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2019-04-02

ONE Championship A NEW ERA格闘技団体は社会を変えられるのか

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ONEが日本に定着するためのキーワード

 もう1つ、ONEで注目したのが、このムーブメントが、社会の課題を解決できるどうかというものだ。

 若松佑弥が、格闘技に出会うことよって更生したということは、答えのように思えるかもしれないが、そうではない。ONEでなくても、若松を更生させられる格闘技は他にもある。

 しかし、確実にスポーツの世界を変えていくだろうという期待も感じた。私の席は、ケージから4列目だった。テレビでしか見たことがないが、このあたりの席には、反社会的勢力と思われる人たちが並んでいることが多いように思っていた(格闘技の試合を見たのは初めてなのであくまでも個人的な印象でしかないが)。

 ところが、今回、私の周りにいたのは、身なりのしっかりした人が多かった。詳しいことはわからない。ただ、上場を目指しているからには、反社会的勢力と関係を持つことはできない。

 日本の芸能プロダクションで上場しているのは、わずか2社しかない。その内の1社の社員が言っていたことを思い出した。

「あちらの世界の人から何かを要求された時にも『弊社は上場しているので、そういうことはできません』と、断ることができるのです」

 上場は、クリーンであること、透明性を持った組織であることの証だ。社会の課題を解決するという点で言えば、貧困の解消や更生よりも、大きな意味を持っている。

 チケット代やオフィシャルグッズの購入代金が、裏の社会に流れない。当たり前のことではある。当たり前だが、大切なことだ。

 ONEの秦英之日本代表が、『格闘技通信』の特別号の中で「ONEには、日本のスポーツ界を変える力がある」と語っていた。ONEへの期待は、単に日本の格闘技の復興ではない。大げさに言えば、スポーツはもちろん、社会の健全化の推進力として機能することだ。

 大会後にONE ChampionshipのシャトリCEOが、大会は成功であったと、喜びを込めて語った。確かに観客動員、試合内容ともに成果をあげたと言えるだろう。しかし、ONEが目指すゴールはそこだけではないはずだ。

 社会との繋がり、それがONEが日本に定着し、世界的な組織になっていくためのキーワードである。

大会終了後、記者会見に臨んだONEのシャトリCEO。写真:ONE Championship

文/樋口幸也(ベースボール・マガジン社)

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