大会3日目、韓国背負いを得意とするポーランドの新鋭を紹介します。
※写真上=来年のオリンピックと同じ畳を採用した今年の世界選手権
写真◎近代柔道
●57kg級 J・コバルチック(ポーランド)
3日目からは女子57kg級3位のJ・コバルチック(ポーランド)をエントリーさせたいと思います。
とにかく韓国背負い(注)が上手。準々決勝で日本の芳田司から「技あり」を奪ってポイントを先行した技も。この試合に敗れて進んだ敗者復活戦でも、そして3位決定戦でも。ここぞという場面で見事に、韓国背負いで勝負を決めました。一発を持つ選手はやっぱり強い。柔道の必定を教えてくれるお手本のような選手です。
しかもこの人の場合、組み手と軸足が通常とことなるあべこべ変形タイプ。左で襟を持ち右足で技をかけるため、相手にとってはディフェンスの的をしぼりにくいのかもしれません。韓国背負いは、相手の身体の中でするりと回転しながら、相手が一緒に倒れていく“共倒れ系”の技。コバルチックの場合、変形スタンスなので、相手にとっては入られるタイミングをはかりにくいのかも。
今後、世界からマークされ、研究された状態でも入れるかどうかが、世界のトップシーンの常連になれるかどうかの分水嶺となります。
とにかく勢いのある選手であることは間違いなく、昨年の欧州選手権で初優勝を果たし、今年4月のグランプリ・アンタルヤでIJFツアー初優勝。アンタルヤではリオ五輪金メダリストで、今大会のもう一人の3位入賞者、R・シルバ(ブラジル)を、やはり韓国背負いから押し込んでの隅落とし「技あり」で破っています。
ポーランドにはこの階級にA・ボロウスカ(大会前の世界ランク16位)という選手も送り込んでいましたが、2回戦で姿を消しました。同国ではボロウスカが長く一番手を担っていましたが、今大会の結果でその構図に変化がもたらされることになります。ちなみに大会前の世界ランクはコバルチック26位、ボロウスカ16位でした。伸び盛りのコバルチックvsベテラン・ボロウスカのバチバチのバトル音が聞こえてきそうです。
それにしてもどの国も東京五輪の代表争いが激しくなっています。一番手を送り込んできていない国もありますから、それも含めて、来年はどうなるのか想像するのも(やっぱり)たのしい。大会4日目以降も、そんな想像をさらにふくらませてくれる選手が続々登場しています。
(注)「韓国背負い」とは、逆方向にかける背負い投げ。韓国人がやり始めて爆発的に世界に普及、現在世界的に大人気の技です。
文◎佐藤温夏(スポーツライター)
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