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2024-07-27

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所14日目の一番】隆の勝が照ノ富士を撃破! 優勝の行方は千秋楽に持ち越される

隆の勝が照ノ富士を一気の攻めで破り、星の差は1つに。賜盃の行方は千秋楽に持ち越されることになった

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隆の勝(寄り切り)照ノ富士

こういうことがあるから、相撲というのは本当に分からない。

“勝てば優勝”だった照ノ富士が、平幕の隆の勝に一直線に攻め切られて2敗目。2人の星の差が1つになり、優勝の行方は千秋楽に持ち越された。
 
実はこの顔合わせ、前回対戦した3月場所でも隆の勝が寄り切って勝っているのだが、その場所は照ノ富士が翌日から休場せざるを得ないような体調だったので、13日目まで1敗で来ている今場所とは全く元気さが違い、今場所はさすがに、横綱が14日目にすんなり優勝を決める可能性は高いだろうと思われた。
 
ところが白星をつかんだのは隆の勝。しかも一方的な内容だった。
 
立ち合い直後、照ノ富士は右手も使って、隆の勝がいつも攻めるために伸ばしてくる右手を手繰ろうとした。ただこのとき、照ノ富士の右ヒジに、隆の勝の左おっつけがハマった。照ノ富士の体は、これで完全に横を向くような形に。また、腕で繰り出す技に意識が行ったためか、横綱は今場所の連日の立ち合いよりは上体も立っていて、圧力がなかった面もあるのだろう。右手を手繰られることなくノド輪で押してきた隆の勝の圧力に、まったく何もできずに押されてしまった。

「(勝った瞬間は)えっ⁉ て思っちゃって、あり得ないと思ってふわふわした。座布団が当たったんで、それで勝ったんだと思った」と、隆の勝本人もビックリの1勝だったようだが、「最初からちょっと横綱がズレたんで、当たれてないなと思ったけど、右で突き起こせてよかった。廻しを取られたら何もできないので、距離を開けないと、と思った。左もおっつけられたので、よかったです。がむしゃらに出るだけでした」と、会心の一番を振り返った。この日も「低い体勢でいけたことが、力が増している要因だと思う」と語っているとおり、今場所は右ヒザの具合もいいのだろう、後半戦は特に、低い体勢で立ち合い当たれており、前への圧力が増している。「メモ帳に、“左手が使えない”とか、いろいろ書いて、それを修正していっている」という努力が実り、大関候補と言われた頃の勢いを取り戻しつつあるようだ。
 
これで賜盃の行方は千秋楽まで持ち越されることになった。千秋楽は照ノ富士が大関琴櫻、隆の勝は関脇大の里と対戦。隆の勝が勝ち、照ノ富士が敗れるようなことがあれば優勝決定戦となる。
 
まあ、隆の勝本人も「(優勝は)ないですね、まだ遠いです」と語っているとおり、隆の勝の相手が強敵の大の里、照ノ富士はまだ琴櫻に負けたことがない、よしんば決定戦になっても、照ノ富士も14日目の内容を反省してかかってくるはず、という条件を考えると、隆の勝の逆転優勝に、そう高い可能性は見出せないかもしれないが、千秋楽は先に相撲を取ることになるので、もし大の里を食うようなことがあれば、少なくとも結びの一番まで優勝争いの興味がつながることにはなる。
 
このコラムでも何度か触れているが、大の里は低い体勢で押し上げてくる相手には、ちょっとモロさを見せることがあるだけに、隆の勝の立ち合いがいい角度でささり、左おっつけで大の里の右を殺して右ノド輪で下から起こす形になれば、この日の横綱戦のように、一気に攻め切れる可能性もあるだろう。あすの立ち合いの角度と圧力に注目だ。
 
パリ五輪も始まり、もし14日目に優勝が決まっていれば、「千秋楽はまあいいか」と、相撲よりオリンピックのほうを視聴する、という人もある程度いたのではないかと思うが、これで、相撲ファンがオリンピックの盛り上がりに参加するのは、もう一日遅れることになりそうだ。

文=藤本泰祐

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