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2024-07-14

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所初日の一番】大の里、御嶽海に低さ負けして黒星スタート。大関陣も全滅、照ノ富士が綱の面目

最後は体が浮いてしまい、御嶽海に押し出された大の里。前傾姿勢で下から攻めてくる相手への対策は、今後の課題になりそうだ

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御嶽海(押し出し)大の里

期待の大器の新関脇初日には、厳しい結果が待っていた。
 
大の里が御嶽海に一方的に敗れ、黒星スタートとなった。
 
ここまで、新入幕から11勝、11勝、そして先場所12勝で初優勝しての新関脇。今場所もまた優勝争いに絡むようなら、通常の「直近3場所は三役」の常識を吹き飛ばし、一気に大関の声もかかろうかという期待を受けていた大の里。この日の相手の御嶽海は、元大関とはいえ、ここ数場所でようやく長い不調にピリオドを打ったところ、という感じだっただけに、戦前は波乱の可能性はそう高いものではないかと思われた。
 
しかし、結果は一方的だった。大の里はいつものように右差し狙いで胸から当たっていったが、そこは御嶽海も百戦錬磨の元大関、しっかりと対策を練っていた。脇を固め、低く頭から当たると、相手に右を深く差されることなく、おっつけて跳ね上げ、そのまま攻め込んだ。右を差せなかった大の里は、上から押さえつけるように引きを見せるが、自らの体が浮いてしまい自滅。そのまま西土俵に押し出された。
 
ちょっと先場所9日目に平戸海に押し出された相撲を思い出させる内容だったが、右差し狙いを下からうまくはね上げられて果たせず、思わず引いてしまってつけ込まれたところは共通。大の里はこのほか、阿武咲に新入幕場所から2連敗を喫しているが、「背が低くて前傾姿勢が持ち味、普通に立ったときには自然に相手が下から押し上げてくる角度になる」という相手が苦手の一類型となっている感があり、今後、横綱・大関を狙っていくためには、一つの課題になってきそうだ。もともと足が長く、普通に立てばどうしても相手より腰高、ということになる大の里だけに、こういう相手のときに意識してもうひと腰落として取れるようになれるかどうか、そして右差しができなかったときに叩く以外のいい対応を開発できるか、といったところがカギになるだろう。

「(立ち合いは)ダメでしたね。(立ち合いを直していく?)明日に向けて修正して頑張ります。(初日の緊張感はあった?)何もないですね」と、この日はさすがの大の里も言葉少な。ただ黒星スタートになったとはいえ、気持ちの上で焦りが出るようなことさえなければ、まだまだ2日目からの巻き返しの可能性は十分あるだろう。
 
さらに言えば、優勝争いの状況のほうも、大の里にとってはまったく悲観することはない形になった。この日は大の里の後、関脇の阿炎に続いて貴景勝、豊昇龍、琴櫻の3大関がすべて黒星。先場所の初日に続いて、上位陣総崩れの可能性があったところで、休場明けの横綱照ノ富士は、新小結の平戸海に苦しめられながらもこれを退けて土俵を締め、何とか上位陣の面目を保ったが、これも、苦しくても落ち着いて取り切ったところはさすがだったが、まだ「あす以降も安泰だろう」という予測が立つ勝ち方ではなかった。
 
優勝争いは、まだまだ初日を見ただけでは全く分からない状態。あえて地力に初日の印象を加味して名前を挙げていけば、白星スタートを切った照ノ富士に、力のある大関の琴櫻、豊昇龍、そして大の里、復活の気配漂う霧島、さらには実力者でこの日好内容を見せた大栄翔、若元春といったところが勝ち残っていく可能性を持つ候補者と言えようか。下位では朝乃山、若隆景がどこまで本来の動きを取り戻せていけるかが見どころになりそうだ。

文=藤本泰祐

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