グランドスラムデュッセルドルフ最終日は、78kg級・濵田尚里、78kg超級・朝比奈沙羅が優勝、男子は90kg級・向翔一郎が3位。井上、増地両監督とともに3人のコメントを紹介する。
※写真上=78kg級で優勝した濵田尚里(右)
写真◎IJF
(決勝の最後の場面は)だいたいは1回か2回目で抑え込めるんですけど、寝技の強い選手なんでなかなか押さえ込むことができなかったです。1回で決めたいという気持ちでいつも練習しているのでここでチャンスだったと思うのでしっかり決めたいなと思いました。相手がかけてきてつぶれたので寝技に行きました。まず寝技にいかせない、寝技にいったときは立つ、みたいに対応されている感じです。
きょうは内容は良くなかったんですが、勝ち上がっていけて優勝できたのはよかったです。
これからも立ち技も寝技も同じようにやっていって、投げて抑え込んで勝つ、という柔道をやっていきたい。
五輪を意識しはじめたのは昨年の世界選手権です。2年前は代表になっただけで、また来年代表になれるかわからなかったので、昨年から意識しはじめました。
五輪代表に決まったらうれしい、という気持ちです。
五輪に出られないからって情けない試合はできないし、これからの試合が自分の真価が問われると思うので、自分が最後、笑って追われるために、五輪に出られなかったその先の景色を見られるように、……push up……なんて言ったらいいんだろう、自分に頑張れ頑張れって言い聞かせてやりました。
準決勝では、オルティス選手を投げて、得意技で勝てたのはうれしかったです。でも、うれしさと悔しさといろんな感情がこみ上げてきて泣いてしまいました。
デュッセルドルフに出場したのは、東京五輪の補欠になったりとか、1%でも自分が五輪に出られる可能性があるのであればという思いからです。
出してもらう以上は、結果を出すことが正義だし、それが責任だと思って臨みました。
今は自分がやれることをやり切ろうというのがいまの自分の中で強くある。自分の人生なので自分で100点満点あげられるような人生にしたいと思っています。
※写真上=78kg超級で優勝、増地監督と握手を交わす朝比奈沙羅(左)
(「指導3」を受けた場面は)帯がほどけていたので、戻るまでに結び直したら「指導」になってしまいました。これまでなら大丈夫だったはずなんですが……でも、もういいです。負け犬の遠吠えです。
3位決定戦は延長戦に入ってすごく苦しくて、言葉は悪いんですけど、殺してやる、くらいに思いました。たまに気持ちが切れそうになるとき、こういうふうにスイッチが入るんですよね。背負いを何度もかけましたけど、(相手の)シルバモラレス(キューバ)は身体能力がすごく高いので飛ばないんですよ。
準々決勝までは投げ急ぎすぎたのもあったと思います。カスみたいな柔道をしてしまいました。
きょうは50%の力しか出せませんでした。初戦は投げて勝てたので調子いいと思ったんですけどね(笑)。でもオリンピックも100%の力を出せるかといったら出せないと思うんですよ。50%の力でも勝てる勝負強さが重要だと思っています。
※写真上=3位決定戦でシルバモラレス(左)を下した向翔一郎
向翔一郞については、準々決勝で帯を自分からほどいてしまって「指導」を受けて敗退してしまいました。帯を直すときは主審の許可が必要なのですが、ほとんどほどけていたというところもあったので、そうしてしまったということもあるかもしれません。しかしながら、初歩的なミスとも言えますので、今後このようなことのないよう指導していきたいと思います。
ただし、きょうは準々決勝までは非常にいい試合をしていたと思います。強豪ひしめくこの階級で、確実に戦っていける力をつけていると思います。優勝から遠ざかってはいますが、必ずメダリストにはなっていますので、その点は評価できるのではないかなと思います。
例えば成長したという点は、準々決勝であのようなことがあった場合、これまでは気持ちが切れてしまうことも多かったのですが、きょうはできる範囲のなかで立て直して3位決定戦に臨みました。周りの方のサポートを得ながら準備ができたということは彼にとっても非常に良い経験になったのではないかと思います。立場や状況というもので人間は変わるというところがあると思うのですが、五輪代表候補という立場にいるということで、彼自身、変わっていっているのではないかな、と思います。
今後、世界と戦っていくためには、この階級は強豪がひしめいていますから、的を絞った対策が必要だと考えています。感覚的なものが非常に強い選手なので、その部分を大事にしてあげながら強化を進めていきたいと思います。
今回は向だけでなく、本当にもったいない負けで優勝を逃した試合もありましたので、東京五輪に向けてはこういう穴を埋めていく作業をしていきたいと思っています。
濵田尚里については、足首のケガで昨年のワールド・マスターズを回避してこの大会に臨んだことはよかったと思います。試合内容もオール一本勝ちで、彼女の寝技の技術の素晴らしさが出せたのではないかと思います。
とくに成長を感じたのは準決勝です。背負い投げで投げて寝技につなげて仕留めました。これまで本人と立ち技をやったほうがいいんじゃないかと話をしていて、練習もしていたんですけど、こうして実戦で披露したことは技に対する意識が高まってきているのではないかと思いました。今後も寝技へ移行させる方法論を身につけさせていきたいと思います。
審判もよくみてくれると思います。
朝比奈については、すでに78kg超級は五輪代表が決まっていますので、モチベーションを維持していくことはすごく難しかったと思います。しかし、自分のやるべきことをきっちりやってくれました。世界チャンピオンになったとき以上のパフォーマンスをしてくれたと思います。準決勝ではオルティスを投げて勝ちましたが、オルティスが投げられるシーンはそう見たことがありません。開き直ったのがいい方向に出たのではないかと思います。
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