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2023-12-14

【箱根駅伝の一番星】闘将・新山舜心が駿河台大を次の高みへと導く

箱根駅伝予選会、新山は自己新の1時間02分35秒で走り全体の29位に(写真/桜井ひとし)

陸マガの箱根駅伝2024カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」が今年もスタート。出場23校の注目選手を紹介する。駿河台大の新山舜心主将は2年ぶり2回目の箱根駅伝出場を果たすべく、悩み、苦しみながら過酷な道を突き進んだ。大願を成就しても気を緩めることなく、新山はチームを鼓舞し続ける。

孤高の主将

10月末、箱根駅伝2024完全ガイドの取材で主力メンバーを撮影する際、センターの新山舜心主将(4年、鹿児島高・鹿児島)だけ、佇まいが違っていた。
箱根駅伝2区候補のスティーブン・レイヤマン(1年、ンダビビ高・ケニア)らが明るくおどけているなか、新山は背すじをピンと伸ばし、凛とした眼差しを向ける。それはまるで武士のようだった。

徳本一善監督によると、前回、箱根予選会で敗れてから、新山はこの印象通りの一本気でチームを引っ張ってきたという。
「うちのチームは、箱根出場を目指すという目標に合わず、楽な方に流れてしまう選手がまだまだ多かった。そういう流れを思い切りぶった切って勝負してくれたのが新山なんですよ」(徳本監督)

もちろん、大ナタを振るえば、痛みを伴う。2年ぶり2回目の本戦出場を勝ち取るまでの1年間で、約20名が退部。4年生同士の話し合いも苛烈で、「 “あいつにはついていけない”という4年生も出て、一時は、新山対4年生全員という構図のときもあった。最後は結局、4年生が新山を理解したんですけど」(徳本監督)

次代へとつなぐタスキ

おそらく新山が長い間、抱えていたのは、深い孤独だろう。「キャプテンになってから、何が正しいのか分からず、ゴールの見えない道を選択し続けなければいけないことが苦しかった」と明かす。

しかし、新山には「箱根本戦出場」というブレない軸があり、心が折れることは決してなかった。目標達成のため、スポーツ科学を専門にする大学の教員に協力を仰ぎ、科学的データを部員にフィードバックするなどして、目標を可視化することに積極的に取り組んだ。
「疲労に対してのランニングスピード帯を示す“乳酸作業閾値”という数値をとくに意識しました。2年前の阪本大貴(現・フルヤ金属)主将が予選会を突破するための目標値を設定してくださっていたことも大きかったです」

本戦出場という今年の大きな目標を達成したいま、新山主将がやり遂げたいのは、将来、駿河台大がシード常連校へなるために、強豪校との差がどれくらいあるか、後輩たちに距離感を示すことだ。

予選会でチーム内日本人トップの29位だった新山は、もちろん往路を走るつもりでいる。
「2区以外は、すべて行ける準備をしています。どこを走っても区間順位一桁台で走りたい。チームとしては2年前、初出場でも “たすきをつなげる”という目標は達成できたので、前回の19位より一つでも上の順位を狙いたいです」

誇り高き主将は、この冬、母校の繁栄を願って全力で箱根路を走る。そして、本戦で得たデータや経験をしっかり次の世代に渡すつもりだ。


箱根駅伝のエントリー16人中2年生が10人を連ねる駿河台大。若いチームを新山がけん引する(写真/小河原友信)
箱根駅伝のエントリー16人中2年生が10人を連ねる駿河台大。若いチームを新山がけん引する(写真/小河原友信)

PROFILE
にいやま・としむね◎2001年10月6日、鹿児島県生まれ。伊敷台中→鹿児島高(鹿児島)。2年時に箱根駅伝に出場し、7区15位。自己ベストは5000m13分59秒21、10000m28分14秒30(大1)、ハーフ1時間02分35秒(いずれも大4)。

文/鈴木快美 写真/小河原友信、桜井ひとし

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