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2024-01-16

【相撲編集部が選ぶ初場所3日目の一番】霧島が熱海富士を退け3連勝。充実の心技体で綱取りへ死角なし⁉

一瞬先手を取られかけたが、最後はモロ差しから相手を浮かせて熱海富士を仕留めた霧島。綱取りへ向け、今のところ死角は見当たらない

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霧島(寄り切り)熱海富士

危ないかと思わせたのは、ほんの一瞬にすぎなかった。
 
綱取りを目指す大関霧島が、若手成長株の熱海富士の挑戦を落ち着いて退け、初日から3連勝とした。
 
この日の相手の熱海富士は、上位陣総当たりの地位には初挑戦とはいえ、ここ2場所、優勝争いに名を連ねている伸び盛りの若手。先場所は霧島自身が優勝争いの中で激突している。その先場所の初顔合わせでは霧島が厳しい相撲で力の差を見せつけており、キャリアを含めた地力ではまだ一枚上の感じがあるが、何しろ体格では熱海富士のほうが勝っているので、受け損なってがっぷり胸を合わせる形で前に出られるような展開を招くと怖い相手だ。熱海富士にはこのところ前に出る圧力をどんどん増している感じもあるので、霧島としても油断はできない。
 
果たしてこの日の取組では、一瞬だけだがそれに近い場面が現れた。立ち合い、霧島は早く、低く当たったが、威力としては軽い感じになってしまったのか、すぐ熱海富士に押し返された。右からちょっと引いたところを出られ、さらに押し込まれる。
 
だがここからが霧島のうまさと力強さだ。俵に足が掛かる前に腕で掬いながら左へ左へと回り込み、体を入れ替える。そして体が入れ替わったところでは右も入れてモロ差し。形としては胸は合ったが、下から掬って相手を浮かせた状態を作り上げ、そのまま寄り切った。

「やっぱ勝ちたかったな。(惜しい攻めも)先場所も勝ててないんで、結局ダメですね」と熱海富士はため息。霧島は「相手が低く当たってきたので、それに合わせて引いてしまったけど、何とか中に入って前に出ました」と、この一番を振り返った。

「(熱海富士が)思い切り当たってきたので、考えているなと思いました」と、大関は廻しを狙って組み止めにこなかった相手の立ち合いには意表を突かれた部分はあったようだが、それでも落ち着いて対処できたのは「(冬巡業で熱海富士と稽古して)いろいろな立ち合いを試してきました」という研究と稽古の成果だといえるだろう。
 
地力で他の力士を上回っているところに、このように稽古量でも上を行っているのだから、今の霧島が強いのはもっともだ。精神的にも愛娘のアヤラッゴーちゃんの存在が励みになっているようで、心・技・体、いずれも充実していると言っていいだろう。立ち合いからいっぺんに相手を持っていくようなタイプではないので、派手な勝ち方はあまりしないが、やはり現状、優勝する確率が最も高い力士であることは間違いがない。今場所そうなれば、その意味するところは横綱昇進なので、その可能性、ある程度あるはず、というのもまた間違いないところだろう。
 
少なくともここまで3日間の内容では死角は見当たらない。本人も「一番一番、しっかりやることが大事」と自らに言い聞かせているが、あとは気持ちと体調をいかにコントロールしていけるかだけだ。
 
この日は、貴景勝と大栄翔が、ともに引いたところを逆襲されて土。関脇以上の全勝は霧島と豊昇龍、琴ノ若の3人となった。横綱照ノ富士は、阿炎の激しい動きに懸命についていき、最後はとったりで白星先行。また下位では大の里が阿武咲の低い押しを受け切れず、幕内初黒星を喫した。今場所の「下位からの優勝争いへの刺客」の一番手には、3連勝の朝乃山が浮上してきた感じも。
 
優勝争いは、徐々に霧島と琴ノ若という、上の地位への昇進を狙う二人のマッチレースの色合いが増してきた。これに、場所前に右ヒザを痛め、内容的にはもう一つながらも何とか白星をつないできている大関豊昇龍がどこまで食いついていけるか。あす4日目、照ノ富士と貴景勝を連破して意気上がる若元春との対戦が前半戦では最大のヤマになる。

文=藤本泰祐

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