とのコメントとともに受諾。この発言に苦笑いのVIVA VANだが彼女にもモデル経験があり、さまざまな点でこの闘いには意味がある。

 はたしてVIVA VANが初めての日本でアジアのベルトを奪い、初の凱旋を自身提供のリングでお披露目できるのか。あるいは、“そんな事情は知ったこっちゃない”であろう上福が、東京女子でこの王座の価値を上げていくのか。アメリカ、日本、シンガポール、ベトナムをつなぐ2人の闘いに注目だ。

(新井 宏)

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