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2024-07-26

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所13日目の一番】貴景勝負け越して大関陥落が決定。霧島も1場所での大関復帰の夢断たれる

照ノ富士にはたき込まれて負け越しが決定。しばし土俵に手をついたままとなった貴景勝。30場所務めた大関からの陥落が決まった

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照ノ富士(叩き込み)貴景勝

まるで、現実を受け入れる時間を持とうとしているかのように、おなかにべったり砂をつけ、両手と両ヒザを土俵につけたままの体勢をしばらく続けた後、ゆっくりと起き上がった。
 
貴景勝が照ノ富士の叩き込みに敗れ、ついに負け越し決定。大関からの陥落が決まった。途中、新大関となった令和元年5月に途中休場、翌7月場所に全休し、いったん関脇に下がったことがあったが、このときは9月場所で12勝を挙げてすぐに復帰し、その前後で計30場所務めた大関の座だったが、これを失うことになった。
 
やはり、いまの体の状態では、横綱を崩すことはできなかった。
 
この日も立ち合いの当たりは悪くなかった。だがやはり圧力は本来のものではなく、少し押された。相手を崩そうと、いつもとは逆の左からの突き落とし、横からの攻めを見せた。そして体当たり。ここまではよかったが、当たり合ってはじかれた後、動きが止まってしまったのは貴景勝のほうだった。もう一度当たろうとしたところで足がそろったのを横綱は見逃さず、余裕を持って叩き込みを決めた。

「自分にダメなところがあるから負けた。負けるっていうことは、しっかり理由がありますから。落ちたということは、弱いものは落ちるべきだと思う。自分だけがケガしてるわけじゃない。それを含めての勝負なので」と貴景勝。貴景勝らしく、いさぎのいいコメントだが、押し相撲で、しかも立ち合いだけでなく、取組途中でも頭から相手にぶつかっていく、という取り口が持ち味だけに、首の故障というのは、きっとこれ以上ない苦しさだっただろう。昨年も1月場所、5月場所と照ノ富士が休場で不在の場所に優勝、責任を果たすなど、看板力士としての意地を見せたシーンが印象深い。ここはいったん大関という重荷をおろして、また思い切った相撲を取り戻してほしいものだ。
 
もちろん、来場所関脇で10勝を挙げれば復帰もできる。今場所負け越したところへ持ってきて、さらに白星上積みの10勝は、そう簡単な話ではないとは思うが、気持ちの強さと集中力を持つ力士だけに、その部分に期待したい。早くに大関に上がったため、すでにベテランの風格があるが、まだ27歳。まったく老け込む年ではない。
 
またこの日、1場所での大関復帰へ、残り3連勝すれば、という条件だった霧島も、攻め込みながらあと一歩攻めきれず、逆襲を食らって、合い口の悪い隆の勝に押し出され、6敗目を喫して、望みを絶たれた。
 
こちらも首を痛めて本来の相撲ができないのは貴景勝と同様だが、この日を終わって7勝6敗と、まだ上位で勝ち越せるだけの力は維持しているので、首の状態がよくなるか、または何か相撲を改善できれば、まあ大関とりがまた一からになるのは大変は大変だが、可能性はないわけではないだろう。このところの相撲は、もともと動きで相手をさばいていく取り口なので、攻める圧力が前より落ちている中でも同じように動いてしまって負けている、という印象がある。圧力を取り戻すか、あるいは何か少し取り口を変えることに成功すれば、とは思うが……。「ここで復帰はできなかったけど、チャンスはたくさんあるので頑張ります」と、まだ気持ちは折れていない。
 
ただそれにしても……。今場所、2力士の挑戦が実らなかったことに、時の流れの非情さ、そして故障の怖さを思う。折しもこの日、きのう琴櫻を投げたときに右足内転筋を痛めたとのことで豊昇龍が休場。一番若い大関でも、この地位を張り続けるには体にも無理をかけているよう。いやはや、大関という地位は本当に大変で、難しい一面があるもののようだ。

文=藤本泰祐

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