中高年になると増えてくる変形性ひざ関節症。予防・治療で最も大切なことは、筋力を落とさない、体重を増やさない、関節を硬くしないように、日々適切な運動を行うことです。本連載では、ひざの名医である田代俊之ドクターが、原因や治療をわかりやすく解説していきます。今回は日常で行いたい運動療法「ひざ痛体操」から、ストレッチングについてお届けします。
ひざ痛体操の「ストレッチング」 日々の生活の中で行っていただきたい運動療法としておすすめしている「ひざ痛体操」には、「筋力トレーニング」「ストレッチング」「有酸素運動」と3つの種類があります。
今回紹介するストレッチングの目的は、関節が硬くならないようにすること、固まった筋肉をほぐして動かしやすくすることです。代表的なストレッチングとして「お皿ゆらし」と「ひざの曲げ伸ばし」を紹介しましょう。
「お皿ゆらし」は、親指をお皿にそえて横にやさしく動かすマッサージです。ひざのお皿には大腿四頭筋という太ももの前側の筋肉と、ひざのお皿を安定させる膝蓋靭帯がついています。ひざのお皿のゆらすと、お皿の動きがよくなり、太ももの筋力を発揮しやすくなります。また、ひざのお皿をゆらすことで、ひざの脂肪体や滑膜の炎症、腱の痛みが緩和していきます。
「ひざの曲げ伸ばし」は、ひざを押して伸ばしたあと、ゆっくりひざを曲げていき、体に引き寄せていく体操です。ひざが痛いからと言って動かさずにいると痛みはとれません。ストレッチングでひざを動かして、ひざが硬くならないように、またひざが動かせるようになりましょう。


モデル/丸岡雅子
著者プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。