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2024-05-26

【相撲編集部が選ぶ夏場所千秋楽の一番】本割で決着つけた。大の里、デビュー7場所目の史上最速Vなる!

プレッシャーのかかる状況の中、「冷静にということを考えて」危なげなく阿炎を押し出した大の里。デビューから7場所目で幕内優勝の快挙を成し遂げた

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大の里(押し出し)阿炎

勝てば初めての優勝、ただし負ければ4人によるトーナメント方式の優勝決定戦。そんなシビレる一番でも、この男の強さは変わらなかった。
 
立ち合いも勢い込むわけでなく、むしろ少し遅れ気味に、見て立ったような感じも受けた。だがそれでもモロ手突きにきた阿炎に、上体を少し起こされたのみにとどめられるのが、大の里の強いところだ。相手の右の突きをあてがい、外からおっつけるようにして少し横を向かせると、そのまま右を浅くのぞかせる体勢に。廻しは取れなかったが、あとは左からおっつけながら、右の差し手も効かせて相手を逃がさないように正面に置きつつ、正面土俵へと押し出した。

「いやもう、歓声がすごくて。実感が“優勝したんだな”って、改めてわきました」。デビューから7場所目の、史上最速優勝が実現した。先場所の尊富士の例があるので、もはや「ちょんマゲ力士の優勝」には驚かないが、デビューから1年ちょっとでここまで上り詰めたスピードにはびっくりだ。

表彰式後の優勝インタビューでもあったとおり、去年の春までは大学生。「去年の5月場所でデビューして、1年後に幕内優勝するっていうことは、想像してなかったんで」と、本人すら考えていなかったことが、現実になった。
 
ただ、そんなふうに入門のときは遠くにしか考えていなかった優勝も、新入幕で優勝争いをしたことによって、今年の1月場所には、早くも「夢から、目標に変わった」のだという。さらに翌3月場所も優勝争いをし、栄冠を手にすることはできなかったが、その目標への距離感は具体的になり、経験値も蓄積されていったはずだ。
 
初日に初めて横綱照ノ富士を倒し、自信とともにスタートした今場所は、前半から対戦した三役陣を次々に倒していった。ただ一人、大関豊昇龍には3場所続けて右からの下手投げに屈したが、他の役力士にはすべて勝って5勝1敗。これはすでに現在の角界でトップに近い位置にいることを示す数字だ。
 
2日目の髙安、9日目の平戸海と、平幕に落とした2番は後ろに下がっての負けだったが、ほとんど前に出て勝負している、という点も評価は高いし、さらに、ここまでは、ほぼ右の差し手から起こして左のおっつけと、廻しを取らずに勝負をつけているので、「これで廻しを取る相撲を覚えたらどこまで伸びしろがあるんだ?」とも思わせる。まさに末恐ろしい力士なのだ。
 
これで来場所の関脇は確実。これまで、大関昇進は基本的には「直前3場所は三役」が暗黙の了解のようなところがあったが、新入幕から毎場所優勝争いをして、新三役の小結で優勝した大の里の場合、その基準すら吹っ飛ばしてしまう可能性もあるのではないか。もし、来場所も連続優勝となるようなら、三役2場所通過での大関、という議論が巻き起こっても不思議ではない勢いだ。

「強いお相撲さんになっていきたいなと思います。上へ上へと、精進して頑張りたいなと思います」
 
元日に地震で大きな被害を受け、いまだ復興途上にある石川県の出身。「こうやって、優勝する姿を見せられて、本当にうれしい」という故郷に、次は大関昇進という、さらに大きなプレゼントを届けてもらいたいものだ。

文=藤本泰祐

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