close

2023-12-01

団体最高峰タイトルマッチの中止…不測の事態が生んだFUMAvs木髙イサミ。“インディー団体”BASARAは後楽園ビッグマッチで勝負する【週刊プロレス】

タイトルマッチ中止が生んだFUMAvsイサミ

全ての画像を見る
木髙イサミが率いるプロレス団体・BASARAが不測の事態に見舞われたのは、10月のことだった。

 10・24新木場でFUMAの持つユニオンMAX王座に挑戦する予定だった下村大樹が、プライベートにおいて不適切な行為があったとして、1年間の活動休止処分と発表されたのが10月20日。4日後のタイトルマッチは中止となり、代わりにFUMAとシングルマッチを務めたのが団体代表でもあるイサミだった。結果は両者KOで引き分け。試合後、王者のFUMAが指名する形で、12・3後楽園におけるイサミの同王座挑戦が決まった。

 団体の信頼にかかわる王座戦中止を受け、イサミは自らFUMA戦に出陣した。じつは藤田ミノルも「タイトルマッチが流れたけど、ワタシ行きましょうか」と名乗り出てくれたが、“責任”を取るのは自らとの思いが強かった。「僕が出ていって全員が全員納得することではないと思いますけど…」と自重しつつも、“やるしかない”の気持ちが大きかったのだ。

「メインでユニオンMAXが組まれていたことへの期待値もあるなか、切符を買ってくれている人たちが何で納得いくだろうと。僕が行かなきゃなと思いましたよね。(下村と)同じユニット(戦闘民族)として、あまり言いたくないですけど団体の代表として、いかなきゃなという感はありました。ただBASARA内での実績が僕はそんなにシングルではなかったので、タイトルマッチというのはさすがにおかしいだろう…と社内でなり、普通のシングルマッチでFUMAとやることになったんです」

 プロレス界の流れは速い。インディーマットを中心にトップに上り詰めたイサミも42歳。まだまだ引くつもりはないが、現王者のFUMAはシンプルに“強さ”の部分で秀でたチャンピオンらしいチャンピオン。イサミとて、そう簡単に勝てる相手ではなくなった。じっさい、その時の一騎打ちを振り返り「メチャクチャ強かったですね。一昔前にやった時とは別人。同じキックでも、全然違う。気持ちが入っているという言い方で正しいのかわからないけど、乗っていますよね」と語る。

 その後、12・3後楽園に向け2度FUMAと激突したイサミ。11・7新木場の6人タッグマッチではイサミが回転足折り固めで3カウントを奪ったが、11・23高島平のタッグ戦では新納刃のアシストからFUMAがイサミを押さえ込んだ。“1勝1敗”でタイトルマッチを迎えることになる。

「いい意味でも悪い意味でも、自分の本筋を隠しているみたいなところがあって。直接お互い取り合ってはいるけど、僕は丸め込みで取って、FUMAは(新納刃の)ランヒェイから押さえ込むという取り方。お互い前哨戦ではタッグというのを意識して試合したのかな、という気がしますね。“これはシングルマッチじゃない”という。ある意味では、お互い勝ちに徹している。シングルになっても、お互い勝負に徹するんだろうなと思います」

 BASARAはかつてはサイバーエージェント傘下のDDTグループのブランド団体の一つだったが、イサミは完全に独立。昔ながらのインディペンデント団体としてコロナ禍を生き抜き、最近では団体の特色だった新木場でのお酒飲み放題興行“宴”も復活した。大手企業というバックを持たぬ独立団体にとって、後楽園ホールは“ビッグマッチ”である。

 じっさい12・3後楽園は他団体のエース格と呼べるザ・グレート・サスケ、アブドーラ・小林、宮本裕向、橋本大地、神谷英慶、樋口和貞らが出場。FUMAvsイサミのユニオンMAX戦のみが純粋なBASARA選手同士の試合となり、ほかは一様に他団体勢が絡むカード編成となった。

「(他団体の選手を)見に来たお客さんにも、BASARAの選手のファンにも、メインイベントで“本質”を見せなきゃいけないと思っています。“これがBASARAだ”というものを。彼となら、見せられる自信はありますね」

 イサミは現在、ガンプロではスピリット・オブ・ガンバレ世界無差別を保持し、同団体の12・27後楽園では勝村周一朗との防衛戦を控える。大日本でも神谷とのコンビでデスマッチタッグトーナメント「相思相殺(そうしそうさつ)」の準決勝まで進出している状況。各団体で中心に食い込む活躍を再び見せ始め、なおかつ自らが率いるBASARAでもトップに返り咲かんとしているのだ。

 おとなげないイサミを倒してこそFUMAもよりBASARAのトップとして認識されるが、もちろんイサミは“そうはさせまい”と意地を張る。大会全体についても「最悪、楽しくなかったらお金返すので。楽しくなかったらクラッチ(BASARA直営のバー)でも会場でも、僕に直接文句を言いに来てもらって構わない。いまのBASARAには、絶対に皆さんを楽しませる自信がある」とギラついた。不祥事もまた新たな流れを生み、もしかしたら、より爆発的な何かにつながっていくかもしれないのがプロレスという数奇なジャンル。BASARAというインディー団体の勝負どころが、12・3後楽園なのだ。

<週刊プロレス・奈良知之>

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事