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2019-04-02

ONE Championship A NEW ERA格闘技団体は社会を変えられるのか

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青木真也 死と隣り合わせの表現者

 もう1人、気になったのが青木真也。1月のONEの公開ワークアウトで、テレビカメラが追い掛けていたので、「この人は誰だろう?」という知識しかなかった。飄々として、何か内に秘めているものがある、そう感じた。しかし、それが格闘技的な強さとどうつながっているのか、私にはわからなかった。

 どこかで会ったことがある、そう感じた。トランスジャパンアルプスレースというレースがある。富山湾の日本海から北アルプス、中央アルプス、南アルプスの3000m級の山々を次々に越えて、太平洋の駿河湾まで415kmを走る。青木は、そのレースに臨むアスリートのような雰囲気を醸していた。頼れるのは己の肉体と精神だけ。戦いの場は死と隣り合わせ。そんな世界に生きる者に共通するにおいだろうか。

ケージに立った青木は、恐怖を力に変えようとしていたのだろうか。写真:ONE Championship

 何かをやってくれるという期待ではない。この男の話をじっくり聞きたい。そう思わせる何かがある。果たして、その予感は的中した。

 メインイベントでフィリピンの英雄、エドゥアルド・フォラヤンを1ラウンド2分34秒、肩固めで下し、ONE世界ライト級タイトルを奪い返すと、マイクを握って叫んだ。

「あのね、35歳になって好きなことやって! 家庭壊して1人ぼっちで格闘技やってどうだお前ら羨ましいだろう! 俺はな、こうやって明日もな、コツコツ生きてくんだよ! 最後に一言な、みんな俺たちのファミリーになってるから、みんな頼むぞ! 俺たちは、ファミリーだー! よし、けつにGOって書いてあるけどな、みんな、明日もGOだ!」

 しゃがれた声が国技館に響き渡る。胸が熱くなる。繰り返すが、格闘技のことはよく分からないし、青木という格闘家のことを意識したのは、2週間ほどのことだ。

青木の肩固めが決まる。写真:ONE Championship

 記者会見でも「青木節」が続いた。

「僕は、ONEがこんなに大っきくなる前からの契約選手で、DREAMがなくなった時にチャトリに拾ってもらえて、とにかく僕の仕事として1年間この大会をこの日を最後しっかりイベントをまとめるようにと思って、2018年を走ってきたので、責任感と忠義だけでやった1年間だったので、ちょうど今これが終わって安堵感というか、ホッとしています」

 「忠義」という言葉をストレートに口にできる人がどれだけいるだろうか。ケージの中の雄叫びと、記者会見の言葉づかい。その2つから垣間見えたのは、青木が、肉体で表現できるだけでなく、言葉でも表現できる能力を持ち合わせているアスリートということだ。

 彼の言葉を聞きたい。言葉は戦いに根ざしている。肉体が表す作品を目にしなければ、言葉は心に響かない。しばらく、青木の戦いを追ってみたい。

この戦いにかける思いが伝わってきた試合だった。 写真:ONE Championship


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